一人と……


 刹那ちゃんからの連絡で桜咲さんが動けないことを知り、私も合流しようと歩き出す。


 花火が終わり、人の数がまばらになりはじめた河川敷。


 花火楽しかったね、なんていう楽しげな会話を耳にしながら、一人で少しだけ考える。


 これから先、刹那ちゃんと一緒にいられる機会はきっと減っていく。


 ううん、きっとじゃなくて絶対に少なくなってしまう。


 まだ、私も刹那ちゃんも子供でいられるから離れずに済んでいる。


 だけど、いつまでも子供のままではいられない。


 大人になれば様々な付き合いが増えていき、そして希薄な関係は消えていってしまう。


 私と刹那ちゃんの関係も絶対とは言い切れない、言い切れないからこそ……


「……ちゃんと伝えなきゃ」


 そんな小さな独り言は、私ではない人の声で塗りつぶされた。


「あれ、笹山さん?花火見に来てたんだ」


 声の主へと視線を移す。


 視線の先には二人の男子がひらひらと小さく手を振っていた。


「……村上くんと花島くん、だよね?」


 その二人組がクラスメイトだと思い出し、急いで切り替える。


 大好きからは程遠い自分へと。


「うわ、さすが笹山さん。ほとんど喋った事ない俺の名前まで覚えててくれてんの?」


 村上くんは嬉しそうに自らを指さした。


「おい、俺達だろ!なんでお前だけなんだよ」


 村上くんの言葉が気に食わなかったのか花島くんは彼の肩を小突く。


「悪い、冗談だって。で、笹山さんは一人なの?姫花は?」


 そう言って、村上くんはキョロキョロと周りを見る。


「あっ、えっと刹那ちゃんも一緒だよ。今はちょっと外してるだけで」


「ふーん、そっか。まぁ、いつも一緒にいるし、当然って言えば当然だよな」


「……笹山さん、今は一人、なんだよね?」


「うん、一応そうだけど。でも、今から刹那ちゃんと合流しようと思ってて……」


「そっか……おい、ちょっと」


「え、何だよ?」


 何となく、面倒で嫌な空気を感じる私をよそに、二人は何かを相談すると。


「あの、少しでいいから……俺たちと見て回ってもらえませんか!」


「おい、馬鹿、緊張しすぎだ。あっ、えっと屋台とか、をですね……はい、お願いします!」


 二人は緊張した様子でそう提案してきた。


 カチカチな姿に少しだけ頬が緩む。


 でも、その言葉に対する答えは一つだけ。


 二人が悪い人間だとは思わない。だけど、私の中にあるたった一つの大好き。

それ以外は全てどうでもいいし、興味もない。


「えっと、もう花火も終わっちゃったし、そろそろ帰ろうと思ってるから……」


 刹那ちゃんの所へ急ぎたくて、二人の提案を断ろうとすると――


「――あっ、ゆめめじゃん!」


 一人の女の子が私と二人の間に割り込んできた。


 私を見つめる自毛ではなさそうな桃色の髪をした女の子は……


「いや~ゆめめ相変わらずドブカスみたいな雰囲気だったから、一発で分かったよ~~」


「…………詩恩しおんちゃん?」


 ――おもちゃを見つけたように無邪気な笑みを浮かべた。

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