第19話 廃人の住処
「リア友が来ます。」
「おおん...」
サイモンとタツとゲームをすることになった。それをアカグロのみんなに伝えると微妙な反応になった。
まあこんな反応になると予想していた。友達の友達ほど気まずい関係はないだろう。
「やっぱり女の子?」
「いや、男二人。」
「わお...」
さっきからAbuzoruが変な反応をする。
「なにその反応」
俺が聞くと、
「案外肉食なのね」
とにやにやする。
「あー、やっぱ俺らと遊ぶのはそれまでって感じ?」
とHAGANEさん。一緒に遊んでもいいと思うが、これはこの人たち次第だ。無理にとは言わない。こっちだって気まずいしね。
「いや、みんながあいつらと一緒でもいいのなら...」
しばらく考えるみんな。すると、SWZさんが、
「なら別に組織作って、俺たちと連合組むのはどう?味方同士になれるし、主な活動は別々でできるしいいんじゃない?」
と提案した。
「それがいいんじゃない?」
とAkiさんが賛成。
Itachさんは興味なさそうにうとうとしている。
「問題はカオスさんなんだよなあ...」
「そうなんだよね...」
そう、問題はchaosさんがどちらの組織に来るか。
「本人が来るまでとりあえず置いておくしかないだろうな。」
それは後々本人に直接聞くことにして。
とりあえずまだアカグロを脱退はしないが、今日はサイモンたちと遊ぶことにした。
「では行ってきます。帰っては来るのでご心配なく。」
「はいはい。楽しんで来いよ、またな」
「はーい」
俺はバイクにまたがり集合場所へ向かった。
______
「こっちでも女になっちまったのか。」
「ここでは最初からこんな姿です」
集合場所にいたのは、薄い水色の目立つ髪をした少年と、金髪の少年である。
薄水色がタツ、金髪がサイモンである。
サイモンはリアルとそんなに変わっていないが、タツは数段階イケメンになっていた。
「趣味悪」
「お前だけには言われたくない。リアルでも
「リアルではなりたくてなったわけじゃ...なった...わけじゃないわ!」
うう、素直に否定できない。なりたくなかったわけでもないんだよな..,
「で、何する?」
サイモンが俺に聞く。
「PVPがしたい」
昨日の配信者はおそらく俺のIDを覚えたのではないだろうか。見つかったら攻撃してくるだろうし、それならこっちから攻撃してやればいい。
「お前結構狂犬だよな...女の子へのアタックもそんな感じでやっとけば、今頃彼女もいたかもしれんのに...」
「余計なお世話だ」
タツの軽口を受け流すと、サイモンが、
「俺このゲームでまだPVPしたことないんだわ。だからさ、ちょっと二人とも練習相手になってくれよ。」
と頼んできた。
サイモンは他のゲームではかなり強かった。タツのがうまかったが、それでも常人以上の上手さだろう。
このゲームでのサイモンは見た感じ筋力重視。となると、結構重量のある武器を使うのだろう。
「いいぞ。祐樹も手伝ってくれるよな。」
「もちろん。あと、ここでは祐樹じゃなく【Kurosuke】な。」
本名などの個人情報は慎重に扱うに越したことはない。結構重要なことだ。
「ああ、すまんな。俺もここでは【ICE】な。」
とタツ。
「じゃあ俺もここでは【Sakura】だぞ。」
とサイモン。
「おし、では早速行きますか。」
「そういえば、どこで戦うの?」
戦う場所は選ばないと、他のプレイヤーが乱入してきてめんどくさくなる時もある。
だが、タツの口ぶりから、どうやら場所は決まってそうである。俺が聞くと、
「聞いて驚け、なんと俺、
と、とんでもないことを言い出した。
「「すげええええ!」」
一同歓喜喝采である。
______
初の世界サーバーへの接続である。日本サーバーと違って、初期地点はランダムだそうだ。
だが、一応同じパーティー内に入っていたので俺たちは同じ場所にスポーンした。場所は何にもない草原であった。
「ヘリ呼ぶから待っておけ。」
「へり...」
ヘリなんてよく一人で買えたものだ。アカグロのみんなと頑張っても一、二台買えるかどうかなのに。
しばらくすると、大きなプロペラ音が近づいてきた。羽が前後についている大型のヘリコプターである。
「すげえな...」
「防弾で武装もある。ロケランにも数十発耐える優れものだ。」
とんでもねえな。どうなってんだこいつの財力。さすが俺を超える廃人である。
...こいつの妹であり、こいつの上位互換でもある百合ちゃんはもっとやばいことになってそうだな...
しばらく飛んでいると、大きな丘が見えた。丘にはこれまた大きな鉄の扉がある。
その近くのヘリポートの着陸すると、鉄の扉の前に立ったタツが大きく手を広げ、
「ようこそわが家へ。」
と言った。
「なるほど。地下か。」
「その通り。」
サイモンの問いに答えると、大きな鉄の扉がビービーというサイレンとともに開き始めた。
「これほんとにお前ひとりで作ったの?」
「もちろん。」
さすがに引くわ。
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