第34話


しづかなる 庭の木の間に かげおちて

夜ふかき花に 月わたる見ゆ


静かな庭の木の間を光が漏れ落ちて、

夜もすっかり更けた花の上を

月が渡ってゆくのが見える。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


満天の星空に寂しげな細い月が

登っていた。

お城の庭に咲いた花々を愛でるものは

少なかった。


戦い前の姫様と旦那様との間には

二女三男の子宝がいた。

姫様意外にも既に正室から側室になった

者やもうひと方との間にも子宝が数人いた。

姫様27歳、小助とりんは実際には24歳だったが

お館様が設定した年齢小助28歳、りんは

姫様と同じ27歳で貫(つらぬ)きとおした。

小助の元服は色々な出来事がありすぎて

小助とりんだけで、こっそり

とあることをしただけだった。

城に残るのは留守を預かる姫様を

筆頭に、侍女たち、護衛の者たち

そして戦いの為戦場に赴(おもむ)た

旦那様や重臣たちの家族(主に妻子)らを

城に呼び寄せていた姫様。


「なでしこ、菊の花、たんぽぽ……。

今日は、これにしよう。このお城の

庭師まで戦いにいっちゃったわね。」

りんは、草花に人知れず話しかけながら

相変わらずの侍女なのに、料理を作っていた。

身なりをあまり気にしないりんに対して

重臣たちの妻たちは、りんを食事番

つまり、自分たちより下の者だと思い

姫様と親しくするりんに嫉妬(しっとう)していた。


世が世ならばまた違っていたかもしれない立場。

本来なら姫様より立場が上であるはずの

りんをないがしろにする発言をした

妻たちには、厳しく接した姫様や

家臣たちと侍女たち。

「妾の大切なおりんを見下す者には

それなりの処置をする。」

そう、言った姫様はほんの一部の者の

妻と子を別にして妻たちには、個室

実質座敷牢に閉じ込めた。

その子らは、りんたちと楽しく

お料理をしていただけなのだが……。

それを知らない妻たちは、我が子を

人質として取られたと勘違いした。

妻たちの中には、泣き叫びながら

子の身を案じる者までいた。

お灸を据えたところで、子どもたちと

りんが作った甘味や、食事を

差し入れると、さらに泣き崩れ

態度を改めたのだった。



一方、敵方となった姫様の旦那様の父は……。

大殿の手のモノにお城を攻めらていた。

「大人しく城を明け渡してくれたら

城兵の命は助けてやる。」

というように降伏するよう勧告しました。

これに対し旦那様の父は、

「承知した!」

と奇妙なくらい、あっさり降伏を宣言。

しかし……それは、真っ赤なウソだった。


"降伏したならこの城から

早々に出ていけ。"

という内容の口上を述べたが、旦那様の父は

"家臣の一部がゴネているので

すぐ説得するから、ちょっと待て。"

という風な返答をした。

旦那様の父は、このウソで可能な限り

時間を稼ぎ、その間に神川の流れを

せき止める工事を秘密裏で行ったのだ。

そして、なんやかんや理由をつけて

待たすこと3日………。

3日も待たされしびれを切らした

大殿の手の者たちは、返事を催促(さいそく)した。

「私は承知した、としか言うてない。

お前たちの、話は聞いたが話の

内容に対しては承知していない。」

そこで、降伏は嘘だったことに気づき

怒った大殿の手の者たち。

「騙された…絶対に許さんっ…!!」

早朝、激怒した大殿の手の者たちは

ついにお城へ攻撃を開始した。


"これはいい。機は熟した。"


このお城での戦いにおいて、敵方である

旦那様の父の目的は一つ。

大殿の手の者が率いる3万8000もの

大軍をこの地に足止めする事だった。

この大軍が上方の戦に参戦すれば、

西軍の武将達は苦戦を強いられる事に

なるからだった。

姫様の旦那様の父と弟は大活躍した!

第二次上田合戦成功!


ただ待つばかりでなかった大殿の軍は

お城の近くの稲をわざと刈り、

挑発して城外へおびき出す作戦に出たのだった。

敵も大軍とはいえ、うかつに攻めては

こなった。地味な作戦で城外へおびき

出そうとしていた。

実がなる前の稲を無惨にも刈り取る敵軍。

「せっかくの成長した稲を刈り取る

馬鹿どもよ。民を苦しめる者を、

懲らしめようぞ、楽には死なせてやらん。」

ニヤリと笑った旦那様の父は、

わずかな精鋭を率いて自ら城外へと突撃、

大殿の軍の先鋒隊はすかさずこれに

攻撃を加えた。

わざと挑発にのったふりをし

すぐに城へと退却。

すると前線で戦っていた敵はそのまま

敗走しているようにみえた旦那様の父を追い、

激しい勢いで城壁近くまで押しよせてきた。

「バカどもが釣れた~!ワシの狙い通りよ。

皆の者、アレに撃て!撃ちとれ~!」

城内の兵達は押し寄せてきた敵兵目掛けて

一斉射撃した。

旦那様の父の策略にまんまとハマってしまった

敵兵は次々に倒されたのだった。


この後、後方に控えていた大殿の軍は

神川を渡り兵を進めていた。

そして旦那様の弟は敵が神川を渡った直後、

工事していた神川のせき止めを

切らせたのだった。

神川は激流に飲まれて大氾濫。

これにより大殿の軍の退路は断たれたのであった。

さらに旦那様の弟は、兵を率いて

城外へ突撃開始、虚空蔵山に潜んでいた

味方の伏兵も突撃に加わった。

3万8000の大軍を足止めし

挑発にのるフリをして敵軍の数を減らした

旦那様の父。

そして、川を氾濫させ退路をたち

伏兵を用いて敵を倒す旦那様の弟。

つまり挟み撃ちを成し遂げたのだった。


大殿の軍はこの不測の事態に

対応できず大混乱。

旦那様の父と弟の軍の猛攻を受け、

大殿の軍は、多くの死傷者を出し

敗走を余儀なくされたのだった。

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