§6【不思議の卵採取①】

 結局寝床が見つからず、あの椅子に寝っ転がり寝てしまった。

 目が覚めると俺は目を擦りながら体を起こす。


「今何時だ……って時計はないか……」


 椅子から離れ背伸びをして朝のストレッチを始める。


「みんなの仕事が終わるまで1人でレベル上げとかしてるか……えっと……採取クエストばっかだな……ん? 不思議な卵採取クエスト? 報酬金貨10枚に採取してきた卵……つまりペットを獲得出来るってことか……やってみる価値はありそうだな。これにするか」


 俺は掲示板に貼ってある不思議の卵採取クエストの紙を剥がし、目的地の森林地帯の奥へ向かう。


◇◆◇


 鳥の鳴く声が聞こえる森林地帯の奥。

 心地よい風が吹く中、俺は鉄の剣を片手に持ち、慎重に奥へ奥へ進んでいく。


「不思議の卵って何の卵なんだろうな……」

「グルぅぅぅ……」


 俺は獣の唸る声を聞き、後ろをむくとヨダレを垂らしている狼がいた。


 何かに飢えているのかぎょろりとした睨みがとても怖い。


「せっかく一人だし、魔法行使の練習してみるか……《魔力剣マナソード》」


 俺は体に巡っている魔力、マナを属性変換をしないまま、剣先まで流し込み、魔力剣を完成させる。


「よし、魔力の流れのコツは覚えたな」

「ぐぅぅわぁぁ!!」


 飛びかかってくる狼を顔に剣を差し込み、脳天を貫く。

 次の狼を下から振り上げ、体を真っ二つにする。


「あと3体いるなら、ここから属性変換をしてみるか……」


 ふぅぅと息を吐き、息を整え、心の目を瞑る。

 そして魔力を帯びている剣の魔力を炎属性に変換させ、ニルが使っていた《火炎剣ファイヤーソード》を完成させる。


 赤く燃え上がる剣は一切の煙を出さず、ただ燃えているだけのように見える。


「振った後の残像に炎が残れば中々の出来前なんだがな……」

「うがぁ!」

「おっと、危ない」


 俺はずっと剣を見ていたが勝手に体が動き、カウンターを行った。

 脳内では何が起こったのか、処理が追いついていない。


「勝手に体が……まさか……この指輪のおかげか?」


 右の人差し指に付けてあるダイヤモンドのような形をした青色の宝石を見つめる。


 これは昨日金貨40枚近くかけて買って使い道が分からなかった指輪だ。


金貨1枚で1万円、銀貨1枚5000円、銅貨1000円がこの世界の通貨となっている。


 500円や100円などの細かな通貨がないので、全体的に割と高めの値段設定となっている。


「ここに来る時に聞いた、と言うことか……つまり、これ付けてたら勝手にカウンターしてくれるってことだよな」


 狼は少し唸りながら後ろに後退する。

 強さの格の違いを感じた狼は俺を見ながら少しずつ後退していき、森林の中へ帰って行った。


「……ん? 光が薄くなってきている……じゃあ、これはスキルと言うものか。確かスキルは回数制限があるものだったから、1日に3回ぐらいしか使えなさそうだな……こうしている場合じゃないな。前へ進むか」


 俺は剣に魔力を流すのをやめて鞘にしまい、走って休憩し、走って休憩しを繰り返していき、森林地帯の真ん中ら辺まで到着した。


「暗いし、このいばらはチクチクするし、ここにあるのかも疑問を覚えるようになってきたな」

「きゅーん! きゅーん!」

「鳥の鳴き声……ってあれは……と、り……? なのか?」


 狭い空間を匍匐前進ほふくぜんしんで進んでいると、上から鳥の鳴き声が聞こえ、覗いてみるとデブデブしく太った鳥が空を飛んでいた。


「鳥の巣を帰って行ったな……あ……卵だ」


 飛んでいく鳥は自分の巣へ帰っていく所を目で追いかけていくと巣の中央に俺と同じくらいの卵が置いてあった。


「ここ痛いし、出てあいつを殺るしか無さそうだ」


 俺は棘を魔法で燃やし、上へ出る。

 まだ少し距離があるので身を隠しながら前へ前へ進む。


 そして鳥の巣を守っている親鳥の前に立ち、剣を両手で構え、《火炎剣ファイヤーソード》を作り上げる。


「戦闘準備は完了だ。こい、親鳥! お前の卵は俺が頂くぜ!」


 俺は死への恐怖感の縛りを一瞬で解き放ち、正々堂々親鳥の前で声を上げ、戦闘態勢に移行する。

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