第89話 ニアと屋台の相談
手土産を持って孤児院を訪問した夏希。
今日は昨日に引き続き孤児院に行く。屋台を始めるのに孤児院の子供達の手を借りる為と出来ればニアにも手伝って貰いたい為だ。
夏希は部屋で考えている。
ニアにも何か手土産をあげたいな。ニアは綺麗な水色の髪をしてるから髪飾りなんか良さそうだな。夏希はネットスキルで髪飾りを探す。
「おっ、これなんかいいな」
夏希が選んだのは、小さな星が散りばめられたヘアクリップと花柄の飾りが付いたヘアゴムだ。
夏希は綺麗な袋も購入してその中に2つをの髪飾りを入れた。(袋の紐もリボンで可愛いぞ)
「ワレには何も無いんじゃな…」
影から顔を鼻の上まで出したスズランが居た。
それ怖えぇよ…
「ははは、も、勿論あるよ。俺とスズランの仲じゃん。帰ってから選ぼうと思ってたんだよ」
「まぁ、いいのじゃ。忘れるなよ」
そう言って影に沈んだ。
絶対に覚えておこう!
朝食を済ませて孤児院に向かう。
「こんにちわ、ニア居ますか?」
孤児院の入口で掃き掃除をしていたマリアナさんに声を掛けた。(「にゃ」言わないよな)
「ニアですか?部屋に居ますよ。なにか服をたくさん出して悩んでました」
「にゃ」言わなかったな…物足りないと思う自分が悲しい。ニアさんはあれだな「その服素敵だね!」イベントだな。腕が鳴る。
孤児院の中に入ると誰も外に居ない…物足りないな。(今日は寂しいな…)
「夏希さん、来てたんですね。天気がいいので外で話しましょうか。そこに座っててください。お茶持ってきますので」
あれ?ニアは「にゃ」を1つも付けて無い…物足りないな。(今日は物足りないデーだな…)
夏希は縁側に座ってニアを待つ。
「夏希さん、お待たせしました」
お茶を持ってきたニアをよく見る。
今日は上は明るいオレンジ色の半袖シャツで下は薄い水色のスカートだ。
「ニア、その服似合ってるよ。凄い可愛いよ」
物足りない感想だった。
それでも誉めて貰えたニアは、とても嬉しそうだった。(その笑顔で全て物足りたな!)
「昨日チェンリ院長に言ったんだけど子供達の事聞いた?それと今日子供達居ないの?」
「聞いてますよ。お手伝いの事ですよね。子供達に話したら喜んでましたよ。あと、今日子供達は外の川原に水遊びに行ってますよ。孤児院出身の冒険者さん達が連れて行ってくれたんです」
それは良かった。(俺も行きたいな…)
「それじゃあ、屋台の事なんだけと孤児院の近くと宿屋の近くの2箇所でやるのは聞いたよね。それで屋台で出すものはこれなんだ」
夏希は昨日夜に宿屋の調理場を借りて作った物をアイテムボックスから取り出してニアに渡した。
最初に渡したのは、イチゴ、ブドウ、みかんを水飴でコーティングした「フルーツ飴」だ。リンゴ飴も作ろうかと思ったが小さいのが無かったのだ。
「これは果物を串に刺しただけですか?でもキラキラしてますね。綺麗です」
そういえば水飴って見ないな。あるとは思うけど。
「これ、溶けた飴に果物を浸けた物なんだ。簡単で意外と美味しいんだ。食べてみて」
ニアはイチゴ飴を選んで食べ始めた。
「ホントだ!外は甘くてカリカリして噛み砕くとイチゴの甘酸っぱさと混ざって美味しいですね。これ絶対に売れますよ!」
ニアはイチゴが大好きなのでニコニコ顔だ。
次に出したのは「箸巻き」だ。これは割り箸にお好み焼きを片面だけ焼いた状態で巻き付けた物だ。
「これは凄い食欲をそそるいい匂いがしますね。これは色々なソースを掛けたパンですか?」
まぁ、パンと言ってもいいのかな?お好みソースとマヨネーズを付けてるから見た目も美味しそうだ。
「ふわぁ、これも凄い美味しいです!パンとは違った食感ですがモチモチの皮に、中の色々な具材がまた複雑な食感と味を出してますね。そして極めつけなのがこの2種類のソースです。濃厚でフルーティーな味わいと酸味の効いた甘酸っぱいソースが凄いです!」
いや、ニアの評論家顔負けの説明の方が凄いよ。でもこの2つで大丈夫そうだな。
「この2つを売るつもりなんだ。フルーツ飴は銅貨1枚で箸巻きは銅貨5枚にしようと思ってる。フルーツ飴は本当は銅貨2枚は欲しいんだけど、子供達が自分の小遣いで買える価格にしたかったんだ」
ニアは箸巻きをモグモグ食べながら考える。
「そうですね。その価格でいいと思います。ただ箸巻きは最初は売れないかもしれません。銅貨5枚あれば安い店だと定食が食べれますからね。でも食べたらその価格で納得されると思います」
そうだな。安くはしたいけどお好み焼きは具材の種類も多いし作る手間も掛かるんだよな。価格はそのままで売り方を考えてみよう。
次は屋台の箱だな。
「ニア、屋台本体を貸してくれるのは商業ギルドでいいの?それか誰か知り合いか持ってない?」
「持ってる知り合いは居ないですね。商業ギルドで貸し出ししてますよ。レンタル料は判らないです。屋台を出す場所の申請も商業ギルドです」
ちょうどいいな。商業ギルドで全部出来れば手間がはぶけるし。相談はそれぐらいかな。
「じゃあ、今度商業ギルドに行ってみるよ。今日はありがとう色々助かったよ」
お、髪飾りを渡すの忘れてた。
「ニア、これ似合うと思って買ってきたんだ。そんなに高い物じゃないから遠慮無しで受け取って」
ニアは俺と手にある袋を交互に見ている。
「受け取って開けて見て」
ニアは少し照れた様子で両手で大事そうに受け取り、袋が破れないように慎重に開けていた。
この感じ、なんかいいな。
「可愛いぃ」
開けた袋を丁寧に置いて、中の髪飾りを2つを手に取って眺めている。
「夏希さん、とても嬉しいです。素敵です」
夏希はニアが髪飾りをうっとり眺めている間にネットスキルで手鏡を購入した。
「ニア、その髪飾りを付けてみる?これで後ろでも見えるだろ」
夏希は手鏡をニアの正面に構え、見えやすい様に色々と角度を変えてみたりした。
「あ、その角度で大丈夫です」
ニアは夏希に見られているのが恥ずかしいのか、照れながら花柄の飾りが付いたヘアゴムを付けていた。
ヘアゴムを付け終わったニアは、服の感想を聞く時よりも緊張した表情で夏希の事を見ていた。
「うん、素敵だね。似合ってるよ」
ニアは照れながらも夏希から目を離さない。何かを言いたそうに…
でも、ニアは夏希が帰るまで言わなかった。
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