第二章 轟けアカグロ

第11話 リアル美少女受肉青年

「「はい?」」


「だから、ゲームでネカマしてたら本当に美少女になっちゃったの。」


俺は今、友達のサイモンとタツにこうなった経緯を説明していた。


「いや、俺もびっくりしたんだよ。朝起きたらこんな感じになっちゃってさ。」


「あのー祐樹の知り合いかなにかですか?そういうのいいので、裕樹を呼んでくれませんかね?」


「だから俺が祐樹だっつーの!」


どうやら俺の知り合いにからかわれていると思ったらしい。まあ、友達がいきなり美少女になってたなんて信じられないよな。


「本当なんだよ。お前とボイルアウトとかスペーススター77やってた俺!キルレ4以上でお前らをボコってた俺!」


「「...」」


まだ信じないかこいつら...!


「...サイモンは由美ゆみちゃんに3回振られた」


「なっ」


「タツはそもそも告白したこともされたこともないヘタレ。そしてロリ巨乳が好きな犯罪者予備軍」


「!?」


これで信じるだろ。


「あいつ...!最低だ。何てこと言いふらしやがった!」


「変な噂流してやる」


「ちょちょちょい!!!」


まだダメみたいだ。てか変な噂流すな!


「もう...何言ったら信じてくれるんだよ」


「まず、俺の知ってる祐樹は男だったはずだ。背は低いほうだがもっと君よりは背が高い。それにそんな整った顔していないし、そんなおっきい胸はついてない。」


「...お前さあ」


タツの言葉にサイモンが呆れていた。


...俺はなんとなく胸を隠す。


タツの株が急降下した。なんていうか、いつもきもかったが今日は特にきもいな...


「...百合ゆりちゃんに言ってやる」


「!?」


百合ちゃんとは、タツの妹、氷川百合ひかわゆりのことだ。百合ちゃんはタツよりゲームがうまいので、たまに一緒に遊んでいた。


「何で百合のこと知ってる...!?まさかお前、ほんとに祐樹か!?」


「だからそうだって言ってんだろ!」


そのあとしばらく玄関で話し合い、どうにか納得してもらえた。


「言っておくが、家には上げないからな。」


「なんでだよ。疲れたんだからゲームくらいしようぜ。」


「今の体じゃ、タツに何されるかわからないからな。」


「!?」


まあいくら美少女とはいえ、友達相手に手を出すやつではないとわかっているが。


「今の俺は美少女だ。わかるか?簡単に家に男を入れたら価値が下がるだろう?」


「調子乗ってんなお前」


ふふんと胸を張ってどや顔した。


「あ...あと、このことは本当に秘密にしてほしい。」


俺が真面目な顔で言ったので、二人は真剣に聞いてくれた。


「病院に行ったんだ。実は、もう中身まで完全に女らしくて。こんな症例は世界で初めてなんだと。このことは世間に公表されたらまずいらしい。」


二人は唾をのみ、真剣にこちらを見る。


「だからさ、お前たちといつものように学校は行けないんだ。」


「「...マジで?」」


二人は結構深刻そうな顔をした。...そんな顔してくれるんだな。


「でも、これからは男としての黒木祐樹じゃなくて、女としての黒木祐樹で通うことになる。学校ではいつも通り話せないけど、帰ってからゲームとかはできるから...」


「あ、ああ、祐樹さ。まあその、あれ。別に俺らは女のお前でも気にしないしさ、学校でも話しかけてやるからさ。」


「...」


「そんな、泣くなよ」


...ここ最近は泣いてばかりだな。またいつの間にか涙が出てしまった。サイモンは俺のことを心配して気遣ってくれたが、タツは気まずそうに黙っていた。このヘタレめ。


「だい、じょぶ。だいじょぶだからちょっと待って、鼻かんでくる」


一度玄関から離脱して、リビングで鼻をかむ。...俺もヘタレだな。


「...大丈夫か?そういえば学校はいつから来るんだ?」


タツが聞いてくる。


「来週から行く。それまで休みだから、ずっとバット・コミュニティしてる。」


「お前、勉強しないとまた赤点になるぞ」


なんだか、いつも通りの会話に安心した。


「いいなー9連休か。俺も美少女になんねえかなあ」


「お前、これでも結構苦労してるんだぞなめんな」


そんな馬鹿な会話をして、しばらくすると、


「んじゃ、今日はこれで帰るわ。誰にもこのことは言わないから安心しろ。」


「マジでやばいことに関しては俺も言わないからな。そこは。」


と二人が言った。なんやかんや言ってこいつらは信用できるから、そんなこと言わなくたってわかってるさ。


「ハイハイ、ありがと」


二人はそのまま玄関から出て行った。


...お母さんには、この二人に本当のことを言ってしまったってこと言わないとな。それにお父さんにはそもそも女になったことすら言ってない。まあそこはお母さんに丸投げでいいか。


______


「あれ?今日chaosさん休み?」


「...さあな。」


ちなみに今の時間は月曜日の午後5時。場所は、バッドコミュニティのアカグロの拠点だ。


≪やっぱり、あの女との口論が原因かも...≫


「女?女VCと口論したの?」


Abuzoruさんが食い気味に聞いてきた。


「何て名前の奴だ?」


≪Pisoka。自分とchaosさんが始めたばかりのころにキルされた人≫


「うわピソカかよ!あいつネットの掲示板で害悪プレイヤーって晒されてたぞ。」


「リスト乗ってるやつか。ああいうやつらとまともに会話しそうだからなchaosさん...」


「まあ、また来たら励ましてやろうか。」


そんなことを話し合っていると、chaosさん以外にもいない人が何人かいることに気づいた。


≪そういえばItachさんとAkiさんもいないね≫


「ああ、たぶんあいつらまだ仕事中。」


リアルの事情か。


≪みんなは普段何してるの?無職?≫


「失礼な。ちゃんと学生だ。」


HAGANEさんは学生らしい。


≪大学生?≫


「おっと、リアルの事情を詳しく聞き出すのはタブーだぞ。」


≪ああそっか。すんまへん≫


「まあ職業くらいならいいと思うけどさ。ちなみにKurosukeさんは何してる人?」


≪学生だけど≫


「JK!?JKなのか!?それともJD!?」


≪うるさい≫


いつになく食いついてくるAbuzoruさん。やっぱ女に飢えてんのか...


「SWZはなんとなく学生ってわかるが、アブゾルって何やってるの?」


「そりゃあな。自宅警備だ。」


ニートかな?ダメな人じゃないか。


「お、おう。お前も大変そうだな...」


申し訳なさそうにHAGANEさんが謝った。


「ちょ、嘘だって嘘!真面目に謝らないでくれよ!就活生だから!」


「大丈夫なのかよ...」


「もう就職先決まって暇を持て余しているから大丈夫だ。」


もしかしたら、Abuzoruさんはかなりのエリートなのかもしれない。


「俺のことは何も聞かないの?」


普段はあまりしゃべらないSWZさんが若干不満そうである。


「そんなガキンチョボイスで何を今更。どうせ中学生だろ」


「うん。中学生だろ」


≪中学生なの?≫


「そうだよ中学生だよ!それとガキンチョじゃない!」


どうやらこの組織最年少は俺じゃなかったらしい。よかったよかった。


≪自分のが年上だ。良かった最年少じゃなくて≫


「おねしょたか!?うめー」


「違うわ!というかクロスケさんて本当に女なの?最初はリーダーが騙されてるのかと思って面白かったから黙ってたけど」


「は?おい!なんか今聞き捨てならないこと言ったなガキンチョ!」


まあ確かにあったときは男だったけど...何と答えるのが正解なのか。


≪今は一応...女だけど≫


「何だその言い方。前まで男だったみたいじゃん。」


SWZさん、その通りです。全く持ってその通りです。


「VCはつけられるようにならんの?いつまでもチャットだと不便じゃないか?」


≪まあ、そのうち≫


勇気出してしゃべってみようかな...と思ったが、今そんな風に言われるとなんだか緊張してしまう。


「...暇だし、今日はこのメンバーで軽く金稼ぎますか。」


ということで、俺たちはクエストの準備をして車に乗った。


______


【バット・コミュニティ】キルリーパーvsハマグチついにキタコレwww




1.名無しさん


お前ら大変だ!お前らの大好きなハマグチの親衛隊がキルリーパーの視聴者とバトってるぞ




2.名無しさん


ビビった本人がバトルしてんのかと思った




3.名無しさん


≫2


それな




4.名無しスリーパー瞳


ハマグチ本人ならともかく、取り巻きは弱かった




5.名無しさん


キルリーパー負けるだろ視聴者の数が違う




6.名無しさん


≫5


ぶっちゃけ腕はハマグチよりキルリーパーのが上だと思っている




7.名無しさん


今日DQN出会い厨配信者をハマグチがボコってたの見たけどキルリーパーみたいな戦い方だとハマグチには勝てん




8.名無しさん


≫7


いや、逆に爆発物ばっか使ってるハマグチがスナイパー激強のキルリーパーに対抗する手段なんてないと思うが




9.名無しさん


結局は先に攻撃したもん勝ち




10.名無しさん


そういえば、Pisoka通報されまくってアカ凍結されたってwww




11.名無しさん


≫10





12.名無しさん


≫10


あいつがガチきしょいから二度と戻ってこないでほしい




13.名無しさん


そういえばPisoka、昨日ファーストシティの裏山で別の女性VCと口論してた




14.名無しさん


≫13


俺それ見たわ。なんか写真晒そうとして相手に止められてたw




15.名無しさん


≫13


ヒエッ




16.名無しさん


≫14


馬鹿すぎるだろ




17.名無しさん


最近女性プレイヤー多いよね




18.名無しさん


ワイ男、女性プレイヤーを一度もお目にかかったことない




19.名無しさん


ワイ男、組織のみんな女アバターだけど中身みんな男




20.名無しさん


≫19


待っておまえら見たことあるかもしれんwww

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