見てはいけない日記〜私が見たから彼女は死んだ〜

徳田雄一

人の日記は見ちゃいけない

 ある暑い夏の日。私は双子を産み、地球に天使を落とした。だが、何故か妹は原因不明で翌日に亡くなった。


 私は悲しさに打ちのめされていたが、姉だけは姉だけは必ず生きて欲しいと願い、毎日のように天に祈った。

 すると、嬉しいことに姉だけは生き延び、今は13歳の中学生まで育っている。


 そんなある日の事、姉のユウカの部屋を掃除しようと部屋に入ると、机にぽつんと置かれた1冊のノートを見つける。そこには日記と雑に書かれた物で、覗いてはいけないと心に誓いその日は見なかった。


 翌日のこと、ユウカに用事があり部屋に入ると、ユウカは急いで何かを隠した。おそらく日記なのだろう。


 私は気になって気になって仕方なかった。


 いつか見れないかなと期待しつつ、日々過ごしているとチャンスが訪れた。3泊4日で祖父母とユウカは旅行へ行くということになり、私はユウカを見送った後に、部屋に行き日記を覗いた。


 そこに書かれていたのは、様々な私の愚痴。

 夫への愚痴。


 日々辛いと嘆く文字がたんたんと並べられていた。


 そしてひとつの気になる文を見つける。


【こんな母の元へ産まれてきたのが間違い。私も妹のように死ねばよかった】


 私はこんなにも愛してきた我が子にこんなことを書かれるなど、ショックで仕方なかった。涙が止まらない。


 そして最後の1文。そう昨日の日記にはこう書かれていた。


【祖父母と行くのは東尋坊。自殺の名所。

 祖父母は私と死んでくれるらしい。だってお母さんこの日記見るもんね?】


 私が日記を覗くことも計算のうち、祖父母までも姉に協力していたなんて知らず、私はただ悲しさに打ちのめされていた。本当に東尋坊に行くのなら、私はもう助けようがなかった。


 すると、3日後のことだった。私は無事に帰ってきてくれ。そう思って動かなかった。夫にも何も言わなかった。


 だけどそんな願い届かず、1本の電話が届く。


「あ、もしもし警察ですけど」

「え?」

「貴方のお子様が東尋坊で発見されまして、遺体のご確認を」


 警察からたんたんと告げられる悲しい、そして虚しい知らせ。私は聞きたくなかった。


 日記を覗くのが悪かった。

 覗こうとしたのが悪かった。


 結局全て私が悪かった。私は再びユウカの心の叫びが書かれている日記を読み返した。


【イジメが嫌だ】

【母さんは私の痣に気づいてないみたい】

【私は生きたくない】

【私はこんな人生送るくらいなら妹のように死にたかった】

【お母さんのせいだ】


 人の日記は見てはいけない。見ようとしちゃいけない。


 私は大切な我が子を2人も亡くした。そこから絶望感でいっぱいになり私も2人を追って死んだ。


【ごめんね。2人とも。私が不甲斐ないばかりに】


 そうユウカの日記に書き残して。

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