第24話

川柳で会話?


「飯のたね、非常食より、これがいい。」

「あれ?俺は、ここに何しに、来たのかな?」

「兄さんよ、可愛いりんが、食べてるの

はいこれよ、見逃してよね、あげるから。」

「バカ~!!りん、なかなか来ないから

心配しただろうが!!離れたら

危ないから"クソ"したら、すぐ戻れよ!」

「バカりんよ、なかなか来ない、

心配だ?く、くそしたら、すぐ戻れよな、

あにきより?小助兄さん、5.7.5の

口調で話すのん、忘れてるわよ?」

小助は肩をプルプルしながら

りんに怒るのを我慢してた。

「小助兄さん、最近怒りっぽいわよ。

何かあったの?怒りたくなった時は

ほら、えーと、確か1から10まで

数えてから吸って吐いての深呼吸を

3回だったかな?はい、

それを一緒にしよう?ねっ!!」

勝手に声を出して数字を言い出し

深呼吸を繰り返すりんに、小助は

毒気を失い怒るのをやめてしまった。


姫様と姫様の旦那様、護衛たち

姫様について行く侍女たち、ぞろぞろと

連なり嫁ぎ先の国へ再び動き出したのだった。


ある程度の休憩はあるものの

移動中、日が明るいうちの食事休憩は

簡単なものでパパっと済ませて、

夜に一気に煮炊きする程度だった。

翌日のおにぎり類も、夜のうちに

作り置きしとくのだった。

移動中は、暇になりがちで黙々と

歩くのだが……。

りんの提案で暇つぶしに、皆で5.7.5口調で

言葉遊びしながら進んでいたのだった。

景色も変わり映えなく、簡単な

昼ごはんのあと、花摘みの為のいつもの休憩。

場所を離れそれぞれに、散ったのだが……。

その日のりんは、いつもより遅かった。


不審者はいなかったはずだが、

あまりにも遅いし、まさか……。

心配になった小助の気は焦り、

いつも以上に声を荒げながら

りんの名前を呼び探していた。

姫様どころか姫様の旦那様も大名格の

身分があるお方の大名行列。

それも輿入れの行列。

華やかな輿や長持ちも多数……。

狙われやすいのは当たり前で

小さな盗賊や山賊を倒しながらの

行列だった。それなのに…

…目を離してしまった!

焦りながら"りん"の名を呼ぶ小助。

山の中にある村々の人にも聞こえたのか、

頭を下げひざをつく村人や町人

そして旅人たちは不安気にしていた。


男性陣が用を済ませたあと、女性陣が

するのだが、りんはどんどん草むらに

入り、見えないところで用を足していた。

そして、その近くで美味しそうな

へびいちごを見つけ、山菜や

きのこまで夢中になりとっていたのだった。

やがて、りんにも小助の声が聞こえたのだった。

「んっ?小助兄さん?なぁ~に?」

「りん!!無事なのか?!」

「んっ?」

見つけた時、安心したからかつい

大声で怒鳴ってしまった俺は悪くない、はず。

冒頭の会話戻る……。

     *

空気を読まないりんはさらに続けた。

「あと女の子に"クソ"って言うたら

下品だよ?お花摘みって言ってよ。」

「……。」

「小助兄さん、どうしたの?あっ、

仕方ないわねぇ。もう一個あげるね。はい。」

そう言いながら、山道に実っていた

へびいちごを小助の手のひらに

ふた粒乗せたのだった。

ぷちっ。

「バカ、アホ、まぬけぇ。みんなを

待たしてるだろうがぁ!!!」

「怒鳴らないでよ。もお。

あっ。あの日から あなたのとりこ……。」

「……なっ?!」

急に真剣な顔で、小助を見つめるりん。

りんはぐっっと握ったこぶしから

人差し指と中指をだし、また握り拳を

作りはじめていた。

周りに誰かが居たら気づくはずだが

小助は、急に黙ったりんの先程の言葉が

アタマの中でグルグルしていた。

"あの日から あなたのとりこ…"

りん……。あの日からっていつなんだ?

あなたにとりこって、俺の事だよなぁ?

思い悩むほどだったのか?

「よし、出来た。いくわよ。」

「……んっ?」

「あの日から あなたのとりこ へびいちご。

小助兄さん、私の川柳、あれ?へびいちごは

季語になるから俳句になるのかな?

どおかしら、私の俳句?」

「……。」

「小助兄さん?ど、どうしたの?」

小助は、勘違いした自分に腹が立ち

顔を赤くしてこらえていたが……。

「バカァ。りんのバカ!!!」

大きな声は、少し離れた姫様の

駕籠(かご)まで届いた。

そのあとは何事かと、わらわらと

人が集まってきた者たちで、何故か

へびいちごやらきのこなど、山菜とりに

少しの間時間を割くことになってしまった。


「おりん、このヘビイチゴには

どんな効能があるんじゃ?」

「ヘビイチゴそのまま食べても甘酸っぱくて

美味しいですが、お砂糖を加えて煮詰めると

数日もつ、おやつになります。」

「ほお、食べてもいけるとはな。」

バクっと口に含む姫様。

「「「「「姫様!!」」」」」

複数の止める声がしたが。

「うむ、ちょっと酸っぱいが、

確かに甘味はあるな。」

「でしょう!!私はこれが好きで

よく、おかみさんにたのんで

色々作ってもらったの!!

煮詰めたものをお団子とかに添えて

食べたら、それはも~すっんごく

おいしいんですよ!!」


そのほか、付け加えるかのように

虫刺されに効果的とか、かゆみを

止める効果。 さらには、ヘビイチゴと

よもぎには、擦り傷、切り傷、

やけど、あせも、肌荒れにもよい

事を伝えると、なぜか姫様の旦那様まで

興味をもち、結果、姫様も含めた

ほとんどの皆で、ヘビイチゴとよもぎ

そのほがの食べれる野草の採取を

しながらの帰国?となったのだった。

「ヘビイチゴの花言葉は「可憐」と

「魅力」なんですよ。姫様にぴったりですね。」

「可憐なのは、どちらかというと

おりんじゃな。」

(そして魅力……。人を

惹きつける力はおりんの方が上じゃ。)

その言葉は、姫様の中で呟かれ

誰にも聞かれる事はなかった。

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