第4話戦闘訓練をしよう
フローズン家で開かれたお茶会から一夜明け、私に平穏な日々が訪れた。
お茶会では前世の親友、暦ちゃんが推しているマリーと仲良くなれたのが最大の成果ね。
マリー可愛かったなぁ。
ばっちり決まったブラウンの縦ロールの髪はとっても可愛いし、くりっと大きな瞳は宝石のように輝いているんだもの。
ま、同い年の貴族の娘同士だし、また会う機会もあるでしょ。
私には他にもやるべき事がある。
死亡フラグ回避の為の準備よ!
考えた結果、やるべきことは大きく分けて三つ。
一つ、悪役令嬢にならずに周りと良好な関係を築くこと。
二つ、ラファエルとの婚約阻止。
三つ、もしもの時に備えて殺されないように強くなること。
以上の三点よ。
昨日のお茶会ではちょっとやらかしちゃったけど、ラファエルも怒ってなかったっぽいしセーフでしょ。
むしろ、逆に気に入られた可能性があるのが不安なのよね。
ま、不安はあるけどわからないことを考えてもしょうがないし、できることからやっていきますか。
はい! ということでやってきましたのはフローズン家所属の騎士団訓練場!
館のほど近くにある、フローズン公爵家所属騎士団の皆さんが日夜訓練に勤しんでいる訓練場です!
おーおー、むさ苦しい男達が血と汗と涙を流しながら頑張っているね。
あっ! 女性騎士も少しだけどいるんだ。
戦う女騎士ってかっこいいなぁ。
私的には姫で騎士なら役満ね。
姫騎士とかそれをおかずにご飯三杯はいけるわ。
ま、この国の姫はまだ幼いんだけどね。
将来は騎士になってほしいなぁ。
私が妄想を楽しんでいると、周りから注目を浴びていることに気づいた。
んー、なんか周りの兵士達から凄く視線を感じるんだけど……もしかして私目立ってる?
まぁ、訓練場にこんな可憐な幼女が一人でいたらそりゃあ目立つよね。
雇い主の娘とはいえ、私の顔を知らない人も多いだろうし。
「キリカお嬢様? こんな場所に何用ですか?」
兵士の訓練を見学していると、初老の男性が私に声をかけてきた。
この人は確か、フローズン公爵家騎士団長のオルテガさんだったかしら?
お屋敷で見た記憶があるわ。
「ごきげんようオルテガさん。私もここで訓練がしたくてきたのだけれど、よろしいかしら?」
「キリカお嬢様がここで訓練ですか? フローズン公爵の許可はあるのでしょうか?」
「うっ……許可がないとダメかしら?」
オルテガさんが難しい顔して考え込んじゃった。
う~ん、強くなるのに対人訓練は欠かせないからここで修行したいけど、みんなに迷惑はかけたくないしなぁ。
断られたら残念だけど、素直に諦めて一人稽古しよう。
「眠れる天才がついに目を覚ましたのか……? これは面白くなりそうだ」
なんかオルテガさんが小声でぶつぶつ言ってる。
考え事を声に出して纏めるタイプの人みたいね。
てか、また面白い女とか言ってなかった?
最近よく言われるけど、こんな美幼女に向かって何言ってるのかしら?
まったく、失礼しちゃうわね。
「キリカお嬢様が本気になったのなら、恐らくフローズン公爵もお喜びになるでしょう。施設は自由にお使いください」
「ありがとうございます! 助かりましたわ!」
やったー! 団長からお許しが出たぞー!
これで心置きなく修行ができるわ!
意気揚々と訓練場に入った私に騎士達の視線が突き刺さる。
騎士団の訓練場に美幼女がいたら、そりゃあ注目を集めるよね。
おっ、オルテガさんが前に出たぞ。
みんなに紹介してくれるのかな?
「皆聞いてくれ。こちらの方はフローズン家の令嬢キリカお嬢様だ。ここで訓練したいそうなので相手をしてやってくれ。見た目は幼いがキリカお嬢様は天才だ。手加減はいらんぞ。これでよろしいでしょうかキリカお嬢様?」
「ええ、ありがとうオルテガさん。最高だわ」
オルテガさんの紹介で騎士の皆さんの目の色が変わった。
きっとオルテガさんが騎士達から信頼されてるから、子供だからっていう侮りが消えたのね。
これこれ、いい緊張感が漂ってるわ。
やっぱり強くなるにはガチで戦わないとね。
接待スパーリングじゃ強くはなれないから。
「キリカお嬢様、武器は何を使われますか? そこに並べてある中からお選びください」
「そうですね……ではこれを」
「ほう、短めの木剣ですか。体格を考えて扱いやすい武器を選んだ訳ですな。では、身体強化魔法は使えますか?」
「ええ、もちろん」
さすが歴戦の強者、よく見てるなぁ。
身体強化魔法で力は強化できても、私の体重だと重い武器は振り回されてバランスを崩しちゃうのよね。
リーチが短くなるのは痛いけど、そこは体の成長を待つしかないわ。
ちなみに身体強化魔法っていうのは属性に関係なく魔力が扱える人間なら使えるものなんだけど、肉体の限界を超えて身体能力と強度を底上げできる便利な魔法よ。
魔力が高いほど出力を上げられるから、見た目と実際の力が合わないなんてことがざらにある。
そんな訳で、この世界では見た目で侮って油断するなんてのはバカのすることなのよね。
「それでは模擬戦でキリカお嬢様の実力を見せてください。相手はどうするか……アルフレッド、やってみるか?」
「はいっ!」
オルテガさんに指名されてアルフレッドさんが前に出る。
精悍な顔をした中肉中背で短髪の二十歳前後の青年だ。
あまり背は高くないけどよく鍛えられたがっちりした身体つきね。
立ち姿からも運動神経の良さがわかるわ。
うん、これは強いわね。
「キリカお嬢様、アルフレッドは下位貴族の三男坊で、魔法も使える若手のホープです。相手に不足はないと思います」
「ありがとう、楽しみだわ」
貴族の三男か、家督を継げない貴族は家を出て騎士になる人が多い。
貴族の血を引いてるから魔力を持ってるし、魔力がある人間はない人間よりも強いから適材適所ってやつね。
この世界で初めての戦闘、それも魔力を使っての戦闘なんて楽しみだわ。
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