§7【不思議の卵採取②】
真っ白でとても膨らみがある親鳥。
何者だと言わんばかりのつぶらな瞳で俺をじっと見つめてくる。
「きゅっ?」
「なんかやる気喪失するな……」
「きゅ! きゅ! きゅ! きゅぅぅう!」
声を上げながら親鳥は羽をバタバタと上下に動かし、何かを呼んでいるのか、または呪文のような物を唱えているのか、今はまだ分からない。
すると親鳥と同じ声の鳴き声が聞こえ始める。
「仲間を呼んだって言うわけか……(俺のレベルは現在10。相手のレベルは不明だが、見る限り20レベル前後ぐらいだと思われる)」
「きゅぅぅうう!」
仲間が到着する前に親鳥はバタバタとさせながら突進をしてくる。
「このぐらいのスピードな……」
「きゅ!」
横に俺は避け、突進を避けたかと思っていたら親鳥は脚で急ブレーキをかけ、急にスピードを上げ、俺と接触し、円形に囲まれている太い木に俺はぶつかる。
「痛ってぇ……まずい!」
『どん!』と言う音が鳴り、砂埃が舞う。
「やけに急ブレーキ後の突進スピードが速いな……くそ! またか!」
「「きゅ! きゅぅ!」」
「到着し……」
近付いてくる声に反応し、俺は上を見上げると無造作に火炎玉が降り注ぐ。
だが、不思議なことに森林には炎が燃え広がらずにすっと地面にぶつかり、消え去る。
「全く、不思議な炎だな……この体だから炎に耐性はあるが、普通ならとっくに死んでるぞ」
「きゅぅう!」
「スキル《カウンター》!」
棘が生えているコケ石で囲まれており、逃げれないと判断した俺は本日二回目の発動である《カウンター》を使用する。
空中からの親鳥の突進と俺の剣がぶつかり合い、火花が起きる。
「力勝負じゃ……負けそうだな……」
「「きゅぅう!!」」
「またか!」
再び火炎玉が俺目掛けて降り注ぎ、更に親鳥は勢いをつけるため1度高く飛び上がり、火炎玉と同時に突進を仕掛ける。
「やばい、逃げ道が!」
そしてその声が自分の声を聞くことになり、ゆっくりと意識が遠のいて行き、目を瞑った。
俺は目が覚めると首元にふわふわとした毛皮が触れていた。
「ここは……」
大きめな舌のような感触のものが俺の体全体をひと舐めする。
横に視線を向けると巨大なスネークがグルグルと山のようになり、その頂点に俺を乗せて『シュルシュル……』と俺をじっと眺めている。
「まさか!」
俺は『あの親鳥は!』と思い、飛び跳ねるとボコボコの地形になっている所で小鳥と鬼ごっこのようなものをしていた。
「俺……助かったのか……? ちょっと、辞めてくれよ舐めるのは……」
「きゅう! きゅう!」
「さっきまで殺しあった中なのに、こんなことあるのか?」
巨大なスネークや親鳥、そして小鳥や他の狼から集まってき、ぺろぺろと舐め回される。
「ぐぅぅ……」
「きゅ! きゅ! きゅ!」
「っておい! まだ殺し合うのか!? ……ってこれ……くれるのか?」
「きゅぅう!!」
「……まじか……なんだったんだ、あの戦いは……」
俺は親鳥に嘴でつばまれ、背中に乗せられ、卵がある自分の巣の所へ案内する。
コンコンと嘴で卵を突くと『きゅ! きゅ!』と鳴き始める。
「どれでもいいのか?」
「きゅ!」
「じゃあ……この禍々しい白い卵貰っていいのか?」
「きゅ!」
「デカイな……これどうやって持ち帰ろうか……なんだ? 俺、浮いてるな……」
後ろを振り返ると巨大なスネークが尻尾でぐるっと俺を掴み、口で卵を挟み、親鳥の背中に乗せられる。
「……何か、嫌な予感がするな……」
「きゅ!!」
すると親鳥が声を上げると緑色の魔法陣が直線上に連なり、出現する。
「《
「きゅう!」
「お前聞こえないフリしてんだろ! てめぇ!」
普段叫ばない俺ですら悲鳴を上げるほどみるみるうちに、親鳥の走るスピードが上がっていく。
そして数分のうちに王国が見えてくる。
行く時間より遥か先を超える速さであっという間に王国に到着した。
「はぁ……はぁ……はぁ……着いた……いてっ」
「きゅ!」
最後は体を斜めにし、雑な降ろし方で卵と俺を降ろす。
そして魔法が切れていないうちに自分の住処へ戻っていく。
「てか……もう夜なんだな……そろそろニルさん達がログインする頃か……あの椅子で待ってれば、そのうち来るだろ」
俺は卵をコロコロと転がしながら王国へ入り、初めてあったあの椅子を目指して歩く。
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