第4話 暇があれば間食

 ヒロに事務所から追い出され、横浜に来ていた水野は人を探していた。

 探していたというよりも待っていたの方が正しいのかもしれない。水野はヒロから誰が助っ人に来てくれるのか聞いていないからだ。

 横浜駅をフラ〜としていたところ肩を叩かれる。


「おい、お前が水野沙月か?」


 水野に声をかけた男は髪色が明るく緑眼でサングラスをかけた人だった。


「あ、はい。俺が水野です」


 男は上から下まで水野を見る。


「ヒロさんが気にかける要素なんてない気がするのに・・・」

男はぼそりと呟くと咳払いをしてから

「俺は篠森秋ささもりしゅうヒロさんの所の事務員だ。今日はお前の仕事を手伝いに来た」


 少し面倒くさそうに頭を掻きながら言う秋。


「この仕事のメインはお前だ、俺のやることはただヒントを与えるだけであることを覚えておけよ」


 それだけ言うと秋は先をスタスタと歩いて行く。


「どこに行くんですか?」

「スタバ」


 水野は目が点になる。何なんだ。ヒロさんの事務員は皆んな何か食べながらじゃないと仕事しないのか?そう思わずにいられなかった。


 秋はスタバに着くとダークモカチップクリームフラペチーノを頼む。出来上がったのを店内て飲むらしく席に座るとスマホを開いている。


「あの仕事は?」


 仕事もせずスタバでただ一人わっしょいしている秋に耐えきれないのか水野は聞く。


「俺の仕事はお前がくる前に終わらせた」

 それだけ言うと秋はスマホに視線を戻す。

 秋の態度は全面的に水野を手伝うようではないため水野は少しイラついた。

 秋が何も言わないのなら勝手にしよう。

 水野は自分が復讐した時と同様に情報収集から始めることにした。


 妊婦猟奇殺人事件は今から三十五年前。1987年の時だ。水野は生まれていなかったためその事件を知らなかったのだろう。当時騒がれていたその事件は横浜で起こり警察は四万人を導入して犯人の捜査したが具体的な人物にまで辿り着くことが出来なかった。

 警察にも捕まえられなかった犯人を捕まえられるだろうか。

 水野が復讐出来たのはヒロの情報があったからで自分の力だけで出来たものではない。水野には情報収集の能力がなかった。いや、一般人ならそれが普通なのだ。


「(ヒロさんが犯人を見てからでも遅くないと言っていた。それに、横浜に来させたんだ。何となくだけど犯人はまだ横浜にいる)」


 犯人が横浜にいるとして、当時から変わらずに横浜にいる人など何万人いるだろうか。進展しない思考の中、秋が声をかける。


「情報収集というのは一つのサイトを見てハイ終わりじゃねぇ。いくつものサイト、2ちゃんねる、必要であればハッキングもするんだ」


 いつの間にかダークモカチップクリームフラペチーノを飲み終え、スマホは小説に移行していた。


「ハッキング・・・」

「お前にはまだ無理だろうがいずれ出来るようになってもらう」


 この世にホワイトな職場など存在しない。先輩も職務内容もブラックだと水野は思った。

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