第13話 埋まらない溝……。

『弓弦くん!!ごめんなさい!』


…………この一言が、

今のえるには、言えなかった。



あんな弓弦の悲しそうな後ろ姿を

ホントは、走って追いかけたかった。


『ホントは……大好きだから。』



頭の中で……言えなかった言葉達が、思考をグルグルと巡る。




えるは、とても胸が張り裂けそうだった。涙も枯れてしまっていた。



力なく手すりにつかまり、

二階の部屋へと向かった。



ゴミ箱の中身が、やたらと

悲しげに映った。



削除した2人の写真を

ゴミ箱のマークを取り消すかの

様に…………つたない手つきで



(弓弦くん!!弓弦くん!!)


写真が、元に戻ると……えるは

後悔の念で……心が締め付けられていた。



へたり込むと、

『もう……無理なのかな?』



弓弦くんとの約束も、

あったのにな…………。


逢えないだけでも、こんなに

つらいモノだとは、

えるは知らなかった。



弓弦と……毎日毎日楽しく過ごす

事が、当たり前になっていたから。



(せっかく、お父さんと、

お母さんに喜んでもらえてたのに。)



ペタリと……えるは、寝ころがると……スマホの中の

楽しそうな写真を見ながら



遊園地でのデートを思い出していた。



えるは、悲しすぎて悲しすぎて、

スマホを手にして


弓弦の番号を、押してみた。




コール音が、えるにはとても

長く感じた。




《プルルル……ピッ》




『はい!もしもし!』


『ゆっ……弓弦くん??わっ

わたしだけど……あの。』



『へ?弓弦ね!弓弦ーーー?』


携帯には、女性の声が出たのだ。

弓弦は、誰かと遊んでいたのか?



だが。えるは耐えた。



どうしても弓弦に、謝りたかったから。


しばらくすると、聞き慣れた声が聞こえた。


『はい!どちら様……?』




『あ!!あのっ!!わたしっ。』


えるに途端に緊張感が走った。





次の瞬間!



ブチッ!!……ツーツーツー……




弓弦に、電話を切られてしまった。えるは、事態が飲み込めなくて、




何度も、弓弦にコールしてみるが


携帯は、2度と通じなかった。




えるは……ショックを受けた。








えるは、ベッドに倒れ込んで

自分の発言が


こんな事になろうとは思わなかった。




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