第36話


戦いの 最中に思う 過ぎ去りし

君への思い いとしさよ


~~~~~~~~~~~~~~~~~

大殿の手の者の大軍は、旦那様の父と

弟の猛攻にあい、命を散らしていった。

命からがらに助かった者たちは、

次への戦への参加を余儀なくされた。

"早く関ヶ原に来い!戦が始まるぞ!"

というような知らせが届いた事で

城攻めを断念し兵を引き上げたのだった。

旦那の父と弟は大殿の大軍に

一週間以上の足止めと数減らしに成功したのだった。

その甲斐あって、大殿の手の者たちは

関ヶ原の戦いに間に合わなかったのである。


西軍の一翼を握っていた人物、

大軍を率いりながら常に悩んでいた。

東軍の大将である大殿に少なからずの

恩義があったため、戦いを躊躇(ちゅうちょ)

していた。そして、西軍から東軍に寝返り

それを皮切りに、わずか半日足らずで

勝敗が決まってしまった。


関ヶ原の戦いで西軍が負けてしまった。

旦那様の父と弟は大殿にに降伏したのだった。

そして、城を空け渡す事になったのだ。

***

「大殿様、義父上様が私に与えてくださった

信濃を返上します。それと引き換えに

旦那様の父と弟をお許しになってください。」


関ヶ原の合戦の後、東軍に属した

旦那様は、大殿から沼田城の本領を

安堵され、父の領土だった

信濃国小県郡も拝領した。

その一方で大殿は、西軍に属した

旦那様の父と弟に死罪を申しつけた。

第2次上田城の戦いで大敗した者が

騙されたと、激怒していたらしい。


「私は罪人の子にございます。我が父に

死罪にする前に、私に切腹を命じてください。」

と姫様の旦那様は大殿に嘆願(たんがん)した。

姫様と姫様の父までもが助命嘆願活動を

したこともあり、旦那様の父と弟の

死罪を免れ、高野山へと流された。

高野山へと流されたが、高野山は

その当時女人禁制だったため、

旦那様の父と弟たちは許可を得て

高野山の麓(ふもと)ある九度山へと移た。

九度山で大殿が推薦(すいせん)した

側室を持つことになったのだ。


戒(いまし)めとして関ヶ原の合戦の後、

大殿は、2度に渡り大殿の軍を退けた

上田城を徹底的に破壊した。

姫様の旦那様は、大殿にはばかって

上田城を再建しなかった。

名前も父の名を一字文字っていたが

その一字も取り除き、大殿に改名した事を

告げたのだった。

       

姫様が留守居を守り通したお城では、

家臣たちの妻子たちを人質がわりに

城に泊めていたからか、結束は固く

旦那様の家臣たちからの裏切り者は

出なかった。

また、大殿も戦いの前からじわじわと

周りを固める為、政略結婚を推し進め

結束を固めていたのだった。


      ***


「えっ!これは飾りではなく、

食べれるのか?」

「はい。姫様このどこにでもある

鼓草(つづみぐさ・たんぽぽの事)は

食べれますよ。少し苦味はありますが

生のお魚、お造りなどに菊の花が

付いてるのと一緒で、身体にも

いいんですよ。」

「ほぉ~、見た目も可愛らしいの。」

「ありがとうございます。こちらも

妊婦さんには身体にいいし、

見た目も可愛いんで、私のお気に入りです。」

そこには、なでしこの花びらと

鼓草の花びらをあしらった、

煮物と茶碗蒸し、草団子などがあった。

自分が好きな花だけあって、りんは

姫様に花言葉や色々覚えた事を

披露していた。


花言葉「愛の神託」「真心の愛」「神託」

鼓草の綿毛…「別離」

踏まえてもふまれても鼓草(つづみぐさ)の

美しく咲くわらい顔。

生命力の強さ、どんな環境でも負けずに

生きていく、鼓草。

遠くの花より近くの鼓草、

身近にいるものが大切。


姫様の旦那様の重臣たちの妻は

そんなやりとりを複雑な目で見ていた。

だが、料理番だと勘違いし見下して

しまった一部の妻たちは、姫様から

お仕置きを受けてからは、りんに

話しかけようとはしなかった。

りんに優しく褒められながら

初めて料理や甘味を作った

子どもらは、りんを料理の先生として

また、叱るときはしかり

褒めるべき事は誉めてくれる

優しい先生が大好きでだった。

その中には、もうすぐ元服を

迎える子も含まれていた。


庭の片隅で数人の子どもたちが

何やら密ごとをねっていた。

ひそひそしているが、悪意は

感じなかったので護衛や侍女たちも

気にはなっていたが、静かに

見守っていた。

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