【ジャンル不明】ゴミと宝

 早朝。男が一人、ゴミ袋を手に家を出た。

 欠伸を噛み殺しながらゴミ集積場にゴミ袋を置いたが、男は自分の捨てた袋を見て目を疑った。

 ただのゴミしか入れていないはずの袋の中に、見たこともない宝がぎっしり詰まっているではないか!

 男は慌ててゴミ袋を持ち帰った。

 しかし家であらためて袋を見ると、中に入っていたのはただのゴミだけだった。

 寝ぼけていたのだろうか。

 男は顔をしかめると、もう一度集積場へ行って袋を放り投げた。


 数分後、女が集積場にやってきた。

 そして、男が捨てたゴミ袋に目を留めた。

 一瞬、袋の中に見たこともない宝が詰まっているように見えたのだ。

 しかしよくよく見てみると、何の変哲もない生活ゴミである。

 なぜこんな見間違いをしたのだろう。

 女は首をかしげたが、自分のゴミを捨てるとさっさとその場から立ち去った。


 その後にやって来た住民たちもそのゴミ袋に目を留めたが、いずれもやはりただのゴミだと思い直して立ち去った。

 ゴミ袋は回収され、他のゴミと一緒に焼却処分された。


 実はそのゴミ袋に詰まったゴミは、奇跡的な積み重なり方によって、ある画期的なアイデアを連想させる模様・フォルムを形作っていた。

 もっとよく観察していれば巨万の富を得られる鍵になっていたのだが、そんなことには誰にも気付かれぬままこの世から消えたのだった。

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