§14【始まり】

『ではこれからイベント開催のあいさつを致します。今回の参加者代表【暗き天使ダークエンジェル】所属"グラディウス"さん』

「……」


 参加者ギルドが何列にも並び、イベント会場へ続く門の前で開会式が始まり、参加ギルドの代表が前へ出る。


 ツノを生やしたオーガが前へ出る。

 赤く長い髪を生やし、紅き煉獄の如き燃えあがる瞳、日本刀のような物を左右に1本ずつ鞘に収め、侍のような服装をしている。

 

「【暗き天使ダークエンジェル】が今回の優勝は頂く。圧倒的格差を見せつけ、お前らに打ち勝つ。選手代表グラディウス」


 グラディウスはそう言うと自分の元へ戻っていき、門の方へ向く。


「ニルさん、あれって確か……」

「そうだ。【暗き天使ダークエンジェル】はギルドランキングTOP10に入るところだ。確かに今回の優勝候補はあいつらかも知れないが、俺達も負けてはいられない」

『ではこの門を潜り抜けから1時間後に開始となります。参加ギルドの皆さんは移動を開始して下さい』


 そう言われると俺達は順番通りに門を潜り抜ける。


◇◆◇


「凄いなぁ、この広大な草原に山、それに氷河の里、洞窟……それ以外にもたくさんありそうだ」

「リーダー、皆さんは移動を開始して自分達の寝泊まりする場所を確保してます。私達も休憩所を確保した方が良さそうですよ」

「ニル、あそことかはどうだ?」

「あの洞窟か……1時間では行けそうな場所だな……それじゃ行くか」


 ニルを先頭に1列に並び、ニル、俺、アカリアス、ルリスの順番で。


 暗い洞窟の中で一筋の光で照らされている。

 そして1時間経過した頃、運営のアナウンスが入り、開始の合図が言い渡される。


「よし、今回は丸3日あるからな……いくら丸3日だろうが、人間フル活動で過ごせるわけがない。例え廃人の集まり【暗き天使ダークエンジェル】だろうがな……」

「でも皆が一変に休憩することはないと思うぞ?」

「乃亜の言う通りだ。優勝候補のギルドがそんな甘い作戦が通じるとは思えない……」

「リーダー、それで返り討ちになったら回復アイテムがすぐに無くなってしまいますよ」


 ニル、俺、ルリス、アカリアスが言う。

 ニルの隙を狙う作戦はいい考えだと俺達は思うが、TOP10に入るギルドには一切通用しない。


 逆にたった1人に全滅させられる可能性は少なからず有り得ることだ。


「卵はイベント終了までこの卵乗せ石台に乗せておかなければカウントはされないからな……ニルさん、こういう作戦はどうだ? 最初の一日目は個人で行動し、卵集めに専念する。2日目は休憩を多めに挟み、1人が卵集めに行く。そして最終日は各ギルドが他ギルドの卵を奪いに来るはずだ。だから皆で卵を取られないように防衛するんだ」

「それはありかもしれないな……よし、今日は各個人で行動し、卵集めに専念しよう! 出来るだけ戦闘は控え、アイテムなどの消費系は控えてくれ! では行動開始!」


 俺の提案の通りにニルは皆に命令し、各個人で卵集めに行かせるよう指示をする。


◇◆◇


 標高200メートルは超える高い山を登る俺は出来るだけ《竜化》を使わず、翼も使用せず、バレないように慎重に登る。


 標高が高くなるにつれて冬風のような冷たい風が俺のスタミナと体力を削っていく。


「この防具でもめちゃくちゃ寒いな……耐寒性のアイテムでも買っとけばよかった……ん? あれって卵だな」


 脳内をリフレッシュ使用と横に頭を振ると、偶然右下に卵が挟まっていた。


 落ちないようにゆっくりと確実に脚を運び、卵まで近付き、卵を手に取る。


「これは無機の卵だな……5ptだが無いよりはマシだな……もっと上に行かないとな」

「へっ、乃亜! 失礼するぜ! 《火球ファイヤー》!」


 真下から俺に向けて《火球ファイヤー》を放つが、俺は黒龍なので火の耐性は無効に近く痛みすらなかった。


「な、なんだと! 効いていない!?」

「……ん? なんだお前たちか。それじゃ……遠慮なく落とさせて貰うよ」

「や、やめてくれぇ!」


 俺は宙返りをして真下にいるプレイヤーの背後を取り、首と頭に1発ずつ強めの蹴りを入れ、この山から突き落とす。


 すぐさまに翼を使って少し前へ進み、崖にしがみつく。


「翼使えるだけでだいぶ戦闘が楽になった」


 重いフル装備を身に纏いながら上へ上へ登り、ようやく頂上へ到着した。


「ふぅ……マップにはここに聖獣の卵があるはずだ」


 脚を1本地につけた途端にガタガタと地が大きく揺れる。


 そして高い鳴き声と共に白熊のようなモンスターが地から這い上がってき、大きく俺に向かって吠える。


「卵を守るガーディアン、守護者ってわけか。よし、イベント開始から初めて戦闘と言える戦闘に遭遇したな」


 そう言いながら俺はダブルソードの黒剣の方を取り出し、片手で構え、戦闘への準備に入る。


 白熊も爪を舐め、こちらに死の眼光を向けながら威圧する。


「じゃあ……かかってこい! 白熊が!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る