§12【イベント開催の前日】

 王国街の中央の広場でたくさんの人が集まっており、真ん中に置かれているモニターを『まだか、まだか』とじっと見つめている。


「ニルさん、これから何が始まるんだ?」

「イベント内容の発表だよ! 俺の耳噂では"神獣卵争奪戦"らしいぜ」

「ニル、乃亜のレベルを見てみろよ」

「ん? レベル? どれどれ……80レベルぅ!? は、早くね!?」

「リーダーがいない間に私たち3人はイベントに向けて、必死にレベル上げをしときましたよ。少しでもPvPに勝つためにね」

「俺まだ40レベルだよ!? え!? 皆は……90レベル!? 俺やる気無くしちまったよ!?」

「そんなことを思うと思って、ニルの分の経験値XPもこの小瓶に詰めておいたぞ」

「心の友よぉ!」


 懐からルリスは大量に入っている経験値XP入りの小瓶を取りだし、ニルへ渡すと、ものすごい勢いで小瓶を砕き、経験値XPを吸収する。


「おー! あっという間に80レベルになったぜ! 助かったよ、ルリス、アカリアス、ルリス、ありがとな!」

『ただ今から、イベント内容の発表を始めます……では……』

「始まるぞ! 記念すべき俺たちのイベント参戦の時が!」


『今回のイベントは……丸3日掛けて開催されるです。ルールはイベント特別ステージ内に隠されている様々な卵を見つける、となっております。ポイント順位は上から神獣卵30pt、聖獣卵20pt、普通の肉食卵10pt、無機の卵5ptとなっております』


 その放送が流れると周りはざわざわとし始める。

 喋りたがりのニルは俺達に話しかけるな、思っていたが、真剣な顔をしてモニターを眺めている。


『報酬は第3位までが各チームで獲得した卵に加え、ペット限定装備にギルド領地の確保券が与えられます。参加者には全員に経験値XPと限定エモートが配布されます。参加条件はとなっております』

「第3位までか……なかなかきついな……」

「やっぱりギルドランキングに乗っているところが強いのか?」

「そうだな。ギルドランキングに乗っているギルドはメンバーも多いし、高レベルの者達が沢山いるからな。PvPは人数が多いところが有利だからな。俺達はなるべく戦わない方向で行くしかないな……」


 ニルはリーダーのような風格で顎に手をやり、必死に思案を巡らせ、作戦を組み立てようとしている。


『ではルール説明は以上です。奪い合いやプレイヤー同士の戦闘もありなので、思う存分イベントをお楽しみください』


 ブチンとモニターが切れ、真っ暗となり放送が終わる。


 ニルは俺達3人を呼び出し、作戦というのか、策略というのか微妙なところだが、このギルドのリーダーらしきことをしてくれる。


「あと数時間でイベントへ向けてが来るはずだ。その前にレベル上げやポーションなどの回復アイテムを買い揃えておけ。さすがにアカリアスの回復魔法だけでは、魔力がすぐに切れてしまうからな。それにあとなんか必要なものはあるか?」

「リーダー、を集めて本番当日使ってレベルを上げれば全回復出来ますよ! 100レベルまでですが……」

「確かにそれも1つの手段だな」

「俺はアクセサリーのスキル持ちを買え揃え、出来るだけ《身代わり》の3度のチャンスで大量のヘイトを向かせて逃げるつもりだ。だから俺に回復アイテムを定期的に投げて欲しいんだ」

「分かった……乃亜は何かあるか? 要望とか」

「イベントとか初めてだから何をすればいいかよく分からないから、何も無いな」


 俺達は明日のイベントに向けて最終チェックを行い、購入班とレベル上げ判断に分け、それぞれイベントに向けて行動を開始する。


 俺とニルは経験値小瓶集め&自分たちのレベル上げに森林のへ向かい、ルリスとアカリアスは回復アイテムやアクセサリーなどの装飾品類を集めに王国街のショップへ向かう。

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