第152話 夏希屋オープン準備(1)
夏希は我が家の前で仁王立ちしている。そして左右に並ぶスズランと真冬も仁王立ちだ。ついでにシルバーは「ヒョホー、ヒョホー」と鳴きながら3人の周りをグルグルと走り回っている。(とても鬱陶しいのだ)
「それで夏希は何を考えてるのじゃ?」
訳も判らず仁王立ちしたスズランが問う。
「ラジオ体操?」
真冬もだった。
「夏希屋開店に向けてどうするか考えてるんだ。因みにラジオ体操はしない」
「朝の体操は体にいいんだよ?」
いつの間にか横並びしている人数が1人増えていた。ぶたさんパーカーを着たアンナだ。
アンナは夏希に教えてもらったラジオ体操第1をスズランの左横で「腕を前から横にしまーす」とか言いながら始めていた。
そして夏希の右横に居たカエルさんパーカーの真冬が負けじとラジオ体操第2を始める。「はひ ほへ」と変な掛け声を出しながら。
スズランはラジオ体操を知らない。だが、左右を気にしてウズウズしてるようだ。
夏希は周りが騒々しくても考える。シルバーがお尻に噛みついていても考える。
そして夏希は悟りを開いた。
(もう適当でいいや)
いつもの夏希であった。
夏希はアイテムボックスから鷲掴みして出した獣人村ニンジン大量を、シルバーに見せつけて遠くへ放り、悲鳴をあげていたお尻を助けてから皆に声を掛ける。
「今日は夏希屋オープンに向けて準備をします。スズラン隊員、真冬隊員、そして特別顧問のアンナさん、お手伝いお願いします」
「「おーー!」」
スズランとアンナが右手を上げて返事をする。そして真冬はシルバーに乗って何処かに消えていた。(まふゆーーー!)
「それで何を売ることにしたのじゃ?」
ぶたさんとペンギンが並んで小首を傾げ、キラキラした目で夏希を見ている。
「それでは発表します。お菓子、オモチャ、化粧品、お風呂セット、調味料。とりあえずこれだけだ。俺が居なくても問題無い物だけだな。アイスやジュース、酒類は保留だな」
夏希はネットスキルで縦横180cmあるスチール製の枠と木製の棚で作られたラックを購入し、店舗スペースの奥から並べていく。
(少し暗くなったかな?仕方ない奥の手だ)
夏希は再びネットスキルで購入する。それはUSB端子付きのワイヤレス蛍光灯だ。感知センサー付きで半日程度は余裕だ。
夏希はスズランと逃避行から戻ってきた真冬に声を掛ける。
「スズラン、真冬、今日のネットスキルは全部店舗の設備に使っていいか?」
「「問題無し」」
夏希は2人の了解を得て、追加でワイヤレス蛍光灯を大量に買っていく。合わせてポータブル電源とソーラーパネルも購入する。
「隊員1号2号と特別顧問、集合せよ!」
「「「タタタタッ!」」」
3人が夏希の前に並んで敬礼する。(アンナちゃん、よく知ってたね)
夏希はアイテムボックスからテーブルを出して、ワイヤレス蛍光灯、ポータブル電源、ソーラーパネルを並べていく。
「これが蛍光灯だ。まあ、魔道具のランタンみたいな物だな。ここにある半分をラックの柱の太い部分に取り付けてくれ。そのままでピタッと張り付くからな。
そして残りの半分は交換用だ。カウンターの裏にある倉庫で、このポータブル電源に差して充電する。翌日の朝、店舗のものと交換するんだ。そしてソーラーパネルは2階のベランダに設置してポータブル電源の充電をする」
真冬は理解したみたいだが、スズランとアンナは小首を左右に何度も傾けていた。
「真冬はベランダにソーラーパネルを設置して、ケーブルが下の倉庫に入るように床に魔法で穴を開けてくれるか?」
「了解」
真冬は夏希に向かって敬礼するとソーラーパネルをガイモ君に入れ、ベランダに飛び移って作業を始めた。
「スズランとアンナちゃんは、蛍光灯の取り付けを頼む。あ、ここにスイッチがあるから、一番右にしてから取り付けてくれ」
2人は敬礼と共に「ラジャー」と言って、蛍光灯を1本小脇に抱えて走り出す。
(どこで覚えたの?それとなんで1本ずつなの?まだ持てるよね?君たち)
夏希は交換用の蛍光灯とポータブル電源をアイテムボックスに戻してカウンター裏の倉庫に移動する。そしてスチール製ラックを一台設置して、蛍光灯とポータブル電源を置く。
「ズボッ!」
夏希の頭上に直径5cmほどの穴が開き、暫くするとケーブルがゆっくりと降りてくる。
(なんかヘビみたいで気味悪いな)
「任務完了」
倉庫に入ってきた真冬が敬礼をする。
(それはいつまでやるのかな?)
「真冬、ありがとう。次はガイモ君から商品を取り出して3人で棚に並べてくれるか?置き方は真冬達に任せるよ」
「判った」
真冬はトコトコと歩いて出ていった。
(敬礼しないのね。もう飽きたのね)
夏希はベランダのソーラーパネルから繋がっているケーブルをポータブル電源に差していき、セッティングを終わらせる。
(うん、これで大丈夫だろう。今思い浮かぶ方法でこれが一番簡単だったからな。いつか大型ソーラーパネルと蓄電池で手間を省けるようにしないとな)
夏希は周りの後片付けをして、店舗の部屋へと戻ってみるとタメ息を吐いた。
3人は蛍光灯のスイッチを入れ、剣を持つように構えて振り回し遊んでいた。
「アンナの光る剣を受けてみるの!」
「ぐははは、ワレは点滅する剣なのじゃ」
「二刀流が強い」
そして3人は夏希の存在に気付き固まる。それぞれがポーズを決めたまま。
「「「……………」」」
「……………」
そして作業は再開された。
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