第34話そっちがその気ならこっちから攻めてやろうじゃない
「さあっ! 今日もキリカ様の為にお部屋を掃除しなきゃ」
フローズン公爵家のキリカの自室にてエミリアが掃除をしていると、ピキッ! と、乾いた音が響いた。
「何の音かしら? これはっ……キリカ様愛用のティーカップが……!?」
エミリアが音のした方を見ると、キリカお気に入りのティーカップに罅が入り、真っ二つに割れてしまった。
「触れてもいないティーカップが突然割れるだなんて不吉な……まさかキリカ様の身に何か! ……まぁ大丈夫でしょう。何せあのキリカ様ですから、大丈夫……大丈夫よ……」
エミリアは割れたティーカップを不安げに見つめ、キリカの身を案じ、何度も自分に大丈夫と言い聞かせるのだった。
◇◇◇
「それじゃあ行くわよ。ケルベロスの大幹部、ドーベルの居場所を示したまえ」
ヴィクトリアはテーブルに王都の地図を広げると、首にかけたネックレスを外し、地図に
おおっ! ネックレスがまるで生きてるみたいにウネウネ動き出したぞ!
ちょっと動きがキモいけど……これってもしかしてダウジング?
ゲームでヴィクトリアの探知能力は凄かったけど、まさかダウジングとは……本当に大丈夫か?
私が胡乱な目で見つめる中、ヴィクトリアが地図の色々な場所にネックレスを動かして探りを入れると、ある場所で大きく動き出した。
おおっ! こんなに反応が出るんだね。
これは期待できそう。
「ここは……確か没落した貴族の屋敷がある所だったかしら? 今は誰も住んでいないはずだし、悪党の隠れ家にはもってこいかも」
没落貴族のお屋敷か、お貴族様のお屋敷なら広さも十分だし間違いなさそうね。
「こうしている間にも被害は広がっています。早速向かいましょう」
「速攻奇襲作戦ね。私好みの戦法だわ」
ヴィクトリアは不敵に笑う。
私の提案はまどろっこしい事が嫌いなヴィクトリアのお気に召したようだ。
マリー達も覇気を漲らせている。
もう、みんな好戦的なんだから。
エルカちゃんはちょっと不安そうにしてるけど、このメンバーなら大丈夫だよ。
私達は絶対に勝つ!
「それと、屋敷の管理者もケルベロスと繋がっている可能性があるので、衛兵に取り調べを頼んでおきましょう」
「さすがはキリカさん、私から連絡しておくわ。では、各自戦闘準備を整えて、三十分後に生徒会室に集合してちょうだい。魔法学院に手を出す愚かさを、ドーベルに教えてやるわよ!」
ヴィクトリアの号令で、私達は戦いの準備に取りかかった。
みんな取っておきの防具に愛用の武器を携えた完全武装。
このまま戦にだって行けちゃう武装だ。
ちなみに私の武器は王都でも有名な鍛冶屋に特注で依頼した日本刀もどき。
その上多少の傷なら自己修復しちゃう優れものだ。
それが大太刀と打刀の二刀ある。
メインウェポンの大太刀は野太刀とも言われる日本刀だ。
一般的に知られてる日本刀よりも長い刀なんだけど、私の大太刀は特別製。
長さは通常通りなんだけど分厚く重く作ってあるんだ。
子供の頃は重い武器に振り回されてた私だけど、成長した今なら自在に操れる。
サブウェポンの打刀は一般的に知られてる日本刀。
大太刀よりも短くて軽いから扱いやすい。
この二刀が私自慢の愛刀だ。
「おい、あれって魔法学院の生徒だよな?」
「ああ、完全武装なんかしてどうしたってんだ? 町中で戦でもする気か?」
「わからねえが、凄え殺気を撒き散らしていやがる。あの学院の女は恐いからな、近寄らねえ方が良さそうだ……」
途中すれ違った人がなんか失礼なこと言ってた気がするけど、私は気にしない。
ふっ、私の連れに聞かれなくて良かったな。
私はともかく、あの子達に聞かれてたら酷かったぞ。
最悪命も危うかったかもしれんな。
って、私達はこれから悪者退治に行くのに、これじゃどっちが悪者だかわかんないじゃん!
私達は正義!
愛と勇気以外に友達もいるけど、正義の味方なの!
私達の進む道はモーゼのように人垣の海を割って突き進み、ヴィクトリアの探知魔法で見つけたアジトに到着した。
さあ、きたぞドーベル。
私達に喧嘩を売ったことを後悔させてやる。
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