【コメディ】ボトルメール

 腰を下ろしてぼんやりと砂浜で海を眺めていたところ、ボトルレターが流れて付いていることに気付いた。

 飲み物なんかの空の瓶に手紙を入れて海や川に流して誰かが拾って読むのを期待するあれだ。

 今時こんなことをする奴がいるなんて珍しい。

 好奇心に駆られた俺は瓶の封を解いて中の手紙を読んでみた。

 そして、思わず眉を寄せた。


『誰か助けて下さい。HELP!』


 書いてあるのはそれだけだった。

 なんだろうこの内容は。

 質の悪いイタズラか何かか?

 しかしどうも見覚えがあるような……。

 手紙を見つめながら、はて、と首を傾げて、間もなく思い出した。


「ああ、これ俺が昔出した奴か」


 恐らくもう数年も前のことになるだろうか。

 乗っていた飛行機が事故を起こして海に墜落し、意識を取り戻したとき俺は一人だけ無人島に流れ着いていた。

 その時に助けを呼ぼうとあれこれ試した策の一つがこのボトルメールだったのだ。

 懐かしい。


 しかし、改めて見てみると酷いなこれ、と俺は思った。

 誰か助けて下さい、だけでは例え拾われても何のことかわからないだろう。

 せめて自分の名前や事故を起こした飛行機の名前でも書いてけばいいものを。


「まあ、こうして戻ってきたってことはどちらにしろ無駄だったんだろうけどさ……」


 そう。

 俺は未だに無人島で生活しているのだ。

 誰か助けて下さい。

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