沈む


 ふと、目が覚めた。


「ん……」


 意識の半分はまだまだ夢の中。寝ぼけた頭でスマートフォンの画面を見る。


 午前二時七分。


 寝たのは十一時くらいなので、かなり半端に起きてしまいました。


 窓の外はまだ暗くてとても静か。夜中なので当然なのですが。


 つけっぱなしだった冷房を切り、ベッドから起き上がる。


「……喉が渇きましたね」


 夢の世界に戻る前に何かを飲もうと部屋を出る。


 部屋を出るとそこには真っ暗な廊下があるはずですが……


「ん、あれ?……何か……変?」


 普段なら電気をつけないと何も見えないはずの真っ暗な廊下。でも、何故だかとても明るく感じる。


 夜の闇に目が慣れただけかもしれませんが、こんな短時間。しかも寝ぼけているのに?


 はっきりと見える廊下に困惑しながらも、キッチンへと向かう。


 今日はゲームも何もやっていないので、もしかしたら目が元気なだけかもしれませんね。


 寝ぼけたままの頭は良くわからない結論を出して納得する。


「あっ……そういえば」


 奇妙な出来事で思い出した。


 胸に出来た猫のような形の痣を。


 痛みもないので放置していまいしたが、消える気配がないのでいい加減お医者さんに見てもらわなければ。


 小さいとは言え、このままではユメッチとプールや海に行けませんし。


桜咲さくらさきさんが見たら何を言われるか……」


 きっと嬉しそうな顔で馬鹿にしてくるんでしょうね。スマホ片手に連写しながら。


 ん?何故、私はあの人を誘う前提で考えてしまっているのでしょう?


 ……よく考えたらあの人を遊びに誘うこと自体ありえません。そもそもちゃんとした友達ではありませんし。


 それに仮に誘っても、来てくれるとは限りません。あの人、人ごみとか嫌いでしょうし。絶対。


 ……まぁ……水着姿は少しだけみたいかも……しれません。見た目だけなら、きっと可愛いでしょうし。

 

 ぶつぶつ色々と考えながらキッチンへと向かい、冷蔵庫から麦茶を取り出す。


 冷えた麦茶が喉を通り体の中に染みていく。


 蒸し暑い夜なので尚の事。


「……ふぁ~」


 目的を果たすと、再び襲ってきた強烈な睡魔に従い部屋へと戻る。


 暗いはずの家の中はやっぱりよく見えました。


 部屋に入りベッドに戻るとまぶたを閉じた。


 すぐに私の意識は遠くなり始めていき……ゆっくりと夢の中に沈み始める。


 夢の世界へと落ちる寸前――頭にくすぐったい不思議な違和感を感じた。

 













「――にゃはっ」

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