百合展開? 


 自分の口に中に、自分ではない、他人の舌が入り込む。


 舌を絡め、熱い息が苦しそうに漏れ出る。


「ふぅーーんぅう……ふぅーーふぅーー……ふぁ……」


「ひゃめ……さくら……さき……さん……んぅ……むぅーーー~~~」


「んぁ……ぅ……」


 口が塞がれ、抵抗の言葉が上手く吐き出せない。


「んんむぅ……」


 必死に抵抗しても、すごい力で邪魔される。


 私はただ、桜咲さんにされるがままで、何もできない。


「んぅ……あぁ……」


「ふぅ……む……んんぅ……ふぁ……」


 さわさわ


「ひゃう!?」


 ゆらゆら揺れていた、モフモフ尻尾が、私のスカートの中に入り込む。


 思わず、反応してしまった私に桜咲さんはにやりと笑い。


「――んゃ~~う」


 何か良くわからない雰囲気を纏い、猫のように鳴いた。


 何言ってるんだ、この人。


「いや!あなた、何言ってるか分かってます?やたらとえっちな雰囲気出してますけど、私置いてけぼりですからね!?はてなマークでいっぱいですからね!?あと、人語話してください!」


 ラッキースケベしておいて、いきなりのディープキス。そのうえ、急に猫みたいになって、何か事にまでいたろうとしている雰囲気。


 絶対におかしい。


 尻尾に関して、やたら念押ししていたのはこれのせいなんでしょうか?


 キスをしたのに、猫耳はそのままですし。


「とにかく、どいてください!このままではあらぬ誤解を受けかねません。早くどいて――ちょっと!何、ブラウスの中に手を突っ込んでんですか!それはもうラッキースケベとは言えませんから」


 しかし、私の言葉が聞こえていないのか、とてもうっとりした表情の桜咲さん。


「……にゃふぅ……」


 シュル、衣擦れの音と共に、ボタンを外し私の服を無理矢理脱がす。


「いや、ちょっと!流石にそれはマズイですって!」


 当然のようにブラまで外されてしまいました。


 誰か、ヘルプ!


「ふにゃ~ん」


「うっとりしてますが、私はドン引きですからね?このあと絶対にあなたの事、ゴミを見るみたいに見ますからね?」


 というか、現在進行形で見ている。


 私の上で、馬乗りになったままの彼女は――ゆっくりと、私の胸に唾を垂らし……私の先端を口に含んだ。


「んぅ……ん……」


「っんぅーーーー~~~!?」


 生暖かい熱に包まれ、赤子のように吸い付く音がする。


「ふぅ……――ぁーーー~~~」


 必死に声を殺す。


 これはただ不快なだけ。


 それだけなんだと言い聞かせ、くすぐったい気持ちを押さえ込む。


 体の奥のほうが熱い。


「んにゃぅ……ん――ぁう……」


「ふぅーーふぅーーぅ……」


 抵抗することも出来ずに、必死になって自分を落ち着かせる。


 これはまずい。笑えない。


 冷えてきた頭で、とりあえずこの発情したお嬢さんをどうしたものかを考える。


 渡されたメモに書かれていたのはとにかく閉じ込めろ。


 それだけしか書かれていなかったので、対処法が分からない。


「んにゃ~~?」


 唾液の糸を引かせながら、桜咲さんは顔を離し、さわさわと動き続ける尻尾のある、私の下半身を見てくる。


「あっ、そっちはダメですよ!?それはいけません!」


 まずい、早く何とかしないと私の貞操が!


 焦った頭を必死に絞り、ある言葉を思い出す。


『耳を消すだけなら、唇に触れるだけで十分。体液が必要なのはよっぽど――……』


 それはキスの説明を受けた時に言っていた言葉でした。


 途中で切られてしまいましたが、よっぽどっていうのは、今まさにこの状態の事だと思う。そうでなければ困ります。


 でも、体液って?


 そんな疑問を感じている間にも、いたずらな尻尾は私のスカートの中を動き回っている。


 確実に私の貞操が危うくなっている。


「ええい、とにかくやってみるしかありません」


 当たって砕けろの精神でやるしない。


 私の下半身に意識が向いているおかげで、簡単に桜咲さんを押し倒すとこが出来た。


 彼女の小さな顔を両手で包み。


「あなたが悪いんですよ!文句言わないでくださいね」


 無垢な表情の彼女の唇にキスをした。


 ただのキスではなく、舌をねじ込み、私自身の唾液を彼女の口に送り込む。


 舌を伝って私の口から桜咲さんの口へと流れ、混じり合う。


 ヌルヌルとしたその感触はとてもいやらしくて、私の頭を変にしてくる。


「!?」


 すると――あんなに元気に揺れていた尻尾は大人しくなり、猫耳もぺたりとなり――やがて、ポンッ、と破裂音と共に消えたのでした。


「やりまひた!」


 その様子に、思わずガッツポーズを取ると……何やら視線を感じた。


 口についた唾液の糸の先には――トマトのような真っ赤なお顔が。



「……えっと……何があったか……説明……いります?」


 上半身をあらわにしたままの私。


 そして、お互いにテカテカの唾液まみれの口元。


 そんな様子を見た、桜咲さんは。


「……すまない……」


 消え入りそうな声で、両手で顔を覆ってしまいました。


「はぁ……色々、言いたい事、聞きたいことがありますが……まずは先生が戻ってくる前に身なりを整えましょうか」


 私の言葉に、桜咲さんはただ黙って頷いた。

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