第2章 帝立学園1年
第1話 少女皇帝、入学する。
帝都ベリジアセス――――ベリジアス帝国の帝都であり、政治の中枢になる。この帝都の一角、帝城のそばに学校があった。その名も帝立ベジリアセス学園。通称『帝立学園』――――帝立の学園自体がこの学園しかないのでその通称でも学校が特定できる――――が、建っている。この学園は4年制の学校で、庶民から貴族、さらには皇帝一族まで入学でき、入学にはそれなりの実力が必要である。また他国の王公貴族も入試を受けることができ、近隣諸国一の優秀な学生が集まっている。また、この学園の定員が多くなく1学年140人ほどであり、入学するにも倍率が50倍以上になる。また、この学園の卒業者は様々な分野で活躍しており、前宰相や外務卿もこの学園の卒業生である。入学はほぼ14歳になる年齢からで、全寮制のため一部主従の関係で同学年に所属するために入学をずらすものもいる。
クラス分けは成績順にA~Gに振り分けられる。1クラス約20名で構成され、基本は新年度になるとクラス分けが行われる。ただし、場合によって年度中にクラス変更が行われることがある。
今日は、9月1日。帝立ベリジアセス学園の入学式である。帝国だけではなく周囲の国々から入学者が続々と学園に到着していた。
「さあ、学園生活の始まりね!」
「それはそうなんですが、なんで歩きなんですか?」
帝都を学園の制服を着た少女が二人歩いていた。ただ、見た目は明らかに学園に入学する年齢よりもかなり幼かった。
「だっていつもお城の中じゃ退屈だったから散歩がてら学園に行こうと思ってね。」
「いや、現皇帝が普通に城下町を歩いて学園に行くのが異常です!」
皇帝フリージア・アメジスト・フォン・フィリア=ベジリアスと、そのお付きのアリスが帝都を歩く。その後方で近衛騎士が衛兵と共にその姿を目立たないよう冒険者風に変え万が一に備えているのだが、明らかに人数が多く逆に目立ってしまい、それが抑止力となっているのを二人は知らない。
「大丈夫よ。帝都の安全を守ってくれる人たちがいるから人拐いも無差別殺人鬼も魔獣も来ないわ。」
「……そうですか?」
皇帝は護衛に気づいているかもしれない。
「それより早く行きましょう。どんな子達がいるか楽しみだわ。」
「どんな子て……、みんな私たちより年上でしょうに。」
二人が大量の護衛を引き連れ、学園の門に到着する。
「今日、入学する――――」
「どうぞ、お通りください。」
学園の門を守る門番は、二人を誰何することもなく通す。帝城から早馬で皇帝が徒歩で来ることを報告受けていたからだ。他にも庶民で入学するものは徒歩で来たりするので歩きで来ること自体は目立ってはいないのだが、彼女たちの場合は後ろにいる護衛軍団が身分証明になったのと、皇帝陛下に身分証明をしてもらうこと自体が畏れ多いと通された。普通なら入学生は身分証の確認などがある。
「身分確認されずに通されましたが、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ。身分を証明できてるから。」
「そう、ですか?」
二人は校門から校舎に向かって歩く。そんな二人の横を馬車が何台も通る。普通貴族なら馬車で学園に向かうので、歩きで入学式に向かう皇帝は異例中の異例だ。中には皇帝が歩いているのに気づいてぎょっとしたあと、見なかったことにする貴族もいた。まあ、皇帝が歩いているのに自分が馬車なんて不敬罪に問われかねない。知らなかったで通すしかなかった。
「あれ?フィーちゃん。なんで歩いてるの?」
ここに声をかけた猛者がいた。その名はリリーシャ・エリッサ・アイランド。この学園に通う2年生だ。
「あっ、リー姉ちゃんだ。おはよう。」
「うん、おはよう。で、質問に答えてないんだけど?」
「あー、缶詰だったから散歩したかったの。」
そう答えた皇帝の横で頷く侍女。
「……じゃあ私も歩くわ、去年はそうだったし。」
「歩くんだ。」
馬車を降りて歩きだす子爵にため息混じりにツッコむ侍女。もう諦めたようだ。
「先に馬車だまりに行ってください。私は彼女たちと歩くんで。」
「わかりました。」
そう言って馬車を走らせる馭者。元々男爵家の3女で貴族的なことはほとんどしていなかったのに、なぜか家を継ぎさらに爵位が上がってしまったため子爵っぽくなく、家の者からは娘や妹のように扱われることが多いのでこういうこともできたりする。
「じゃあ行きましょう。」
3人並んで校舎に向かって行った。
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2月22日の近況ノートに書いた通り、ストックが切れるまで毎週木曜日に更新します。
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