§15【力比べ】
鋭い眼光同士でお互い睨み合い、まずは戦闘に大事な風格、威圧を相手の脳内に産み付ける。
白熊は口からヨダレを垂らし、白熊らしくない仕草を見せる。
「そんなに俺が美味しそうか? ならくれてやるよ」
「ぐわぁぁあ!」
白熊は後ろ脚で立ち上がり、叫び、自分の大きさを俺に示す。
前脚を地に落とし、この山の頂上を揺らす。
「おっと、揺れるな……体重だけで地を揺らすとは大した物だ」
白熊は後ろ脚で地を削り、スタートダッシュの準備が終わったのか、俺に向かって突進を繰り出す。
「その手にはあの親鳥で経験済みだ」
俺は剣を持っていない方で白熊の腕を受け止めようとした途端に立ち上がり、鋭く尖った爪で俺の腕に振りかざす。
フル装備の鎧と爪がぶつかり、腕に乗った体重と勢いで俺のいる場所が1段階、下へ下がる。
「昔の俺じゃ潰されていたな……さて白熊よ、俺と1つ賭けをしないか?」
「ぐわぁぁ!」
白熊は後ろ脚で俺を蹴り上げ、宙へ飛ばす。
俺は黒剣を鞘に収め、大の字に体を広げる。
「《
俺はそう言うと白熊の激怒に触れ、白熊は《
白熊はこれが貴様を殺すための最終準備だと言わんばかりの叫び声で吠え、薄い赤色で包まれる。
「ほら、こい!」
「ぐがぁ!」
白熊は地に爪を刺し、上へ持ち上げ、土を俺にぶつける。
さらに白熊は叫び声を高め、俺の横腹に向かって爪を刺しに来る。
その爪を俺はあえて鎧で受け、腕をクロスさせ、自分の背中に赤い魔法陣を浮かばせる。
「《
クロスから発せられた《
白熊は轟音が耳に走り、鼓膜が破れたのか、突然耳を抑え始める。
「これも1発くれてやるよ」
俺は体を起こし、白熊の顔を横から蹴り、地面へ倒す。
無事に着地した俺は白熊の顔を覗き込むように上から目線を向ける。
「死んだのか? なら卵を探すとするか」
俺は後ろを向き、卵を探し始めようとした途端に白熊は立ち上がる。
「逃げてもいいんだぞ?」
「ぐぅぅぅ……」
「じゃあ、押し合いをしようぜ。ほら、いつでもかかって来ていいぞ」
俺は両手をパーに広げ、押し相撲のように体勢をとる。
白熊も何かを察したのか手を広げ、俺の手に合わせる。
「NPCのお前でも言葉は通じるみたいだな……それじゃ……いくぞ!」
俺の掛け声と共に白熊と俺は力いっぱい押し合い、お互いのフィールドに亀裂を走らせ、砂埃が舞い上がる。
「押し合いはさすがにキツイな……」
「ぐわぁ!」
さすがの俺でも徐々に腕が後ろへ下がっていき、俺の体も後ろへ下がり始める。
「2
「ぐぎゃぁあ!!」
白熊は俺の顔に近付け、雄叫びを上げる。
その一瞬で聴覚を潰しに来ると判断できた俺は耳全体に魔力を覆わせ、鼓膜を破れるのを阻止する。
「お前が魔法で強化するなら俺だって使ってもいいと思わないか?」
少し魔法とは違うがやるしかないだろう。
「うんじゃ、いくぜ……《部分竜化》!」
俺は両腕を黒龍の腕へと竜化させ、ガシッと白熊の手を握る。
「体力消費があるから少し本気でいくぞ」
「ぐがががが……」
俺は押されていた状況を塗り替えるように黒龍の爪で白熊の手の甲に爪を指す。
「ずるいとは思わないでくれよ……俺は死んだらどうなるか、分からないからな……そんじゃ反撃といきますか」
俺は白熊の手を刺し、ちぎる勢いで手を握り、前へ前へ前進していく。
一気に押し返した俺は白熊を山の縁まで追い込み、最後の言葉を言い渡す。
「ごめんな、俺のためなんだ。悪いが俺は急がなくてはならない……またな」
蹴りを白熊の腹に食らわせ、山の頂上から蹴り落とす。
白熊は暴れることなく、素直な態度で落下して死を迎えた。
すると、脳内にアナウンスが入る。
『守護者を討伐されました。中央へ卵が出現されます』
「討伐しなきゃ出ないようになっているのか」
俺は中央へ歩み寄り、中央に出現した俺ぐらいの卵に手を触れる。
「大きいな……俺が拾ってきた卵と同じ大きさ、いや一回り小さいヤツか……とりあえず、20ptに5pt獲得だな」
俺は卵に紐をかけ、結び、背中に背負う。
そのまま俺は《竜化》を解き、山を下りていく。
リアルプレイヤー~生きるか、死ぬかの命綱~ 椎名 アヤメ @yuzuriha00000
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。リアルプレイヤー~生きるか、死ぬかの命綱~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます