第140話 夏希は自宅の備品を揃える(1)

 我が家を手に入れご満悦な夏希。


 今はダイニングのテーブルに座ってお茶を飲みながら3人で相談している。


「まず最低限必要な物から揃えないとな。ベッドと布団が最優先だな。あとはなんだ?」


 夏希は頭を捻らせる。


「ワレはビールがサンバーが欲しいのじゃ。夏希が「あれはビールの泡立ちが良くなる」て言ってたのじゃ。もう買えるのでないか?」


「それはビールが踊るのか?ビールサーバーだな。確かに冷たくて細かい泡が雑味を防いで旨くなるんだが、あれは電源が必要だから無理なんだ。電源は前に説明したよな?」


 スズランは「ぐぬぬぬ…」と唸っていた。


「それに使えたとしても後回しだ。言っただろ?最低限必要な物から揃えると。上限額金貨30枚なんてあっという間だぞ。家具は高いんだからな」


 夏希はネットスキルを立ち上げてベッドを検索し始めたがあることに気が付いた。


「スズラン、真冬……嬉しいお知らせと悪いお知らせがあります。どっちから聞く?」


「なんじゃ急に。そんなの面白い方からに決まってるのじゃ。期待してるのじゃ」


「どっちでもいい」


 真冬はカエルさんスリッパを手にはめて、「ゲコゲコ」鳴らしては「むふふ」と言って遊んでいる。


(真冬はホント可愛いモノが好きだな)


「じゃあ、嬉しい方からにする。ネットスキルでベッドの検索をしようとしたら、メインメニューに魔道具の項目が追加されてました。まだ1種類しか無いんだけどこれが凄いんだ。聞きたい?」


 夏希はニヤニヤしながら2人を見ている。


「おお!ビールサンダーの魔道具か?」


「それは痺れて死ぬな。ビールサーバーだがそれでは無い。なんと外部モニターが購入出来ます。スズラン達も商品を見て買うことが出来ます。どうだ?」


「「おお~」」


 2人の反応に夏希は嬉しくなる。そしてネットスキルで購入してテーブルの上に置いた。それはどこから見ても枠が黒色のスマホであった。


「ん?なんか小さいのじゃ」


「スマホだ。 懐かしい」


 真冬は手に持って懐かしそうに見て、それを横からスズランが珍しそうに覗き込んで見ていた。


「それはサイズを3段階調節出来るらしい。真冬、メニュー画面にサイズ調節の項目があるから試してみてくれるか?」


 真冬が外部モニターを操作すると、スマホサイズからA4タブレットサイズに大きくなった。そしてタブレットサイズになった外部モニターをテーブルに置いて真冬がもう一度操作すると、32インチサイズ程度の大きな外部モニターになった。


「うお!大きくなる時「ウネウネ」して気持ち悪かったが、これなら良く見えるのじゃ」


「デカ過ぎ 落としたら危ない」


 真冬は外部モニターをタブレットサイズに戻し、興味深く画面を見て弄くり回している。


「真冬、その外部モニターは不壊不滅仕様だ。それでこのガイモ君だが色々面白い機能がある」


「ガイモ君?なんじゃそれは?」


「外部モニターは名前が長いから愛着を込めてガイモ君にした。可愛いだろ?それじゃあ、ガイモ君の実力を今から説明するぞ」


 1.管理者権限があり、夏希が承認した者しか操作出来ない。


 2.使用出来る操作メニューの項目も管理者権限により設定出来る。


 3.未承認者はガイモ君を認識出来ない。


 4.ガイモ君から半径50メートル以内に夏希もしくは承認者が居なくなると夏希のアイテムボックスに自動転移する。(手動での転移可能)


 5.不壊不滅


「以上、安心設計ガイモ君だな」


「ほほう、ガイモ君は優秀じゃな。これで夏希に頼まなくてもキンキンに冷えたビールが買えるのじゃ。ワレにガイモ君2号をよこすのじゃ」


「売り切れだ」


「ん?売り切れ?」


「ああ、そのガイモ君買ったら売り切れの表示になった。ガイモ君は人気者なんだな」


 スズランはガッカリした表情で真冬が持つガイモ君を羨ましそうに見ていた。


「ははは、まあ仲良くガイモ君を使うんだな。あと管理者権限でスズランの使用限度金額を設定出来るからムダ遣いはさせないよ。まずは1日100円からだ。晩酌で出すものは除外してやる」


 夏希は唖然とした顔のスズランを見て、笑いながら次の話に移った。


「次は悪いお知らせだ。ネットスキルで使うチャージがあと金貨60枚なった。ガイモ君が金貨30枚したから一気に減った。今までならまだ問題無かったが、家の備品を買うとなると心細い。店舗の準備も必要だしな」


 真冬は自分のリュックから革袋を取り出して夏希に手渡した。中を見ると金貨が入っている。


「私のモノは自分で買う。家賃も出す。魔物倒してからまた渡す。今あるのはこれだけ」


 スズランはそれを見て「ワナワナ」としている。


「真冬は偉いな!しっかりしてる。それと比べてうちの子ときたら……はぁ……」


 夏希は大袈裟にタメ息を付いた。横目でスズランが気まずそうにする様子を楽しみながら。


「ワ、ワレも稼ぐのじゃ。自分のモノは自分で買うのは当たり前のことなのじゃ」


「ふふ、やっとスズランも気が付いてくれたか。お父さんは娘の成長が見れて嬉しいぞ」


 夏希は向かいに座るスズランの頭をナデナデして微笑みをプラスしてあげる。


「気色悪いのじゃ。それで夏希、アイテムボックスには獣人村の野菜がまだ山ほどあるが、それは換金しないのか?幾らかの足しにはなるじゃろ?」


「あるよ。でも換金しない。あの野菜は獣人村の人達が頑張って育てたんだ。それをどう処理されてるのか判らない換金に使うことはあり得ない。

 俺はね、のんびりと暮らしたいんだ。だから必要以上に魔物を倒して換金しないよ。欲しいと思うモノがあれば遠慮無しでネットスキルを使うけどね」


 スズランと真冬はその回答に納得する。


「それじゃあ、必要な物を選んでいこうか。そして早めに魔物狩りに出向くとしよう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る