第3話


 雨は先程よりも強くなっていて、身体に痛みを覚えるほど激しく、空と地を繋げようと大量の水の弾丸をなりふり構わず撃ち放っている。


 峠道をこんな大雨の中、下っていくのは僕ぐらいだろう。

 人工的に切られた山は、長年に渡って積み上げられてきた乾いた土を覗かせていて、冷たく存在感を放っている。


 それを横目に見ながら、僕はハンドルを横に切った。ようやく住宅街に降り立つことができたのだ。ここから目的地まで残り十数km。



 もう僅かな時間しか残されていない。次の予兆が現れている。


 僕はその予兆が来てしまう前に辿り着くしかない。この先には街と小さな島を繋ぐ橋がある。

 橋を渡った先に、僕が行くべき場所が待ち構えている。そこに着いてしまえばいいのだ。



 そうしてまたペダルを強く漕ぎ始める。どの家も暗く、街灯は点いてすらいなかった。

 まだそれほど年月も経っていないのに、街はすでに寂れてしまって数世紀前の遺跡に来たかのように、ここは生活というものがあったことを感じさせず、人の温もりが完全に消え去ってしまっていた。



 家が家として存在できたのは、僕が中学二年生だった頃の話だ。何だって最初は些細なことから物事というものが変わり始める。 

 

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