第6話

 意識が朦朧としてくる。疲労と混凝土コンクリートに倒れ込んだ時の傷口は思っていたより深く、てのひらに巻いていたハンカチでは止血まですることは出来なかったようだ。


白いハンカチは僕の血で赤黒く染め上げられていた。


 死はもうそこまで迫ってきているのかもしれない。

 まるでそれを告げるかのように、僕は混凝土の裂け目に足をつまづき、ゆっくりと倒れていった。




 瞼を開けると、草花の咲いた場所にいた。その中心には石碑が立っていて、空は曇り、澱んでいた。


 僕は思い出す。あの石碑を目指してここまで来たのだと。酸性雨はまだ降ってない。だが、足にはもう歩く力が残っていなかった。


 血まみれの右手に力を込める。つくばってでも石碑までたどり着いてやる。


 血がとめどなく溢れ出す。



 僕はそんなことも気にせず、ただ石碑を目指し続けた。

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