第38話キリカvsシリュウ
「うおおおおおおお!」
「うりゃああああああああ!」
私とシリュウさんの剣が激しくぶつかり轟音とともに火花が散る。
やばっ! シリュウさんの剛剣に私の刀がもたないかも。
「まずいです。刀は薄く細い作りで切れ味を増しているのですが、その分耐久性に欠けます。このままでは刀が折られる……? キリちゃん! 受け太刀しては刀を折られてしまいます! 受けるのではなく躱してください!」
解説役のマリーからアドバイスが飛んできた。
それはわかってるんだけど、シリュウさんの攻撃が鋭くて簡単には躱せないんだよ。
シリュウさんはゲーム内でも最強と言われてるけど仲間にならないキャラだ。
多分だけどシリュウさんが使ってるでっかい剣って、ゲーム内で名前だけは登場した王国の国宝、聖剣デュランダルじゃないの?
どうりで
さすが王国最強、良い剣を使ってる。
ガイアスを倒した初動を消す技にもしっかり反応してくる。
動きの初動は消せても私の気迫と言うか、攻め気に反応してるみたい。
本当の達人ならそういうのも消せるんだろうけど、残念ながら私はそこまでの達人じゃないってことだ。
シリュウさんめ、強いだろうとは思ってたけど、ここまで強いなんて思わなかったよ。
ガイアスを簡単に倒せる私ならもっと簡単に勝てると思ったのに!
「せりゃああああ!」
「くぅっ!」
シリュウさんの斬撃を受けた衝撃で打刀がへし折られた。
バカバカバカ! アホシリュウ!
この刀高かったんだぞ!
って、今はそんな事気にしてる場合じゃない!
私が刀の残った部分を投げつけると、シリュウさんは剣で弾き飛ばした。
私はその隙に距離を取る。
「キリカ様の剣が!」
「やはり武器破壊を狙っていましたか……」
「マリーさん、貴方なんでそんなに冷静なんですの! キリカ様がピンチですのよ!」
「ディアナさん、見てわかりませんか? キリちゃんはもう一つ武器を持っていますよ」
「もう一つ? あっ! あのキリカ様が背負ってる大きくて長い包みは武器だったのですか!」
「そう、あれはおそらく大太刀。所謂大剣ですわ」
解説役のマリーの言う通りもう一つ武器がある。
特製で注文した長く分厚い刀身、これが私のメインウェポンの大太刀だ。
強度を重視した結果、通常の刀の五倍くらいの重量になっちゃったけど、今の私なら自在に扱える。
しかしマリー、貴方は解説の天才か?
何で包みだけでわかるのよ。
マリーの洞察力に驚きながらも、素早く包みから取り出した大太刀を鞘から抜き放つ。
「凄い……あの長さに厚み、斬馬刀レベルの大剣ですね……。いけますよディアナさん、あの刀ならシリュウ様のデュランダルに対抗できるかもしれません。シリュウ様のデュランダルが聖剣ならば、キリちゃんの大太刀は魔剣。キリちゃんはとんだ隠し球を用意していたようです」
「あのでっかい大剣が凄いってことかしら? なんかよくわかりませんが、キリカ様はピンチではないってことですね。キリカ様! 頑張ってくださいませ!」
天才解説役のマリーさんも、シリュウさんの大剣はデュランダルだと判断したようだ。
でも、そのマリーが聖剣デュランダルに対抗できると見立ててくれたんだ。
これでシリュウさんと武器の差はなくなった。
正面から斬り合ってやろうじゃないの!
「ウオオリャアアアッ!」
シリュウさんのデュランダルと私の大太刀が正面からぶつかり、轟音を上げ火花が散る。
よし! マリーの見立て通り打ち負けない。
これで武器のハンデは無くなったぞ。
シリュウさんと互角の戦いを繰り広げる私に、ドーベルが不敵に笑い語りかけてきた。
「打ち負けなくなったら互角だと思ったかしら? 聖剣デュランダルは王国の国宝よ。それをただ大きいだけの大剣と一緒にしないでもらいたいわ。やりなさいシリュウ、おバカなキリカさんに聖剣デュランダルの力を見せてあげなさい」
誰がおバカだ!
そんな乳と太腿を放り出してる女に言われたくないわ!
まあ確かに、正直女の私でも一度くらいもんでみたい立派なバストだと思うよ。
自慢したくなる気持ちもわかる。
でもな、人にバカって言う奴もまたバカなんだよ!
「はああああああっ!」
私が心の中でドーベルに文句を言っている隙に、シリュウさんが聖剣デュランダルに溜めた魔力を私に向けて気合とともに解放すると、デュランダルから放たれた聖なる魔力の奔流が私を飲み込もうと迫ってきた。
かかったな! 初めてデュランダルを見た時からそれがくると思ってたよ。
希少な聖属性の魔力を宿す大剣デュランダルには使用者の魔力を充填し、攻撃性の聖属性魔力に変換して放出する特殊能力がある。
ゲームで入手できない武器にそんな設定つけるなよって話。
でも、この世界に転生して早五年、ゲームの世界で生きていくと決意した私はデュランダル対策も考えてきたんだ。
私は大太刀に風の魔力を集め、シリュウさんが放った聖なる魔力の奔流を待ち構える。
本当は躱したっていいんだけど、もし私が攻撃を避けたら後ろにいるマリーやエルカちゃん達が犠牲になってしまう。
私の異世界転生ストーリーにはみんなの存在が必要なんだ。
誰一人として、絶対に死なせやしない!
みんなでハッピーエンドを目指すんだ!!
「ウオオオオオオッ!」
大太刀に貯めた風の魔力を刀を振り下ろすのに合わせて解放する。
私の放った魔力の奔流とシリュウさんの放った魔力の奔流が激突し、私達の放った魔力の奔流はどちらも消滅した。
互角? だったら!
私は大剣を振り抜いた状態で固まったままのシリュウさんに向かって走り出す。
大技の後の硬直か?
力を出し切って動けなくなるなんて愚の骨頂!
私はすでにその壁は乗り越えたぞ!
「甘いよシリュウさん!」
「ガハッ」
体を震わせて動けないでいるシリュウさんに峰打ちを叩き込む。
ボキグギッと嫌な音を立ててシリュウさんが吹き飛んでいき、地面に三度ほどバウンドして倒れピクリとも動かなくなった。
あ、ごめん。
この大太刀でぶん殴ったらただじゃ済まないよね……。
……うん、大丈夫。
シリュウさんの魔力を微かに感じるし、死んではいないみたい。
さすがシリュウさん、頑丈だね。
常人なら粉々に砕け散って肉片になってるくらいの一撃だよ。
エルカちゃんの聖属性魔法なら瀕死からの治療もできるから後で回復してもらおう。
さあドーベル、待たせたな。
後はお前だけだ。
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