§8【報酬】
ここに来てから数日が経ったが、この世界と現実世界の時間帯が全く同じということだ。
そして現在、日は完全に落ちて夜の時間帯となっている。
「まだログインはして無さそうだな……やっぱり夜に近付くにつれて続々と人も増えていっている。このゲームはとてつもなく、成人や学生辺りのプレイヤーが多いみたいだな」
俺はコロコロと転がしながらクエストの完了報告へ向かい、クエスト完了の紙を受け取る。
「暇つぶしに魔力流しの練習でもしておくか」
そこから数時間が経過頃、ようやくアカリアスのログインチャットが脳内の流れていく。
「アカリアスさん、ログインしたんだな。確かここら辺でログアウトしたはず……いたいた。アカリアスさん」
「こんばんは! 乃亜くん!」
「こんばんは」
「まだニルさんとかログインしてはなさそうですね……あぁ! そうでした! 今日あの報酬が来る日ですよ!」
「あの報酬? ケンタウロスの報酬ですか?」
「そう! あの限定装備がとても気になるんですよね!」
何かしらのエモートを作動させ、不思議なダンスを始めるアカリアス。
そんなことをしていると俺の後ろから声を掛けてきた人がいた。
「こんばんは! 乃亜!」
「ニルさん!」
「ニルさん」
「参ったなぁ……今日はそこまでゲームが出来なくてな。明日から3日間出張になっちまって、ゲームにログインに出来なくなっちまったよ……」
「あら、それは大変そうですね……せっかく皆で限定装備の能力調査をしに行きたかったんですが……」
両手を合わせて謝るニルだが、俺達はニルのせいでログインが出来なくなるわけじゃないので、特に攻めることも無く、ギルド内に脚を運んだ。
「なんだ? おっと、ルリスは今日来れないみたいだな」
「お仕事関係のことでしょうね。ルリスさんのご職業大変そうですもんね……」
「ルリスさんはどんな仕事をしてるんですか?」
「確か今は外交関係の仕事をしているみたいですよ」
と、俺以外は皆で成人をしており、働いているので仕事についての話にはついていけなかった。
「そろそろですよ、報酬支給時間は」
「そうだな……せっかくだし、リアルで何か飲みながら報酬を見ようぜ」
「そうですね! 私お酒持ってきますね!」
「じゃあ、俺もお酒持ってくるか! 乃亜も何か持ってこようぜ!」
そう言うとニルとアカリアスは一旦VRから離れて自分の飲みたいお酒を取りに行った。
「どうしよう……酒なんか無理だし、実際にここにいるんだが……なあ、女神。どうすればいい?」
『これに関してはどうしようも出来ないですよ。乃亜様はここにいるんですから……もういっそ、あそこから注文してきてジュースとか飲むしかなさそうですね』
「やっぱりそうだよな……いくら食べなくてもいい体になったもんだが、何かしら食べたいもんな……そうするか」
俺は席を立ち上がり、ギルド内で経営している状態異常回復の飲み物を取りに行く。
「戻りましたよ! 皆さん!」
「俺もただいま! 乃亜もいるか?」
「いるよ」
「じゃあ! カウントダウン! 5、4、3、2、1! 0!」
すると俺達の前にゆっくりと大量の金貨が入った布袋が舞い降り、そして限定装備がゆっくりと机に落ちる。
「おぉ! なんだ、これ!?」
「アンデッドケンタウロスを倒したので、今回はアンデッド特効の装備みたいですね!」
「死人の装備にしか見えないが、やけに光ってるな……」
「当たりまえだろ! これは闇属性、光属性、死霊属性が付与されているんだぜ! こんな貴重な3属性付きの装備なんか、滅多に手に入んないぜ!」
俺達は一つ一つ『これはどんな効果なのかな?』などと使う前に妄想を膨らませ、楽しくワイワイと過ごした。
「じゃあ、俺はこのアンデッドの大剣貰うぜ!」
「では、私はこの杖を頂きますね!」
「じゃあ、俺は……このダブルソード……」
「乃亜! 俺達に遠慮せず、欲しいものは取っていいんだぞ? 乃亜が1番プレイ時間が少ないんだし、装備少ないだろ。ほら、このフル装備、乃亜にくれてやるよ!」
「でも、さすがに貰いすぎじゃ……」
「大丈夫だ!」
「はい! ルリスさんだってこうしてくれますよ! ルリスさんはこのダガーナイフとサバイバルナイフがあれば、十分ですから!」
ニルとアカリアスは以下にも黒の騎士団に入っているフルプレート装備を俺によこしてくれる。
せっかくだからこれを着てみろと言われたのでその場で黒を基調としたとても厨二心をくすぐるような、装備をつける。
「かっけぇな!」
「乃亜君! とてもお似合いですよ!」
「確かにデザインは黒龍みたいな感じで、俺にはピッタリだが……」
「そう言えば乃亜君って種族なんですか?」
「俺は……
「竜人!? え!? まじかよ、乃亜! それはキャラメイキングの時にとても低い確率で出現する、言わば……
「えー!!」
俺は思わず悲鳴を上げると、周りのプレイヤーが話を聞いていたのか、周りにも悲鳴を上げ始めた。
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