第14話妹が帰ってきた
「キリカ、オーロラの病気が良くなったらしく近々家に帰ってくるぞ」
「えっ! 本当ですかお父様、楽しみですわ!」
夕食時に聞かされた話に私は歓喜した。
オーロラは病気の療養の為に空気の綺麗な田舎の領地にいっていた私の妹だ。
そのオーロラが帰ってくるんだ!
前世じゃ一人っ子だったから会えるの楽しみにしてたのよね。
「お前には良い話ではないかもしれないが……って、あれ? キリカはオーロラを嫌っていたのではないのか?」
「いつの話をしているのですかお父様? そんな昔のことは忘れてしまいましたわ。私はオーロラと仲良くしたいと思っております」
「そうかそうか! それは何よりだ! やはり姉妹は仲良くするのが一番だな!」
そう言ってお父様は「わはははっ」と笑った。
ゲームでもキリカとオーロラが関わることはほとんどなかったもんな。
キリカの記憶を得た今ならわかるけど、単純に仲が悪かったのよね。
キリカの記憶に正義感の強いオーロラとよく喧嘩してた記憶があるもの。
でも今なら、今の私ならオーロラと仲良くなれるんじゃないかなって思うんだ。
そう思っていた時期が私にもありました。
結論から言うと帰ってきたオーロラに蛇蝎の如く嫌われてます。
私何かした? 答え、何かしたのは私じゃなくて私になる前のキリカ。
どうやらオーロラには以前のキリカのイメージが根強く残っていて、私のことを何か企んでいるんじゃないかと疑ってるみたい。
初めて会った時も「どうしたのですかお姉様? 何を企んでいるのですか?」と、警戒心丸出しだった。
う~ん、これは時間をかけて徐々に打ち解けていくしかないなぁ。
そう思った私はオーロラの信頼を得るべく、誠実さをアピールする作戦で長期戦に突入した。
「町の視察に行きます。アルフレッド、護衛をお願いします」
「はい、了解しました」
おっ、オーロラが町に繰り出すみたいだ。
オーロラはたまに護衛を連れて町の視察に出かけることがある。
本人は視察って言ってるけど、本当はだだの遊びだったりする。
ただ遊びにいくっ言うのをプライドが許さなかったみたいで、視察と称して買い物とか買い食いとかしてるのよね。
「あっ、オーロラ、視察なら私もついて行っていいかしら?」
「ダメです。お姉様を信用できません」
オーロラの視察と称した買い物についていこうとしたけど断られちゃった。
でも断られるのはいつも通り、偶然を装って町で合流しちゃおっと。
私はオーロラ達の後をつけて町に出かけることにした。
「見てアルフレッド、これは私に似合うかしら?」
「ええ、お似合いだと思いますよ」
「気のない返事ね。何か言いたそうな顔をしているわねアルフレッド?」
「はい、キリカ様のことなのです。あの方は以前のオーロラ様が知るキリカ様ではありません。まるで人が変わったようです。以前はともかく、今のキリカ様は尊敬に値する方だと思います」
二人の買い物を観察していると、アルフレッドが嬉しいことを言ってくれた。
アルフレッド! 貴方、私をそんなに評価してくれていたのね!
「そうですね、私もなんとなくわかってはいるのですが、どうしても認めることができないのです」
「そうですか……、いずれ姉妹のわだかまりが消えるといいですね」
う~ん、オーロラの心の壁も少しずつ崩れてきてるのかな?
後一つ、何かきっかけがあればなぁ。
そう考えながら二人を尾行していると、怪しげな動きを見せる集団を発見した。
何だろ? 怪しい奴らね。
アルフレッドは気づいているのかしら?
数が多いから、いくらアルフレッドでも多勢に無勢できついわよ。
「オーロラ様、怪しい者に後をつけられております。片づけてきますのでこの場で少々お待ちください」
「そうなのですかっ!? 全然気づきませんでした。お願いしますね」
おっ、アルフレッドも不審者に気づいたようだ。
あれ? なんでこっちにくるのよ。
不審者はこっちじゃないよ! こっちには私しかいないよ!
「何奴!? あれ? キリカ様、なぜここに?」
「あ……あら、アルフレッドじゃない。こんな所で会うなんて奇遇ね」
「……キリカ様、もしやオーロラ様をつけていたのですか? それはキリカ様の言うところのストーカーでは?」
「失礼ね! 偶然よ偶然! または運命ともいうわね」
アルフレッドめ、言うに事欠いてストーカーとは何だ!
私はただ二人を尾行してただけだぞ!
あれ? それってもしかしてストーカーなのでは……?
大変な事実に気づいてしまいました。
私の行動はストーカー行為だったようです。
「キリカ様、オーロラ様と仲良くなりたいのはわかりますが、後をつけるのはやりすぎでは? 我々騎士はキリカ様が変わられたことを知っていますが、オーロラ様はまだ戻られたばかりです。時間をかけて信頼を得るのがよろしいかと」
「わかってるわよ……。ところでアルフレッド、偶然を装って近づくからオーロラと合流できないかな?」
「時間をかけた方がいいと言ったばかりではないですか、まったく……。では、私は戻りますのでタイミングを見て近づいてください。協力しますので」
「ありがとうアルフレッド!」
振り返ってオーロラのもとに戻ろうとしたアルフレッドの足が止まった。
どうしたのかな? あれ、オーロラの奴どこいった?
「オーロラ様! どこですかオーロラ様!!」
アルフレッドが大声を上げるが返事はない。
私がアルフレッドと話している間に、オーロラの姿が消えていたのだ。
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