第4話

 僕はいつも通り、自転車を漕いで友人の家に行こうとしていた。その時、雨が降り始めた。


 最初の雨だ。それが最初だったかは、定かではないがその雨が今までと違って二ヶ月にわたり降り続け、それをきっかけにし、僕らは何かが変わり始めているのだと認識した。


 そこから全てが不可解な変貌を重ね、日常が日常ではなくなり、奇怪なる日々を過ごしていくことになった。


 周期的に降る雷電、豪雪、台風、酸性雨。ありとあらゆるものが地上に激しく降りつける。

 空は決して晴れることなく、青空を拝むことは永久になくなってしまった。



 曇天の空の先に、太陽はきっと居る。けれど助けてくれることはない。僕たちを長い間見守り、様々な恩恵を与えてくれた太陽は七年間姿を現すことも無く、完全に僕らを見捨て去った。


 自然の前では僕らは無力で、僕らは自分たちを傷つけ勝手に崩壊していく。

 不法に満ちた現代に、神は洪水を起こしたのかもしれない。地上のものをすべて滅ぼすために。


 そうだとしたらそれはとても悲しいことだ。

 何千年も積み重ねてきたものが一瞬にして崩れ去ってしまうなんて。

もし、運命によって父を殺し母と交じわったオイディプス王のように、すべては物語が始まる前から終わっているとしたら、僕らは何に逆らい、何に従ってきたのだろう。


 ノアの方舟に乗れなかった者は、ただ絶望に打ちひしがれるだけなのか。

 それでも僕は、希望というものに縋って生きていけるのだろうか。けれど、そんなことを考えていてもやっぱり僕は、どこかから希望を見つけだし、この暗闇で灯ることが出来る光とともに 、最期まで抗っていきたい。



 ああこんな時に、音楽に心を浸せられたらいいのに。風が全てをさらっていく。

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