第15話 おばあちゃんとの会話。その2

淡いぼんやりとした光が見える。


えるは、その淡い光を

追いかけていた……


淡い光は、そのまま、、、

えるの手のひらの上へと


ゆっくり落ちてきた。


えるが光を大切に大切に扱っていると……



その淡い光は……急にまばゆい

閃光へと変わっていった。




夢から覚めると……そこは

見たことも無い誰かの家だった。



だけど。台所からは、とてつもなく……良い香りが漂っていた。



えるは、ぼんやりと夢と現実の

狭間にいた……


のれんの向こうでは、リズムよく

包丁を動かす音が聞こえる。



えるは、起き上がり

のれんの向こう側を見に行くと


『あれ?……おばあちゃん』



おばあちゃんが、気が付くと

『あんた、寝てなくて平気かい?』


『その青白い顔は、旦那さんと

何か……あったね?』



『……おばあちゃん』


『まぁまぁ、年寄りの作る

料理なんざ、口に合わないだろうけれど。食べていきなさいな。』



『…………はい……』



一人暮らしの、おばあちゃんの

生活を、ぼんやりと眺めていた。



えるは、小さなちゃぶ台の所

へと向かっていくと、


おばあちゃんは……おかずを

運んできた。



おばあちゃんは……久しぶりの

来客だったので。


嬉しくて、ついつい

張り切って作りすぎてしまった。



軽く5~6品はあるであろう?

並べられた、おかずは


賑やかに、所狭しと並べられていた。



『さぁさ。姉ちゃん、食べなせ』


『…………うん。』


えるは、おばあちゃんの作りたての、おかずを、口へと運んだ。



『…………!!』




えるは、温かいおかずに……

心の氷が溶け始めてきて、



その場で泣いてしまった。


おばあちゃんは……えるを

黙って見ていた。



は……分からんが。キチンと

食べなきゃね?


美味し~いモノを食べると、

元気に……なるさかいねぇ。』



おばあちゃんも、えると一緒に


おかずとご飯を、パクパクと

食べ出した。


えるは、おばあちゃんに……

御礼を言った。


その時……また、大粒の涙が

出てきた。



おばあちゃんは……えるの頭を

撫でてくれた。



『あんたさん。泣くこたぁないさ

。ケンカでもしたんだろ?』



『早いとこ、旦那さんに……

謝っちまいなさいな。仲良き

ことは、良いことだよ。』



『うん…………うん……。』



えるは、おばあちゃんに頭を

何度も何度も、撫でられた。


おばあちゃんの、温かい手は



しわだらけで、だけど

気持ちが、とてもこもっていた。



えるは、いつしか。


昔懐かしい、自分のおばあちゃんを、思い出していた。




『えるちゃんや、えるちゃんは

ええコだからな?男に騙される

んじゃないよ。』




自分のおばあちゃんと、目の前の

おばあちゃんの記憶が、



ごちゃまぜになり、えるは



泣きながらも、おばあちゃんに

精一杯の笑顔を見せた。




おばあちゃんは……



『そうか、そうか、わかった。


あんたさんの笑顔は……旦那さん

も、好きじゃろうな。』



『泣いてダメじゃ、せっかくの

美人が、台無しじゃ。よしよし』



おばあちゃんは……とても

優しかった。



食べきれなかったおかずを

重箱に詰めてくれて、風呂敷で

包んでくれた……。



おばあちゃんは



『さぁさ、これを一緒に……

旦那さんと……食べなせ。』



『…………うん。うん……』



姉ちゃん』




『重箱……返しに来たときには

ゆっくりしてきんさいな。』



おばあちゃんは……玄関まで

えるを見送ってくれた。




えるは、おばあちゃんに……

手を振ると、新しい明日への



未来を、明るく考えていた……





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