第35話


年末年始、私たちは一つになった。

月明かりのない夜で、私たちの

甘い声と火鉢から、時折パチパチと

火が弾ける音が響いていた。


「へぇくしょん。」

「くしゅん。」

2人ほぼ同時に、クシャミをしていた。

心なしか、喉も痛い。

布団はくしゃくしゃ、着物は申し訳程度に

引っ掛けている程度。

散らばった着物や、布団をかき寄せた。

「……さ、寒い。」

「あぁ、寒いなぁぁあくしょん。」

ズズズと鼻をすする小助兄さん。

「喉が痛いし、頭も…風邪かな?」

「新年なのにな、2人そろって

風邪とはな…ある意味仲良い

証拠なのかな?初めての

共同作業、いや…作業じゃないか……。」

黙々と着物を着ろうと思っていたりん

「なんだか、身体が重いわ。」

「お、おい?!」

りんは、熱が出ていた。

寒い夜に、ほぼハダカだった私…たち。

2人揃って風邪をひいてしまいました。


倒れたりんに、あたふたしながらも

なんとか着物を着付けた小助。

「こんなにも着込んでいたのに…

昨日は……すまない。」

この時、小助も熱が出ていたのだが

りんに必死だったので、自分の事は

そっちのけだった。

頭を冷やす為の手ぬぐいや冷たい

井戸水を汲んだオケ、その他もろもろを

大わらわで準備していた。


「うわぁぁッ!」

パシャッ。

「うっ、なんじゃ?そんなナリで

新年だと言うのに、だ、大丈夫か?」

「はい、申し訳ございません。」

フラフラしながらりんの事で

いっぱいいっぱいだった小助は、

廊下の曲がり角で危うく、先頭を

歩いていた姫様の護衛とぶつかりそうに

なってしまった。

小助は相手にオケの水が掛からないよう

気をつけた結果、ものの見事に

オケの半分近くの水を自分に

掛かってしまった。

新年の今にも雪が降りそうな真冬の

井戸水は、氷のように冷たかった……はず。

「小助?大丈夫、じゃないよな?」

「はい、申し訳ございません。」

「……。」

心配する姫様たちは、首を傾げながら

他の者に目で合図をしていた。

「小助よ、新年だというのに妾への

挨拶の一つもなしか?」

「はい、も、申し訳ございません。姫様、

相変わらずお美しいです。新年

早々、ご尊顔を拝見出来たこと

この小助、大変?すごくうれしく

……申し訳ございません?

また、ありがたく思います?

えーと、新年明けましておめでとう

ございます。本年もりんともども

よろしくお願いします。では、これにて

失礼させていただきます。」

グデグデなあいさつと、小助の様子から

只事ではないと思った姫様は

また、小助を呼び止めた。

「まて、小助……どこへ行くんじゃ?」

小助は姫様に対して、すごく失礼な

新年の挨拶をした事と、着物一枚で

着崩れた格好、その着物は先程、

オケの水で濡れてしまった事、

廊下ももちろんぬれていた。

小助の長い髪は結っておらず

明らかに疲労困憊している事に

本人は気づいていなかった。

手には並々と冷たい井戸水が入った

おけ……。

ただ、この水桶…庭の花などに水やりを

する時に使う水桶で、本来なら

熱が出た時に使う用途のオケではなかった。

姫様の声は聞こえてるはずなのに

ふらふらしている小助。

そんな小助に異変を感じた姫様は

護衛の一部に小助の様子を見るよう言付けた。

「じゃあ頼むぞ。妾は、新年の

あいさつを我が殿にしてくる。」

頭を下げる護衛。

姫様らは、後ろ髪引かれる思いで

その場を後にした。

小助もふらふらしながらも、やっとの

思いで自室にたどり着いた。


「りん、大丈夫か?寒くないか?

あっ、火鉢の炭がないなあ…台所…

飯も、持ってきてやるからな。

りん、いい子で待ってろよ、な。」

正月なので、台所ではかまどに

火はついていなかった。

びしょ濡れで異常な姿の出立ちの

小助が台所に現れた。

昨日遅くに料理番が作ったお節料理

何も言わずとも2人分の食事をもらい

小鍋と火鉢の炭も忘れずに持った小助。

周りからの声かけに、上の空で

「はい、申し訳ございません。」

としか答えない小助。

台所からも、心配した者たちが

付いていき見守っていた。


頭に冷たい濡れた布?がのせられたりんが

夕暮れ時、目を覚ました。

「うわぁ。こ、こ、こ………。」

小助の顔色は悪く、濡れた着物は

流石に気持ち悪かったのか脱いでいた。

濡れた着物は何故か庭で使う水桶に

半分…入っており、もう半分は

りんが寝ていた枕元を濡らしていた。

頭にかかっていたのも、小助の着物だった。

寒さからか、丸まりながら丸裸で

寝ている小助。

申し訳程度に、小助は布団にかける

敷き布を被っていた。

温そうな上掛けは全て、りんに

かけられていたのだった。


「……こ、小助兄さん。だ、誰か

誰かおりませんか?小助兄さんが……。」

2人の部屋に入るわけにはいかなかった

台所の料理番や侍女たち、そして

護衛までもが、這(は)いながら

出てきたりんに、それぞれ武器を構え

部屋になだれ込んできたのだった。

「……。」

ワラワラと増える人数と、新年の

行事で忙しいはずの姫様と姫様の

旦那様まで顔を出したのだった。

誰か知らせたのか、たまたま

通りかかったのかはわからない。

あまりの人数の大阪と、濡れている

布団やタタミ……。

クチャクチャの布団、そして

ほぼ全裸で丸まっている、顔色が

悪い小助。

姫様の旦那様は城内の医者を呼び

小助、そしてりんまで診てくれたのだった。

「風邪でございますね。」

「のどの奥が、赤いですので熱も

高いのでしょうね~。」

おじいちゃん先生と言っても過言ではない

年齢の医者の薬は、涙が出るほど

苦かった。

熱で倒れている小助の口に、小さな

匙(さじ)で何度も、薬湯を流し込んでいた

強者(つわもの)の先生。

湯呑みに半分を右向きにした小助の口に

流し、次は反対向きにした小助の口に

流し入れた先生。

苦さでしかめっつらになりながらも

寝続ける小助に、かなり心配したりんだった。


姫様と姫様の旦那様の侍医である

この先生の腕は確かだった。

翌朝には、2人とも熱が下がって

いたのだった。

先生が来るわずかな時間に

護衛たちは小助に着物を着せつけ

侍女たちは別部屋に新たな布団を2組

敷いてくれたのだった。

りんと小助は寝るように、姫様から

申しつけられたのだった。

「………。」

「ありがとうございます。あっ、姫様

そしてお殿様、そして皆様、明けまして

おめでとうございます。新年早々

ご迷惑をおかけし、申し訳ございません。

あと、お腹がすいたので、布団に

寝るのはもう少し後にしますね?

えーと、今年もよろしくお願いします。」

「ぷふっ。」

「おりんらしい、変なあいさつじゃな。」

こっそり笑う者、クスッと笑う者の

声が部屋に広がった。

「台所には火がないからのぉ、ここには

無駄に多く炭もあるし…久々に

妾が雑炊でも作ってやろう。」

姫様の指示で台所から、大きめの鍋と

赤飯やご飯などを使いネギと、たまご

を使ったシンプルな雑炊を皆で

食べたのだった。


翌朝、見慣れない部屋に驚いた小助

だったが、まだ眠っているりんに

そっと口づけを落とした。

「……ッ。」

ぱちっと目を開けたりん。

「お、おっ…おはよう。熱下がった

ようだな。りん…良かった。」

昨日の一連の事を知らない小助は

りんに、ふんわりした笑顔を向けたのだった。

「良くないわよ。小助兄さんが

倒れて大変だったんだからね。」

小声で昨日の出来事を話すりんに、

青ざめたり恥ずかしかったりの小助だった。

「皆に謝らなきゃ。小助兄さんも

ちゃんと皆に、お礼とおわびしてね。」

「……あぁ、すまなかった。ありがとう、りん。」

怒った顔も可愛いっと思った小助は

自然なしぐさでりんを引き寄せた。

「……っ…んんっ。」

りんの口に自分の口を重ね、舌先で

りんの小さな口をこじ開けた。

りんの背中をさすり、触り心地いい

お尻など撫でていた。

「やばい。りんの中に挿れたい。ダメか?」

「……小助…兄さん体調は?」

「俺の持ちモノに我慢させる方が

体調に悪そうだ。りんの体調はどうなんだ?」

「……わ、私は…なんだか、また

ムズムズする…。挿れたら私たち、また

幸せになれるのよね?」

「うっ、あ、あぁ、幸せになれる。

いや、気持ちよく幸せにしてやる。」

小助は、自分の昂なりに限界がきていた。

なんとか必死に、またりんとひとつに

なりたかった小助は、言葉を

口付けで誤魔化しながら、りんの

胸元を乱し赤い頂(いただき)を

何度も口で啄(ついば)んだ。

「んっ……ふぁ、ァ…。」

恥ずかしそうにしながらも、太ももを

もじもじさせるりんに、またくちの中に

舌を絡めると、たどたどしくりんも

小助の舌にからめてきたのだった。

衣ずれの音と、生々しい水音。

りんの着物を半分乱れさせた小助。

「全部脱ぐと、また風邪引くからな。

全裸を楽しむのは熱くなってからだな。」

「……バカ。」

りんの声にふっと笑いながら、軽く

口付けた後、赤く色づく頂を指で

つまんだり、手のひらでもみほぐした。

「やぁっ……んん。」

指先はまた、頂きと乳輪をなぞり

指の腹で優しくつまんだり、りんの

2つの胸を堪能していた。

「そ、そこばかり…いや…。」

「んっ?他も触って欲しいのか?」

小助はニッコリ笑った。

「……わかってるくせに、いじわる。」

小助はりんのとあるとこを常に

刺激していたのだった。

「……。」

布団を軽くめくり体制を整えた時だった。


「小助、りん大丈夫か?」

「「!!!」」

姫様の声だった。

「……!!」

「ひ、姫様?」

「そうじゃ。妾とあといつもの顔ぶれじゃ。

体調は、どうじゃ?」

「た、た、体制はだ、大丈夫です。」

「体制?」

「い、いや、ち、ちがいます。体調は

大丈夫でっす。りんもいたって、

元気に、寝てますっ。」

「はっ?元気に寝てる?」

「あっ!な、ナニもございます…せん。

大丈夫ですので、ご、ご心配をおかけし

すみません。少々、見苦しい格好

なので、後ほどご挨拶しにイキますので

、りんが目覚めたら服を正して

イキます。すみません。」

「そうか、あい、わかった。では、

小助、病み上がりに無理させるなよ。」

「!!!」

「……はい。」


廊下から複数の足音が消え、部屋には

はだけた着物のりんと小助は

しばらく固まっていた。


「りん?大丈夫か?」

顔を赤く火照らせたりんは、

恥ずかしさから涙目だった。

「大丈夫じゃないけど、大丈夫。」

「続きするか?俺はもう……。」

「……んっ。」

元服の年の小助は、性欲を抑えれず

りんの蕾を指でほぐした。

「小助…兄さん……それ、そんなの…無理。」

明るいところで、小助の持ちモノ

大きくなった持ちモノを見てしまったりん。

「大丈夫だ。昨日も……。俺に

任せてくれ。声は小さめにな。」

りんの足を左右に開き、明るい部屋で

りんを眺めたあと、小助のモノを

くちゅくちゅと厭(いや)しく、

水音をたてていた。

「っん…。」

「あっっっ!」

あまりの気持ちよさにイキかけた

小助は、りんのに急ぎしたのだった。

「ごめん……。我慢できなかった。

ちゃんとしたいけど、これ

以上したら、りんをだき潰してしまう……。」

「……。」

「りん、また、夜にいいか?」

「……バカ。」

中途半端なまま朝の現象?を収めた

小助と、もどかしいままのりんは

服装を新年の装いにし、昨日

お世話になった皆へ挨拶しに行ったのだった。

途中、2人は別行動をした時だった。

りんは、姫様から温石(おんじゃく)を

いただいたのだった。

「腰に当てると気持ちいいぞ!」

とニヤリと笑われた。

*温石は、今でいうカイロの様なモノです。


一方小助は、何も知らない護衛たちに

「妹のお守りは大変だろ?まっ、

可愛いのは確かだな。」

「新年だし、いいとこ連れて行ってやるよ。」

「少々お高めだが、新年だし姫はじめに

最適な女がいるんだぜ。」

今で言う娼館へのお誘いだった。

これに対して、ある意味姫はじめを

済ませた小助は、キッパリと断った。

女に興味を示さない小助に、

ホントは男が好きなのでは?と

ウワサがまことしやかに流れたのだった。

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