第4話

 七歳の時、僕は生まれて初めて喪失感を味わった。今まで気が付かなかった不自然な距離感。


 まるで関わりを拒絶しているかのような、そんな雰囲気を醸し出していることに僕は喪ってから気づいた。

 多分僕も同じものになってしまったからだと思う。皆なにかを喪い、壊れかけの心を抱え、傷つきたくない、どうせなくなるくらいならと、人と人との間に隔たりをつくり、自分に閉じこもり、偽りの自分を演じている。傷は決して治らない。


 取りつくろいのもので傷口を塞ぎ、感覚を鈍らせているだけで。この村の人は皆壊れている。気付かないふりをして、自分を守っているんだ。


 その異質で不可解な空気に僕は喪うまで気が付かなかった。


 皆が笑顔で、勘違いしていた。これは楽しいお祭りなんだと。誰もが踊り狂って、其の姿はまるで道化そのものだったのに。あの奇怪さに気づくことが出来なかった自分を殺してしまいたい。


 次の日になって僕は気がついた。僕の親友が居なくなっていることに。疲れた僕は、海への讃美歌を聴いている時に眠ってしまっていた。


 その後に、親友は村長達と一緒にゴンドラに乗り、海の祠へと捧げられていった。時間が経てば帰ってくると、軽い気持ちで考えていた。気がついた時には、もう遅くて。親友は海に還っていた。


 その時から僕は〝修羅〟となった。村を恨み、海を憎んだ。憎くて憎くてたまらなかった。


 厭世えんせい的に物事を考え、何もかもが上手くいかないこの世の中に嫌気がさし、絶望して…僕は虚無に支配されていた。

 色を理解できなくなり、景色なんぞに感情を抱かなくなった。


 全てが僕にとって無意味なものに変わり果ててしまったから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る