第131話 幕間 アンナの花嫁修業(愛妻弁当なの)

 私はアンナ6才。私の王子様を待ってるの。


 今日はね。新婚さんならあるよね。うふ。


 そうなの。あいさい弁当なの!作るの!


 ハートマークを入れたりメッセージを描いたりするの。それを見て旦那様が……


「きゃぁー、恥ずかしいの」


「はずかちいですかぁ?」


 今日はお母さんがお出かけで居ないの。


 だから助っ人を呼んだんだ。


「ルルちゃん、となりで応援してね」


「まかてとけ!」


 ふふ、いつも可愛いね。


 まずは……なんだろ?んー、たまご焼きだ!


 私と旦那様のような甘ーい、たまご焼き。


「ルルちゃん、甘ーい、たまご焼き作るよ」


「あい、あーたのたまをやきやきつくの」


 何を焼いて突かれるの……もう内股なんだけど…


「バキッ!ボロ、あっ!」


 アンナは勢いよく卵をボールの端に当て、卵の殻は粉々になり黄色の海に沈んでいった。


「ザザー、あっ!」


 ボールの中は絶景だ。白い砂浜に白い小粒の貝殻そして細っく流れる黄色い川。


「ルルちゃん、大丈夫。たまご焼きは甘いの」


「だーじぶ?たまたま」


 心配してくれてありがと。


「さあ、フライパンでたまご焼くよ」


「ふーぱんで、たまやく」


 心配されてまた焼かれるの?


「ザザー、ドロッ」


 混ぜていないボールの中身は自然体でフライパンに飛び込むのであった。


「「ゴォー、じとー」」


 アンナとルルは、業火で炙りそれを眺める。


「キレイだね。ルルちゃん」


 フライパンの中は、白い砂浜が急速に飴色に変わりキラキラだ。黄色い川はもう何処にも無い。


「出来たー!」


「でちたー!」


 出来たのは白い貝殻が浮かぶ飴色のブロックだった。焦げてないのはアンナの成長だ。


「あとは彩りが大切だってお母さんが言ってたの。だからお花がいいかなぁと思って採ってきたの」


 アンナは玄関前に置いてあった手提げカバンから、綺麗な花を山ほど取り出した。


「色んな花が綺麗でしょ?この花でハートを作るの。それもたーくさんね。ルルちゃん手伝ってね」


「あーい」


 アンナとルルは、各々で好きな花を選らびハートの形に張り付けていく。あの飴色ブロックに。そして飴だから簡単に張り付け出来る。だから2人は楽しくなる。出来上がったのは花まみれのブロックだ。飴の姿はもう何処にも見えない。


「ハートは無くなったけど、これも綺麗だよね」


「うん、ちきれー」


 ルルちゃん…点の位置次第で危ないからね。


「ガチャ、ただいま~」


 サーラが帰ってきて花柄ブロックを見た。


「あら、美味しそうなたまご焼きね。花も綺麗だし、旦那様がこれを食べたらイチコロね」


 何故たまご焼きと判るの?花ブロックだよ?

 それと毒のある花もあるから死ぬよ。マジで。


「やったー、また胃袋鷲掴みわしづかみだね!」


 爪が鋭いよね?それ?


「あとはメッセージだけど手紙張り付けるね」


 アンナは紙を持ってきてメッセージを書き、花柄ブロックの一部をナイフで削り張り付ける。


「ベタッ!」


「あいさい弁当、完成したの!」


「したのー!」


 アンナとルルは手を繋いで跳び跳ねる。


「ふふふ、可愛いわね」


 サーラ……それでいいのか?


「夏希お兄ちゃん居ないから、お父さんの所に持って行ってくるね!」


 アンナとルルは、今日は門番をしているラグの所に行って「はい、お弁当」と言って手渡し家に戻る。


 ラグはもうニコニコだ。隣の同僚にも鼻高々に自慢していた。そして門番をしながらご飯の時間だ。


「おお、ズッシリと重い弁当だな。何が入ってるか楽しみだな!ふははは」


 ラグは綺麗な布に包まれた弁当を膝の上に置き、その布の結びをニコニコしながらほどいている。


 そして花柄ブロックが現れラグは固まった。


「えっ?弁当だよな……アンナ、弁当って言ったよ」


 何処を見ても蓋はない。あるのは花と手紙。ラグがその半分に折り畳んだ手紙を開くと可愛い文字で……


「わしづかみ」


 と大きく書かれていた。


「えっ?なに?わしづかみ?あたま?かお?」


 ラグは混乱中であった。

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