第139話 夏希の我が家訪問(お邪魔します!)

 獣人村から豪華な家を貰った夏希。


 夏希はアンナに案内され、改めて我が家となる建物をじっくりと眺めた。


(それにしてもデカ過ぎないか?)


 両開きの引戸は建物の真ん中に位置してあり、2階のベランダが屋根の代わりをしている。少し離れて右手側に木製のお洒落なドアがある。(これが玄関だな)

 両開きの引戸を開けて中に入ると広さ20畳ほどの空間があった。まだ何も無い状態だ。

 右側に奥に伸びる長いカウンターがあり、そのカウンター側の壁の手前と奥にドアが1つずつある。あと左奥にもドアが1つあった。


「ここが店舗ね。中身は夏希さんの希望を聞いてからにしようと何も置いてないの。左奥とカウンター奥のドアは部屋に通じてるの。手前のドアは倉庫ね」


 夏希は手前と奥側に通路があるカウンター内に入り、手前のドアを開けると6畳ほどの空間があった。(在庫とか交換したものを保管する場所かな)


「じゃあ玄関に回って部屋で休憩しましょうか。ふふふ、驚きすぎて喉が渇いてるでしょ?」


 サーラは玄関の前まで来ると夏希に「さあ、どうぞ」と玄関前から横に移動して微笑んだ。


(夏希の自宅訪問!テンション上がるなぁ!)


「ガチャ」


「おお!新築だから木のいい匂いがするのじゃ!玄関入ってすぐにタイル張りの空間と腰掛けがあるな?ここで靴の汚れを落とすのじゃな。なかなか考えておるな。これはこの先の部屋を見るのが楽しみじゃ」


 夏希はスズランの行動に玄関前で固まっていた。


「お前という奴は……」


「私が2番 夏希は3番」


 真冬が夏希を避け、トコトコと歩いて中に入る。


「真冬まで……」


 これにはサーラも苦笑いだ。


「お前らちょっとそこで待て」


 夏希は急いでネットスキルを開きスリッパを購入し、タイル張りから木製に変わる通路に並べた。


「この家は土足禁止とする。靴はここで脱いでこのスリッパに履き替えてくれ。そのスリッパは各自専用となるからな。気に入ったモノがなければリクエストを受け付けるぞ。アンナちゃんはどれがいい?」


 夏希が出したスリッパは、ゆるふわ動物シリーズだ。デフォルメされたヒヨコ、カエル、ウサギなど、人数より多めに出して並べていた。


「わぁ!可愛い動物さん達でいっぱいなの!どれも可愛いからアンナは選べないの……」


「アンナちゃんは可愛いな。もう全部あげちゃう!」


「ドスッ!」「お前はアホか?ワレはこれじゃ」


 夏希の横腹を肘打ちしたスズランは、ヒヨコを選んで両手で持って嬉しそうに眺めていた。


 アンナはライオン、真冬はカエル、サーラさんはゴリラを選んでいた。皆嬉しそうにスリッパに履き替えて、真新しい廊下を歩いていく。


「ピヨピヨ、ガオー、ゲコゲコ、ウホウホ」


 皆が足を踏み出す度に色々な鳴き声がする。


「うわぁ、ライオンさん吠えてるよ!ガオーって」


「ゲコゲコ しゅき」


「「…………………」」


 賛否両論である。


「ははは、面白いかなと思って……因みに俺は九官鳥だ。このつぶらな瞳が可愛いね!」


 夏希は「可愛いね!」と言いながらスリッパに履き替えて我が家の廊下に第一歩目の右足を踏み入れた。


「おはよー」


「ん?」夏希は恐る恐る左足を踏み入れる。


「こんにちわ」


「「「…………………」」」


(なんで挨拶なんだよ!鳴き声にしろよ!)


「ははは、ものまね上手だね!」


 夏希は周りに挨拶を振り撒きながら歩いていく。そして後ろから動物大合唱団が付いてくる。


(これは本日限りだな)


 幅の広い廊下が奥まで伸びている。その間に右側に2つ、左側に1つのドアがある。右側の2つはトイレとお風呂場で左側は店舗に繋がる短い廊下であった。


「うわっ!お風呂場があるんですね。脱衣所もあるし洗面台もある。おお、3人がゆったり入れそうな大きなお風呂だ。これは楽しみだな」


「ふふふ、夏希さんはお風呂好きですものね」


 そして夏希が一番奥のドアを開けると横長の広い空間が現れた。手前からリビング、ダイニング、キッチンと続いている。このワンフロアには、ダイニングに綺麗な木目をした大きなテーブルが置いてあった。


「ここが1階の部屋ね。2階は右側にある階段を上がると寝室が5部屋あるの。凄いでしょ?家具はまだテーブルセットしか準備出来てないの。夏希さんの好みがあるでしょ?後で聞かせてね」


 サーラが皆をテーブルに呼び、座らせ話し出す。


「まだキッチンには何もないから家に戻ってお茶の準備をしてくるわ。それまで座っててね」


 サーラが戻ろうとしたところを夏希が止めた。


「サーラさん、俺が準備しますから座ってください。ついでにケーキでも食べましょう」


 夏希はネットスキルからプチケーキセットを購入し、ストックしてある紅茶、コーヒー、ジュースをテーブルに出していく。(飲み物はポット入りだよ)


 それぞれが好きな飲み物と気になるケーキを選んでいる。(俺は勿論コーヒーだ。ケーキはモンブラン)


 アンナちゃんは「可愛いね。美味しいね」と喜んで食べている。サーラさんも久し振りのケーキにご満悦だ。スズランはビールと言ってきたが無視だ。


(ふぅ、我が家でのコーヒータイム。いいねぇ)


「ピコン」


(うお!ビックリした。天使メールかよ)


 夏希はステータスを開きメールを確認する。


[ネットスキルがまた制約解除されたわよ。貴方は前回気付かなかったからメールしてあげたのよ。ありがたく思いなさい。次回からお知らせメールが送られるようにしたからね。因みに今回の解除条件は、「マイホームで優雅にケーキを食べてコーヒーを飲む」ことが条件だったの。良かったわね。

    優しい天使カルレスより]


(なんてピンポイントな解放条件なんだよ……後で詳しく確認しないとな。楽しみだ)


「まだ2階を見てないですが素敵な家ですね。落ち着いた雰囲気がして気に入りました。それで家具なんですが俺が準備しますね。もうこれ以上は貰えません」


「ふふふ、そう言うと思ったわ。でもまだベッドも何も無いわよ?確かあまり高価なモノは買えなかった筈よね?大丈夫なの?」


 夏希は急いでネットスキルを確認する。(お!MAXが5,000円から30,000円に上がって使用限度金額も50,000円から300,000円に上がっる。もうこれって絶対に天使がやらかしてるよな)


「ははは、なんとか大丈夫そうです」


「それじゃあ、私とアンナは宴の準備に行くから夕方までゆっくりと休んでね。準備が出来たらアンナが迎えに行くから。ケーキ美味しかったわ」


「夏希お兄ちゃん、ご馳走さまでした!」


 2人は仲良く手を繋いで宴の準備に向かった。


「スズラン、真冬、ネットスキルで買える単価と上限額が上がったから、今から身の回りのモノを揃えるぞ。これから打ち合わせだ!」


 3人は楽しく家具選びを始めるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る