§5【ログアウト】

 目が覚めると俺はスタート地点の、あの椅子に寝ていた。


「起きた?」

「あれ……ここは……」

「乃亜君が最初にスタートした場所だよ」

「乃亜起きたか! めっちゃ心配したんだぞ? チートみたいになりやがったと思ったら、いきなりぶっ倒れちまうし」

「乃亜、これやるよ。アンデッドケンタウロスの大剣だ」


 アカリアス、俺、ニル、ルリスが言う。

 ルリスは奥からケンタウロスの大剣を引きずり、俺の腹に持ち手の部分を押し付ける。


「この大剣代は全部、乃亜にくれてやるよ。トドメを刺したのは乃亜だしな」

「そうだよ! 乃亜君が全部貰っていいよ! お金ないと装備とか買えないしね!」

「特別乱入モンスターの武器なんだし、高く売れるぞぉ?」

「皆……ありがとう……」


 ルリス、アカリアス、ニル、俺が言う。

 すると俺の後ろから森林地帯にいた他のパーティーがぞろぞろと現れた。


「なぁ! 乃亜って言うんだったな! あれ教えてくれよ! あのものすっっごい力のやつ!」

「乃亜のおかげで助かったぜ! あのヘイトを買う動き、かっこよかったぞ!」

「今度俺に奢ってくれよ!」

「お前、ただ踏みつぶられそうになって逃げ回っていたくせに、よくそんなこと言えるな!」

「「はははは!」」


 『かっこよかった』や『凄かったぞ』などの言葉があちこちから聞こえてくる。


 笑い声や聞きそびれた歓声コールが舞っている中、俺はすっと体を起こそうとすると、アカリアスが体を支えてくれる。


「アカリアスさん、そんなことして貰わなくても俺は立ち上がれるぞ?」

「気にしないで! 私がやりたくてやってるだけだし!」


 操作されているキャラなはずだが、頬を少し染めている。


「あ! やべ! 俺明日仕事だ!」

「俺は休みだな。午前中だけ」

「私もお仕事です」


 突然ニルが叫び出したと思えば、俺仕事だと声を上げる。


 そうだった。ニルさんやアカリアスさんやルリスさんはここに転生した訳じゃなく、現実世界でプレイヤーをしている人達だ。


 まあ、俺以外成人しているのは驚きだったが。


「俺達はそろそろログアウトするが、乃亜はどうすんだ?」

「俺は……もう少しゲームしてるよ」

「そうか! じゃあ、おやすみだ!」

「おやすみなさい、皆さん!」

「おやすみぃ!」


 そう言うと3人は順番にパッと消えていき、周りには知らない人達になってしまった。


「てか、俺はどこで寝ればいいんだ?」


 俺は辺りを見渡しながら街をブラブラとしながら寝床を探す。


 時には武器屋に入り装備を見て、討伐したアンデッドケンタウロスのドロップアイテムを売ったりなどをして、優雅に過ごしている。

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