第26話生徒会入会
ヴィクトリアに生徒会室に連れて行かれてから数日後、エルカちゃんも生徒会に入ることになったと本人から聞いた。
照れくさそうに私と一緒に活動できるのが嬉しいって言ってたわ。
さすがはヴィクトリア、見事エルカちゃんの勧誘に成功したようね。
これで生徒会はゲームと同じメンバー、プラス私。
一年生から三年生まで各学年ニ〜四人ほど、学院でも力を持った生徒が集まっている。
でなければ貴族の子供が大勢集まった魔法学院を纏めていくことなんてできないから。
王侯貴族は基本的に自分の家より劣る家柄の人間の言葉なんて、たとえ先輩だろうと聞かないから。
そういった意味では今年のメンバーは凄いよ。
第一王子に宰相の息子に侯爵令嬢、さらに聖女候補まで揃っている。
わっはっはっ、これで誰も逆らえまい! 学院は私達が制圧したわ!
なんてゲームのキリカなら言いそうね。
もちろん私はそんなことはしない。
しないったらしない。
そして、私達一年生と現生徒会メンバーの顔合わせの日がやってきた。
私とエルカちゃんが連れだって生徒会室に入ると、ヴィクトリアを含めて四人の人達が優雅にお茶を飲みながら談笑していた。
二年生と三年生に二人ずつ。
少ないと思うかもしれないが、高位の王侯貴族が同じ年代になることは少ないので、毎年各学年の人数は二〜三人なのだ。
二年生の二人はシュガー侯爵令嬢のミラ・シュガー、ソリッド伯爵令嬢のエクレア・ソリッド。
三年生は生徒会長のモンブラン侯爵令嬢ヴィクトリア・モンブラン、唯一の男性で副会長のウエハース伯爵家のイーサン・ウエハース。
もちろん私は家の付き合いでがあるから知っているが、みんな貴族には珍しく良い人達だ。
私とエルカちゃんに気づいたヴィクトリアが声をかけてきた。
「キリカさん、エルカさん、ようこそ生徒会へ。歓迎するわ。ラファエルとアルベルトは一緒じゃないの?」
「ラファエル様達とは特に親しくもありませんのでわかりかねます。サボりですかね?」
生徒会長! あの二人、初日からサボってますよー!
ビシッと言ってやってくださいよー!
「誰がサボりだって?」
「はぁ、僕達にそんな口をきくのはキリカだけだよ」
「あら失礼、くるのが遅かったのでつい……。皆さんが気軽に話しかけられないのは怖がられているからではないかしら?」
私達がやってきてからすぐに、ラファエルとアルベルトも生徒会室にやってきた。
なんだ、サボりじゃなかったのか。
「あははっ、君達は昔から仲がいいわね」
「やめてくださいヴィクトリア様、私達は別に親しい仲ではありませんの」
「そうだな。キリカは面白い観察対象であって仲がいいわけではない」
「そんな息ぴったりで否定されても説得力がないわよ」
罵り合う私達を見たヴィクトリアは、何を勘違いしたのか仲がいいと誤解した。
人聞きが悪いからやめてくれ!
本人目の前にして面白い観察対象とか言っちゃう奴と私は仲良くなれないよ!
「それじゃあ全員揃ったことだし始めよう。みんな見知った仲だろうが、エルカさんは初めて会う人もいるだろうし、自己紹介から始めよう」
ヴィクトリアの言葉通りエルカちゃん以外のメンバーは、小さな頃からパーティーなどで会っている。
親しくはなくても顔見知りだから簡単な人となりくらいはわかる。
ヴィクトリアはエルカちゃんの為に自己紹介をしようと提案してくれた訳だ。
ちょっと腐っているけど、面倒見のいい先輩なのだ。
それぞれの自己紹介が終わると、新メンバーである私達を交えて交流会が開かれた。
「それにしても今年のメンバーは凄いな、よくぞこれだけの人材が揃ったものだ」
「そこは会長である私の人徳のなせる技ね。最強メンバーが集まったと自負しているわ」
イーサンが感嘆の声を上げると、ヴィクトリアが形のいい胸を反らして自慢気に語る。
ちょっと腐ってて調子のいい先輩だけど、ヴィクトリアには確かに人を惹きつける魅力があるんだよな。
あの人の為に何かしてあげたいって思わせるんだよね。
それを計算じゃなく素でやってるから魅力につながっていると私は考察していた。
「エルカさんなんてキリカさんがいるなら私もやりたいなんて言ってたわよ。さすがはキリカさん、モテるわね」
「えっ!? そうなのエルカちゃん?」
エルカちゃんはヴィクトリアの発言にビクッと体を震わせた。
一応真意を確かめようと聞いてみると、
「ははは、キリカちゃんと一緒ならきっと楽しくなりそうだと思って……。もうっ! 会長、キリカちゃんには言わない約束だったじゃないですか!」
「あら、そうだったわね。口が滑っちゃったわ。ごめんなさい」
プンスコ怒るエルカちゃんだが、バレたのが恥ずかしいだけで実際は怒っていなさそうだ。
恥ずかしそうに赤くなった顔が実に可愛い。
ヴィクトリアもそれがわかるのか、楽しそうに笑いながら謝罪を口にした。
ヴィクトリアの奴、エルカちゃんの反応で遊んでるな。
まぁエルカちゃんは可愛いから気持ちはわかる。
約束破りは絶許だけど、今回は初めて見るエルカちゃんの表情を引き出した功績として許すとしよう。
「とにかく四人ともこれからよろしくね。みんなで力を合わせて、私達の代を最強の生徒会にしましょう」
ヴィクトリアは約束を破ってエルカちゃんの生徒会入りの話をしてしまったことを誤魔化すように、にっこり笑って話をまとめた。
せっかく私達の代にこれだけのメンバーが揃ったんだ。
これからの学院生活をより楽しいものにする為に、私も頑張ろうと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます