第33話

小助の元服



*りんと小助が生きていたこの時代は

生まれ月に関係なく、新年に年齢が

上がる数え年というものでした。

*例をあげるならば12月31日の大晦日に

赤ちゃんが生まれた場合、

誕生した日から1歳、新年が明けた日、

お正月がくると生後2日目にして

2歳になってしまいます。

生まれた日、誕生日概念もある事は

あるみたいですが、夏の暑い頃、

冬の寒い日など特に女性に関しては

あいまいなものが多かった時代です。


小助とりんは数え歳の15歳。

2人が姫様とお茶屋で出逢い

色々あり過ぎた7年目、

姫様が嫁ぎ、子宝に恵まれた頃のお話です。


お館様に設定された年齢は

小助19歳、りん18歳だった。

元服(成人)をとうに過ぎたのに

誰も娶らない小助に周りの者たちは

ギモンを抱いていた。

小助は本当は性格が悪いから

誰にも相手されないんだと思う者や、

小助は妹に対して過保護で心配性だから

妹がどこかに嫁ぐと小助も妹の

嫁ぎ先についていきそうだとか……。

小助は密かに姫様が好きだから

誰も娶らないんだと、思う者。

裏で色々な憶測(おくそく)が

飛び交っていた。

そんな中、小助の元服前から縁組を

勧めたりするものや、小助との繋がりを

作りたい大殿までもが、見た目のよい

娘や臣下の娘などを次々とあてがい

小助を手に入れようと

画策したとかしないとか……。

小助はことごとく跳ね除けていたので

あまり知る者はいなかった。


「あなた様は美しい。私の様な者にまで

声をかけて下さるなんて、あなた様の

中身まで美しいのですね。」

「……小助様。」

「美しく優しいあなた様に、私は

相応しくはありません。私は

どこの馬の骨かもわからない卑(いや)しい

身分の者です。偶然、運良くこのお城で

働かせていただいておりますが

私はあなた様にふさわしくありません。」

「……。」

「私めに声をかけていただいたこと、

感謝します。私でない人とお幸せに

なる事、心よりお祈り申し上げます。

では、御前、失礼します。」

「……。」


木の影、建物の影、そして御簾(みす)ごしに

そのやりとりを見ていた高貴な

お方とりんたちがいた。

姫様とお子様たち、そして侍女たちは

りんが台所で作ってきた甘味や

お菓子を頂いていた。


年の瀬の忙しい月、年末に入り

城には様々なモノが

ひっきりなしに来ていた。

城下町からは、年内の感謝のご挨拶

お手伝いと称して、町人や商人

さらに身分ある者までもが

娘や息子更には孫などを連れ

姫様や姫様の旦那様と、お近づきに

なりたいと考えるものが、後をたたなかった。

その中に、小助やりん、他の侍女たちにまで

言いよる者もいた。


「ほぉーらー、やっぱりかわしたな。」

「小助兄さん、あんなにキレイな人に

言い寄られてるのに、なぜ

靡(なび)かないのかしら?小助兄さんは

そこそこ顔は良いと思うし、そこそこ

腕もたつし、そこそこ身体とかも

鍛えてるから、あまり悪くはないと

思うんだけど……なぜかしら?」

「……そこそこか。……小助は

なんだか不憫(ふびん)なやつよのぉ。」

りんは考えていた。

なぜ姫様は小助兄さんに対して

不憫だといったのか?

小助兄さんには心に思っている人が

いるのでは……と。

小助兄さんと、姫様?

姫様と小助兄さん……ま、まさか。

身分差の恋に苦しみながらも

異なる方の元に嫁いだ姫様への想いを

ひた隠しにし、姫様を陰ながら

支える……あの恋物語のように。

きゃー、小助兄さんもあの

絵巻物のような事……。

りんの頭の中に、先日読み終えた絵巻物

(身分差の切ない恋愛物語の絵巻物)を

思い出していた。

この絵巻物は姫様の部屋にたくさん

ある中の一つで、自由に読んでいいと

姫様から許可をもらっていたモノだった。

りんが適当に選んだ絵巻物は、

一番文字が少なかった物語で、今でいう

不倫ものの短編のマンガのようなモノだった。

姫様と姫様の旦那様の婚姻を

今だによく思わない者からの

貢ぎ物の中の一つだった。

ちなみに絵巻物は内容はともかく

この時代ではかなりの高級品だった。


「……ひ、姫様は…小助兄さんの事

ど、どう思われてますか?」

握りこぶしを作り、顔近くに話す

りんの気迫に少しばかり気負けした

姫様だった。

「……な、なんじゃ、やぶから棒に。」

「こ、小助兄さんがす、す…好きですか?」

「あぁ、小助もおりんも好きじゃ。」

この時、自分の名前も入っていたのに

姫様"も"小助兄さんが好きと

りんの脳内にインプットされたのだった。


「小助兄さん!!はい、新作の

おにぎり。これ、姫様も美味しいって

言ってくれたの。食べて、食べて。」

「……ああ?ありがとう。」

おにぎりを食べる小助をガン見するりん。

すごい気迫に、小助もまた気負けしていた。

「う、うん、確かに。塩味が絶妙だし

野菜と、これはサバのほぐし身か?

美味いな。」

「うわぁ。すごい。小助兄さんも

気に入ってくれたのね。これね、

姫様も気に入ってくれたの。小助兄さんと

姫様は、好みも一緒なのね!」

「……あ、あぁ?んっ?」

りんは事あるごとに、姫様と小助を

切ない絵巻物語の主人公に見立てていた。

恋に恋してる状態のりん。

小助と姫様の共通の話題、

共通の好みの食べ物、お互いの

イイところをそれぞれに言っていた。

そんなりんに最初の頃は、微笑ましく

思っていたが、ブツブツ言いながら

料理や小物を用意するりんに

周りは変に思い始めた。


"りんは誰かにナニか言われて、小助と

人妻の姫様をくっつけようと

しているのではないかと……。"


姫様の婚姻に反対する勢力が

りんを介して人知れず接触し

何かを吹き込んだのではないかと?

小助と姫様たちは深読みしてしまった。


一日の仕事が終わった、月のない日。

もうすぐ新しい年になる大晦日。

暗い夜空に除夜の鐘が鳴り響いていた。


「りん、最近見なれない誰かに

あって話をしたのか?」

「見なれない人?う~、あっ、お城に

出入りする方で割といい歳した殿方が

息子さんに代を譲るとかなんとかで、

新しい作り方で作ったお野菜とか

栽培方法の事とか、いつもとは

違う肥料を使ったとか…うーん、

とにかく色々と親切に教えてくれた

人とあったわよ。」

「……オトコだよな、それ。」

ピキッ。小助の額になぜか青筋が浮かんだ。

「うん、小助兄さんたら。りんの話

聞いてた?その殿方の息子さんって

言ったでしょ、男だよ。りんより

頭ひとつ分大きくて、りんが台所まで

色んな野菜を持って行こうとしたら

重いからって、なぜか全部運んでくれたの。

料理番の子なんか、かわいいとか

男前とかすっごく褒めてたわ。」

ピキッ。

「……りんは、そいつの事どう思うんだ?」

「うーん、かわいいって言うより、

見た目よりたくましいかな?まだまだ

修行中とか言われてたけど、わりと

腕とかも筋肉質だし、腕の色なんか

私と比べっ子したら白と黒とまでは

いかないけど、美味しそうな肌色だったのよ。」

「く、くらべっ子?」

ピキピキっ。

「そう。寒い日だったのに着物の袖を

まくっていたから肌が見えてたの。

私も少し袖をめくって、ほら、

こんな感じで比べたのよ。」

ピキっ、ブチっ。

「肌を合わせたのか?」

「は、肌を合わせた?って、えっ?

う、腕を、その子とくっつけただけよ?」

りんは焦った。

暗闇なのに、小助のかなり怒った顔が

見えた気がした。

「りん、お、俺はだな。」

「んっ……。」

小助はりんにゆっくりと顔を近づけ

りんの小さな唇に自分の唇を合わせた。

何が、起きてるのかわからない

りんは目を開いたまま、小助からの

口付けを受けていた。

「目くらい閉じろよ。恥ずかしいだろ。」

「……。」

「りん、姫様やまわりの者にも俺の気持ちが

バレてるから言うけど、覚悟はいいか?」

「……えっ?」

りんの頭の中は、きゃーきゃーとか

うわぁとか、なぜ?という様々な

モノが混ざりパニックになっていた。


「俺は、お前が好きだ!お前が小さな頃

刀で斬られた傷があるお前を発見した

ときから…好きだ。他の女は興味ない。」

「!!」

りんは目を見開いたまま固まった。

「新しい年がきた。りん、俺たちはもう大人だ。

お前が欲しい。皆には言えないが

兄妹ではなく、夫婦としての好きだ。

お前を…りんだけが欲しい。」

「……小助。」

りんは涙を流していた。

「お前が俺の事、嫌いなら、な、

なんとか…あきらめる。」

「……ずるいよ、私…小助…兄さんと

思いながらも、ずっと違和感あったし、

他の人から、兄さんを褒められるたび

不安でモヤモヤで、そこそこ嫌だった。」

「…そ、そこそこなのか?」

「そこそこよ、だって私、なんで

こんな気持ちなのか、わかんなかったから。

私、バカりんだし、天才って言っても

小助兄さん、いつも私をバカにしてたし

ムカつくのよ。なのに、なんか……

なんか、よくわかんないのよ。」

小助は無意識にりんの背中をトントンしていた。


「あの日、怖い夢も小助兄さんとなら

怖くなくなってきた。でも、兄さんに

くっ付いて寝てたら、胸は苦しくなるし、

なんだか生理の時みたいにアソコが

ムズムズするの……。」

りんは太ももを擦り合わせていた。

ごくっ。

「それは、今もか?」

「……うん。」

「りん、怖ければ言えばいい。俺は

ここにいるから、ほら。」

恥ずかしさがこみあげていたりんは

目を閉じた。

「……ちゅっ。」

口付けのリップ音とともに

触れている部分が暖かく感じたい。

「……。」

「「……はぁ。」」

今度は長めの口付けしていたが、

お互い呼吸するのを忘れたかの様に

息を止めていたので、苦しく

なってしまった。

「ふふっ。」

「な、なんで笑うんだ?」

「あの時は怖かったのに、小助兄さんとなら

ぜんぜん怖くないの。私も、小助兄さん

……小助が好き。もっとしたいの。

元服のお祝いに、私をもらって下さい。」

「……元服の祝いじゃなくとも、

りんがいいなら、いつでも頂くよ。」

「………。」

「ありがとう。一緒に生きよう。」

「……はい。」

お互いの唇は、最初よりも熱くなった。

着物の合わせから手を入れようとした

小助だか、冬場の寒い日だったからか

なかなか手を入れれなかった。

「いいか?」

「……は、はい。お好きに、ど、どうぞ。」

「……ごくっ。」

口付けをしながら、お互い吐息を

もらすようになった。

とろけるような感覚と熱に

頭がだんだんとボーっとしてきた。

背中に腕を伸ばししがみつくりん。

小助はりんを軽々抱っこし、

押し入れから、乱雑に布団を

取り出した。

足で布団を広げながら

柔らかく積み重なる所にりんを

降ろした。

後ろ結びの帯を解き、時間をかけて

着物を数枚脱がした。

着物越しにりんの背中の刀キズをさわり

緩くなった腰紐辺り、探る様な手つきで

手を入れやすくなっていた合わせ目。

「ん…んんぅ……。」

お互い興奮しながら、はだけていく着物。

あらわになった白い肌に、そっと

口付ける小助。

口と手が触れる場所は、しだいに

熱さを増していった。

りんに触れ、指先にはりんの

とあるものを執拗(しつよう)に

とらえながら刺激していた。

時折ビクッとなるりんの表情をみていた。


「りん?大丈夫か?やはり……。」

りん、あの日襲われた事思い出して

しまったのか?

やはりこれからすることが、怖いんだよな?

りんのためなら、ここで終わらすべきだが

痛いほど張り詰めた小助のモノは、

やめるのを嫌がった。

「……イヤ。」

「嫌…、やはり嫌だよな……。」

なくなく、小助はりんの素肌から

手を離そうと葛藤(かっとう)していた。

「……んっ、お願い、は、早く。」

「……だ、大丈夫なのか?」

「早く、触ってぇ。」

小助は心配しながらも、内心

すごく喜んでしまった。

「りん。」

「……っ。」

りんは中がどこかはわからなかったが

ゆっくりと動く小助の指を感じた瞬間

なんとも言えない感覚が、触れられた

場所からビクビクと何かが走った。

「……ぁっ!」

りんに何度も触れながら小助は

りんの耳元でささやいた。

「りん、好きだよ。」

大事なの物を扱う様に、優しく

感触を確かめていった。

絶妙で誘われる様な指使いに

りんは自ら腰を浮かせゆらしていた。

「小助…もう…ダメ。」

「りん、ここに男の"持ちモノ"いれてやる。

好きな人としか、しないことだ。」

「……。」

りんは、照れながら頷いた。

「りん、大切にする。」

「……はい。」



りんは、お茶屋さんに来ていた

子どもを産んだばかりの女性の言葉や

姫様の言葉がわかった気がした。

"初めは痛い様な気はするけど、

クセになる気持ちよさ。"

"殿方の持ちモノを挿れたら

幸せになれる。"

「……幸せになりたい。」

「りん、幸せになる。俺たちは

幸せになるんだ。」

小助の持ちモノは、りんの中で大きくなった。

「すまない!ごめん、りん、大丈夫か?」

だんだんとあつい熱と鈍い痛みが

治ると、物足りなくなってきたりん。

「……もう大丈夫。私たちこれで

幸せになれるんだね。」

「あぁ。幸せにしてやる。りんが

大丈夫なら、そろそろ……。」



ひとつになれたと思っていたりんは、

この後、物足りないと思った自分に

後悔するほど、とあるとこと

とあるものを酷使するのであった。

空が白くなった頃、

お互い抱きしめ合う様に眠っていた。


新年の朝、他の者も酒で酔ったのか

起き出す者は少なかった。


*ちなみに腕の色を比べてたりんの

お相手は、10歳の男の子設定です。

城に食材を卸している商人さんの

息子さんでした。

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