§10【ギルド作成】

◇◆◇


「遅れた遅れた……ってあれみんなは?」

「数百人棺桶送りとは、労力の消費が激しいな」

「前身が痛い……」

「すいません……」


 ルリス、ニル、俺、アカリアスが言う。

ルリスはログインをして俺たちの姿が見えずにどこかへ行こうとしたところに、ゾンビのように椅子の所へ戻ってくる。


「しょぼくれた顔してどうしたんだ?」

「アカリアスさんがな……」

「そうなんです……森林地帯の3分の1消し飛ばしました……」

「何があったんだよ……」


 俺とアカリアスは限定装備をルリスに渡し、消し飛んだ理由を話す。


「そういう事か……限定装備が嬉しすぎてつい、やりすぎたと」

「はい……これは運営さんに出禁にされる可能がありますね……」

「それは大丈夫だと思うぞ。昔、俺は氷湖地帯の氷全部溶かしても出禁とか喰らわなかったし」

「いや、ルリスさんはルリスさんで何してるんだよ……」


 慰めになっているのか、なっていないのか、俺にはよく分からないが必死に慰めようとする気持ちは伝わってくる。


「もう、この話は終わりな。俺1つ気付いてしまったんだよ……近日中に行われるイベントはで登録するらしいんだ。でも俺達はパーティーメンバーだろ? それじゃ出れないんだよ」

「ルリス、俺も思っていたぜ。今までのイベントはパーティーメンバーでも参加可能だったが、今度からはギルドのみになるらしいんだ。だからよ……このメンバーで?」


 ルリス、ニルが言う。

 真剣な表情になるニルの瞳からは熱い熱意と喜びが感じ取れる。


 ニルは俺の手を取り、愛おしい瞳でじっと見つめてくる。


「俺は……賛成だ」

「私も乃亜君と同じです」

「そうか! 心の友よ!」

「苦しい……」


 俺の手を取ったまま、上下に大きく振り、俺の体が髪のようにふにゃふにゃとなる。


「ニル、乃亜が死にそうだぞ」

「あ、ごめん」

「脳内パイナップルジュースになるところだった……」

「じゃあ、皆でギルド登録しに行こうぜ!」


 いきなり手を離したニルは酔った俺の渾身のネタをスルーし、『ギルド登録を今からしに行こうぜ!』とせがんでいる。


 俺達は近くのギルドに向かい、A4サイズぐらいの紙を貰い、ニルがギルドリーダーとなり、メンバー一覧に乃亜、アカリアス、ルリスと記入する。


 その場で書いたニルはすぐさま受付嬢のNPCに渡し、無事にギルド登録を完了した。


「そろそろ寝る時間だな……じゃ、オレはログアウトするわ! 4日後また会おうぜ!」

「俺もログアウトする、おやすみ」

「じゃあ私も寝るね、乃亜君! また明日よろしくね!」


 そう言い残すと俺以外のメンバーはログアウトをして、リアルの世界に帰って行った。


「さてと……俺は早速レベル上げでもするか」


 俺はクエスト掲示板へ向かい、また新しいクエストを受け、再び森林地帯へと脚を運んだ。

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