第18話オリエンテーリング
入学式を終えた私達はそれぞれの教室に分かれた。
教室にいるクラスメイトのほとんどが子供の頃から付き合いがあるので、深い付き合いはなくとも顔と名前くらいは知っている。
知らない子は貴族ではないが、それなりにお金持ちの家の子供だ。
そういう家には家督を継げない貴族の血が入ってるから魔力持ちが生まれてくる。
その中でも裕福な家の子は学院に入学してくるんだよね。
特に裕福でもない本当の平民は、魔力を持っていても学費が高くて国や学院からスカウトされないと入学できない。
優秀な魔力を持っていてスカウトされた特待生は学費を免除される。
今年の特待生はエルカちゃんだけかな。
聖属性の魔力はとても珍しく、学院を卒業した後は聖女として神殿に勤めることになる。
将来の就職先まで決まってる訳だ。
みんなが一人ずつ自己紹介をしていくと、有力貴族の生徒の時には歓声が上がる。
王都から離れた地域や他国から留学してきた生徒もいる為「あの方が〇〇家の〇〇様か」などと感嘆の声を上げているが、私の番では一際歓声が上がった。
ふふふっ、悪い気はしないわね。
なんて思っていたら、ガイアスの時にはさらに大きな歓声が上がった。
さすがは王族、公爵令嬢よりも注目されてるわ。
ガイアスはイベント事に出ないことも多いから、貴族でも会ったことがない人がいるんだろうな。
別に私より歓声が多いからって、悔しくなんてないんだからね!
「キリちゃん、歓声の大きさが全てではないですよ。大丈夫、私はキリちゃんが凄い人だと知っていますから」
「私もマリー様と同じ意見です」
「二人とも……ありがとう! やはり持つべきものは信じあえる友人ですわね」
マリーとサラが私の心情を察して慰めてくれた。
ありがとう、私負けない……ガイアスになんて負けないよ!
入学から数日が経ち、学院生活に慣れてくると各生徒の実力もわかってくる。
学院では魔法の他にも戦闘や通常の勉強などの授業も行うのだが、今まで貴族のパーティーなどでしか顔を合せなかったので実力を知る機会がなかったんだけど、正直他の生徒はたいしたことはなかった。
思い返せば私が同世代で戦ったことがあるのはガイアスだけなんだよな。
あいつが異常に強かったって訳だ。
私と戦った五年前よりもずっと強くなってたし、さすがは将来最強クラスの強さまで成長する男といったところか。
訓練で私はガイアスと戦っていない。
なんか向こうが私と戦うのを避けてるみたい。
武士の血を引いてるみたいな男だから手の内を隠してるとかじゃなくて、戦うならちゃんとした舞台で戦いたいんだと思う。
男だねぇ。
そんな学院生活を続けていた私達に初のイベントがやってきた。
毎年恒例の新入生交流オリエンテーリングだ。
名前だけ聞くと楽しそうなネーミングだけど内容は結構大変で、王都の近くにある魔物の生息する山で行われ、各チェックポイントを通過しながら戦闘や野営のなどの訓練をするのだ。
貴族は戦争で遠征することもあるので、学院ではこうした野外活動のイベントがある。
本番で失敗しない為に学生のうちから練習しとくのはいいことだね。
オリエンテーリングはクラスを半分に分けた男女混合のグループに分けられる。
一年生はニクラスあるから四つのグループに分けて、ゴールまでの時間と得点を競う。
得点は通過するチェックポイントの難易度によって変わり、難しいほど高得点になる。
早くゴールするほど高得点なので急いでゴールするもよし、チェックポイントを回って得点を稼ぐもよし、各グループで戦略を練って競い合うイベントだ。
オリエンテーリングのグループ分けは、戦力を公平にしつつ生徒の希望も聞いて分ける。
幸いこのクラスの最大戦力である私とガイアスはグループリーダーを任されたので、ガイアスとは別グループになれた。
最終的にメンバーは教師がバランスを見て決めるんだけど、仲がいい人達と組めたら嬉しいな。
「キリちゃん、一緒のグループになりましょう」
「私もお願いします」
「もちろん」
私がマリーとサラの誘いに二つ返事で了承すると、他の生徒も私に誘いの声をかけてきた。
オーケーオーケー、最終的には教師が決めるだろうけど希望は伝えておくよ。
そしてやってきたオリエンテーリング当日、私達一年生と引率教師は会場である山の麓にやってきた。
この山はそれほど強い魔物も生息していないから、比較的安全面に考慮したイベントだ。
とはいえ魔物は魔物、危険なことに変わりはない。
開始前に教師からルールや注意事項の説明がされた。
今回の注意事項はこんな感じ。
十個あるチェックポイントのうち最低でも三つ回ってからゴールに向かうこと。
他チームの妨害は禁止。
オリエンテーリングは一日野営を挟む予定なので、野営時には魔物に注意すること。
大きな注意事項はこの三つだけ。
あくまでも新入生の交流が主だから、危険がないように各チームに引率教師がついていく。
要するに一泊二日でキャンプする遠足みたいなものだね。
学院入学後の初イベントに私の心は高鳴っていた。
だって実に平和的で楽しそうだもの。
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