月と夜とピコピコな秘密


「ふぅ……じゃあ、そういう訳でこれからもよろしくね、ゆめめ」


「……約束……守ってくれるんだよね?」


「もっちろん!ゆめめが守ってくれるなら、だけど」


「……」


 私の返事を聞くとゆめめは逃げるように立ち去ってしまった。


「ありゃ、お早い……流石にあれは好感度マイナスだったか~~リアルってめんど~~」


 少しだけ残る柔らかい感触と汗が混じったゆめめの匂い。


 それは不快なんかじゃなくて、何というか……安心する感じ。


 とっても不思議だった。


「……ゆめめ、よっぽどあの姫花刹那バカチビが好きなんだねぇ~~もったいなぁ」


 人が誰を好きになろうと興味ないけど、あのスペックを無駄にするのは残念だと思う。


「……自分と比べるととくにねぇ……」


 中学に上がる前に止まったとしか思えない発育具合の自分の体が恨めしい。


 まぁ、そのおかげで可愛い自分が完成されたからよしとしてるけど。


 立ち上がり、お尻についた砂をはらう。


 そこで初めて、お尻のポケットに入れっぱなしだったスマホの事を思い出し。ついでに一緒に花火を見に来た連れの存在も思い出した。


「……あっ、ねむの事忘れてた」


 ゆめめにあったせいで頭から抜けてたっぽい。


 履歴を見ると電話とメッセージの両方で結構な通知が届いていた。


 こっちが忘れてたせいだけど……めんどくさすぎ……


「もっしも~し、ねむ?あ~怒んないでよぉ。あんたの声うるさすぎだから」


 明らかに怒っている通話相手をなだめながら私も歩き出す。


「そう言えば、ゆめめにあったんだけど……――っちょっと、うるさいって!」


 雲に隠れていた夜の月がこんばんはと顔を出す。


「うん、まぁ、せっかく会ったんならワンチャンって感じで……うん、なんか上手くいったわ。大丈夫、大丈夫だから怒んないでよ~」


 月の光は私を照らし……


「うん、分かってる。今度はさ……――絶対に上手くやるから」


 ――影はゆらゆらと元気に動いている。

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