第11話
「うわぁー。何ここ、大きすぎませんか?
首が痛くなりそうだわ。」
「りん、口あいてるぞ。」
「さっき小助兄さんも口あいてたわよ。」
「なっ!あいてない。」
「私だけじゃないわよ~だっ。」
「ぷふっ。おりんも小助も騒がしいなぁ。
皆、緊張しているのに、ぷふっ。」
口元は優雅に扇子で隠しながら
話す姫様はすごく豪華な衣装を身につけ
とてもキレイだった。
だけど、扇子で隠しきれない揺れた肩が
笑っているのがバレバレであった。
お城に入る前、入念に調べられたあと、
姫様の父上から養父宛に手紙を
養父となる城主の側近に渡したのだった。
「大殿との謁見まで、こちらの場所で
お付きの者はこちらへ……。」
護衛兼荷物運びとして城の一角?
離れに通された姫一行。
「なんじゃ、ここは?妾を愚弄してるのか?!」
案内された場所は、お城内に作られた
古民家?と長屋といった感じの場所だった。
案内してくれた城の者も、少し困った様子で
「こちらが大殿が準備されたものです。
食材などは台所に毎日運ばれる
予定でございます。」
「……。」
「妾たちをバカにしているのか?」
「と、とんでもございません。
ひ、姫様は料理人もご一緒に
連れていらっしゃるそうで、
今、急遽案内出来るお台所がついた
お部屋はこちらだけで、あとは、
城の者の台所と一緒に
なるだろうからとおっしゃられ、
こちらになりました。」
「……。」
姫様は明らかに怒っていた。
「昨日、お宿の台所でお団子作ってたから
料理人と間違えられたのかな?アハっ。
私、お団子屋の娘よ。料理はそこそこ
出来るけどね?食材はどんなものが
用意してくれるの?」
姫様の後ろからりんは、城の者に
声をかけた。
小助は他の護衛の者と荷物を
運んでいた為、りんが話していることを
知らなかったのだった。
「……申し訳ございません。大殿に
確認し、料理人の手配をしばらく
お時間を……。」
「ねぇねぇ、ここにある食材は自由に
使ってイイのよね。ここのは何日分
とかではなく、自由に使っていい
場所なんでしょ?」
「は、はい。毎日の食材を入れさせて
頂く予定で、本日分と明日の分は
すでに準備させていただきました。」
「調味料とかは、何があるの?」
おりんが、グイグイと食材や調味料の事など
話を聞きだしていた。
りんは城の者に一歩一歩近づき、城の者は
後ろにジワジワと下がる。
いつのまにかりんは、自分より大きな
男性の手をわしづかみしながら
食材や調味料の説明をさせていた。
怒りに満ちていた姫様も自然と
りんと、城の案内の者との
やりとりを見ていた。
楽しげに話すりんと、緊張からか
汗を流しながら困り顔で話す城の者。
台所の使い方がイマイチわからないが
夕飯を今から作り始めたいので
すぐにここの台所を使える、下働きの者を
数人、寄越してくれる段取りまで
つけてしまったのだった。
その待つ間、天気が良かったので
何件かの長屋の様な建物と
一軒家の様な建物からお布団を運び
外で干そうと言い出すりんに、
「仕方がないなぁ…。」といい
護衛の者を巻き込み、布団を
干しだしたのだった。
木の棒で、布団をパンパン叩いたり
布団を干すための、木枠を組み立てたり
まるで一風変わった戦場の様だった。
4半刻後(約30分)。
先ほどの城の者と10歳位の痩せた
子ども2人が連れてこられていた。
怯えた表情の子ども。
「あの~、少しよろしいでしょうか?」
威風堂々たやってきた先ほどの
大きな男性と、それとは対象に
痩せた子ども女の子2人。
「すみませんが私から見て、かなり
怯えてるようにみえますが、
説明はしていただいたうえで
こちらに連れてきたんですよね?」
「説明は、ここでするつもりだ。」
「はあ!!いい大人が、こん~なにも
か弱い女の子の子どもに、何の説明もなく、
連れてきたんですか?あなたがきたとき
この子たち小走りだったし、
どうせ偉そうにこっちへ来い!とか
威圧感たっぷりに言ったあと、
子どもに歩幅も合わせず、いばり散らして
たんじゃないの?たまにいるのよね。
あーヤダヤダ。自分勝手なそんなかんじの
態度のお客さんには、いつもは優しい
うちのおかみさんが丁重に話を付けてるから
私もそれを見習って、あなたに言うわよ!」
大きく深呼吸をしたりんは
一気にまくしたてたのだった。
「その子たちに、事情をちゃんと
きっちり説明してからじゃないと
だれもが不安になるの!!そのせいで
あなたのその怖い顔も、ふてぶてしい
態度も、そのバカでかい大きなガタイも
裏目に出て、内面優しい所があったとしても、
誰にもあなたの事わかって貰えず、
寂しい一生を過ごすのよ。
損するのはあなたなの。だから、ちゃんと
丁寧に優しく、ゆっくりと
目線を合わせて説明してあげて。
ちょっとした事で、あなたの人生
変わるかもしれないのよ?!」
いつの間にか、りんは大きな男の
お腹あたりの着物を引き寄せ
お説教?をしていた。
りんがもう少し大きく、大きな
男の背がもう少し低かったならば
きっと、りんは相手の胸ぐらをつかむ状態で
話をしていただろうと、思われた。
りんは必死だからか、気づいていなかった。
言われっぱなしの男性の顔が
怒りで顔が真っ赤になっていたのだった。
子ども2人はさらに怯え、男性は
「言わせておけば、調子にのりやがって、
じゃじゃ馬の者は同じじゃじゃ馬を
飼ってるのは本当らしいな!!」
そう言って、りんを突き飛ばしてしまった。
「おい、そこの者。それは妾に
ケンカを売ってるということか?」
「ケッ。何が"わらわ"だ。大殿の臣下の
そのまた臣下のおなごが、姫様気取りか?
姫様なんだろうが、お付きの者の
しつけくらいしろよな。じゃじゃ馬姫。」
「何を!!」
城の者の言葉と態度に腹を立てた
姫様の家臣たちは、姫様が間に入り
止められたのだった。
「頭の弱いこやつと同じ土俵に上がるな。」
「くそっ!!言わせておけばこのアマ!!」
護衛たちは刀をキツく結んでいた為
刀をなかなか抜けなかった。
その間に、先程布団を叩いていた棒を
持つ小助、竹ぼうきを持ったりん、
同じく竹ぼうきを持つ姫様。
小助が間合いに入り、城の者の
刀を持つ手を突き、後ろから
頭に竹ぼうきの穂先を頭に振り落とすりん、
前から竹ぼうきを袈裟がけに
振り落とす姫様。バランスを崩した
城の顔面に、まともに竹ぼうきが
直撃したのだった。
「お見事!!さすがあの者の娘。
美しさも一品じゃ。わしの養女に
なったが惜しいのぉ。これなら
わしの側室にでもしたいくらいじゃ。
そちらの者もなかなかじゃ。」
手を叩きながら、ゆったりと
歩いてきた人物。
体形は肩幅が広くずんぐりむっくりの肥満体。
とてもじゃないが美男子とは言い難い
美男子とらかけ離れた人物だった。
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