第7話
2人がお弟子さんたちと稽古していると
「たのもー!!!」
あっ、ホントに"たのもー"って言う人
いるんだなぁと思ったりんと小助。
門の方でから聞こえる高い声に
かなり…聞き覚えがあった。
それと同時に叫び声とドタドタと
板を割る勢いのすごい足音が聞こえてきた。
その足音は、どうやらこちらに
向かっている様だった。
解放したままの門から道場に走り込んできた
者、姫様がいた?
あれ?姫様は二度寝しているはず?
"新手の道場破りか?"
と騒がれながらやってきたお方。
道場の扉にかじりつきながら
肩で息をする姫様は……。
「おり~ん、小助ぇ~!!ハアハア~
無事なのか?」
ハアハアと、息が荒いまま話す姫様の
目は潤んでいた。
「ひ、姫、様?」
「……姫様?!」
「何事じゃ、騒がしい!」
***
小助は驚いたと同時に思った。
二度寝したが起こしに来た女性から
じいやさんに伝わり、じいやさんが
俺たちにこの道場に来させるように
仕向けた事。木簡の内容の事。
内容をぼかしたか、そのまま
伝えたかはわからないが、姫様が
城を飛び出し、俺たちを心配して
下さったのかも?……と色々思った。
「姫様、"一応"無事にじいやさんの
木簡は届けれました。今は
道場主様の返信待ちの間、こちらの
お弟子さんたちと"稽古"させて
いただいておりました。」
腰を低くし、片膝をし頭を下げて
姫に話す小助。
それを見て、真似をするりんと
お弟子さんたち。
「一応?とは、やはり何かあったのか?」
おりんと小助は、道場に来るまでの
出来事を話そうか迷った。
「おいっ!ワシの事は無視か?!」
「じいやと企んで、私の大事なおりんと
小助を傷つけたら、タダではおかんからな。」
「やれやれ、コレでも丁重に
お・も・て・な・ししたんだがな、
礼儀がなってないなら、あやつの代わりに
ワシが一からシツケ、してあげようぞ!!」
「……うっ。」
***
「うっ、もうダメじゃ。もう感覚ない。」
「姫様、話をわざと長引かせますぞ。」
「「「……!!」」」
道場主の恐ろしいオドシ文句に
姫様の舌打ちの音が響いていたけど
聞き流してくれたのか??
お説教?はしばらく…どころかかなり
なが~い座学が続いた。
勝手に勘違いし、勝手に怒鳴りつけてきた
姫様の巻き添えをくらい、仲良く
一緒に正座させられお説教の最中だった。
「昔の人が書いたと言われる、国の
成り立ちやらなんやら神や仏の元と
なったと記されたモノがあるんじゃがな、
その記されたモノの中には「稽古」
という言葉が書いておるんじゃが……。
カンタンにワシが教えてやろう。」
道場主はニヤリと笑った。
姫様はうつむきながらプルプルしていた。
りんは話に興味があるのか、足は
かなり我慢しているらしいが、じいやさんに
似た道場主の顔をみていた。
俺はたまに、りんとお姫様をちら見しながら
道場主の話を聞いていた。
「意味は、古(いにしへ)を
稽(かむがへ)る、と書いてるむずかしーい
漢字の成り立ちからして"稽古"の
事を指してるとも言われておるんじゃ。
.まっ、単に学んだことを練習することも
稽古というんじゃ。」
お、終わった?
やっと、終わったのか?
ググ、グゥー。
グゥ~、グギュルル……。
グゥ~。
姫様、りん、小助の3人のお腹が
ほぼ同時になった。
りんも、俺もかなり前からなっていたが
話の切れ目でホッとしたからか、
盛大になったのだった。
「はははっ!!そう言えば、飯が
まだじゃったな。」
配膳を手伝おうとしたりんだったが
かなりの長い間正座をしていたので
足がジンジンし動けなかったのだった。
じわじわ足を崩し、手を合わせて
朝食を持って来てくれたお弟子さんに
「ごめんなさい。ありがとうございます。」
と手を合わせたまま頭を下げたのだった。
朝ごはんは、臼(うす)で挽(ひ)いて
細かくした米や雑穀を粥にした割粥に、
みじん切りされた野菜や、山菜が入った
汁多めのものだった。
りんと小助にとっては山菜も入っていて
具沢山。しかも梅しそまでついていて、
食が進む朝ごはんだった。
「これが庶民の…朝ごはん……?」
「姫様、このようにお米……。ご飯が
食べれるのはかなり幸せな事なんですよ。」
「……おりん。」
「それに、このご飯は白米やひえ、あわ
色々な作物を作ってくれた人、
山の幸をつんできてくれた人
あと、ご飯を準備して作ってくれた
人たちに感謝して食べなきゃ、
バチがあたりますよ。」
「…おりん。」
「あっ!言い過ぎました。すみません。
姫様だから毎日おいしくて豪華な
お食事ですよね?!ごめんなさい。
私…たち?…ご飯、食べれない時が
多かったので、つい。」
りんがお館様に拾われてからご飯が
食べれなかった時とは、りん(みく)が
いたずらした時や、言いつけを守らず
失敗した時など、ご飯を一食抜かれた程度で
1日まるまる抜かれたり、何日も食事を
与えられなかった、とかそういった
事実はなかったのだ。
だけど、そんな事を知らない周りの者は
りんと小助になぜか優しく接し
おかわりまで持ってきてくれたのだった。
「あっ、姫様。今朝ね、私こけてしまったけど
良いモノ、頂いちゃったの。はいコレ
みんなで分けましょう。」
「バカ、りん。話しをはしょりすぎだ。」
姫様は案の定、ポカンとしていた。
なぜ、りんがこけたのかとか
なぜ蒸した芋を頂いたのかをまた
かいつまんで話す小助だった。
小助も1本取り出し、蒸し芋2本を
道場のお弟子さん12人、道場主、姫様、
りん、小助を入れた16人で仲良く
わけたのだった。
小さくなってしまった芋を、毒味と
称して、姫様の蒸し芋を半分以上
食べ、泣く泣く自分の蒸し芋を
小助に言われ半分に割って
差し出したのだった。
道場は今日一番の笑いに包まれたのだった。
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