第75話 幕間 バルバドス王国 スタンピード(6)
魔法部隊が集まる訓練場でやらかした乙女騎士団。
乙女騎士団は本来であれば後方支援部隊の配属だが、魔物を殲滅する目的の為に魔法部隊指揮官に強引に実力を見せ付ける事にしたのだ。(鼎が考えただけだよ)そしてその手段が鼎アイデアの秘密兵器だったのだ!
その秘密兵器はこれだ!
[ 言葉足らず少女 真冬 ]
そう、見境無しに、遠慮無しに、上限無しに、の雷撃の事だったのだ!(似たような意味の言葉だよな…)
真冬の雷撃で出来た大きなクレーターからは未だに「プスプス」と変な音が鳴っている。崩れた壁からは外から冒険者達が「えっ…これなに?」ってな感じで野次馬の如く群がっている。
「エドガーさん、これでどうですか?まだ確認が必要なら言ってください。まだ秘密兵器2号があるので」
鼎は訓練場の一部が崩壊状態でも気にせず評価を気にしていた。
鼎は全開モード トップギアのままである。
エドガー含め幹部達は暫く呆けていたが正気に戻る。
「えっ、これ…凄くない?」
アッサリした感想である。
「今のなに?アイツら確かDランクの乙女騎士団だよな?あんな凄ぇ魔法使えるの?」
「あれは雷よね?そんな属性魔法無いですよね?私が知らないだけ?誰か教えてよ…」
「あの威力は上位魔法ですね。それに詠唱してなかった様に見えましたが…無詠唱出来るのは確かAランクでも数人でしたよ」
周りの冒険者の方が濃い内容の感想である。
真冬の魔法の威力を見た上位冒険者達は集まり相談した。その結果、乙女騎士団は魔法部隊配属となり遊撃隊として認められた。
「あんた、凄いわね。他のメンバーも同じくらい魔法を使えるのかい?」
真冬に声を掛けてきたのは2人組の女性冒険者だ。2人共魔法使いに見えない程、素敵な筋肉をしたお姉さま達だった。
「私は強い 皆も強い」
「初めまして、乙女騎士団の桜と申します。私とリーダーの鼎は何種類かの攻撃魔法が使えます。後ろに居るのが雫で補助魔法が主体ですが攻撃魔法も使えます。あと、先ほど魔法を放ったのが真冬で、なんと言うか近接から遠距離までオールマイティーで対応出来ます。宜しくお願いします」
乙女騎士団達は桜と一緒に頭を下げた。
「はは、堅苦しいのは無しでいいよ。皆凄いね、それだけのメンバーが揃っているのは心強いよ。私達はAランク[ 女神の鉄槌 ]のスザンヌとビエラだよ。宜しくね」
スザンヌは長い槍を持ち背の高い姉御肌のお姉さんで、ビエラは両手にククリナイフを持つ鋭い目をした背の高い寡黙なお姉さんであった。2人共に背が高いので威圧感が半端ない。
「私達は2人とも風魔法を使う。ただ見ての通り武器で戦うのが好きなんだよ。今回は魔法部隊だから魔法主体で戦うけどね。私達も遊撃隊だ。最初は近くで共闘して実力を確認したら2手に別れよう。それでいいかい?」
「リーダーの鼎です。はい、それで大丈夫です。宜しくお願いします」
「皆指示された配置に向かい始めたね。私達は北門真正面の壁上に上がろう。そろそろ魔物が来てもいい時間だ。走って行くよ!」
スザンヌを先頭に乙女騎士団は北門に向かって走って行く。戦闘はもう目の前に迫っていた。
北門真正面の壁上は流石3万人が住む街でとても長い。数キロに渡る壁上にはエドガーが指揮を取る魔法部隊が横1列に並んで待機している。まだ魔物の姿は見えない。
遊撃部隊は既に街を出て偵察と迎撃に向かっている。この部隊は魔物の進路調整も兼ねており、上位冒険者を含む700人の大部隊となっている。
防衛部隊も既に配置が済んでおり、壁上に上がり弓を持って待機している者や小型の投石機を設置している者も居る。壁下も魔物が街に侵入した場合や攻勢時の突撃の為に多くの冒険者が各々の武器を持って待機している。
乙女騎士団は壁上で魔物の到達を待っている。
「エドガーさん、先程は途中から割り込んで失礼しました。皆さんも同じ気持ちと思いますが、どうしても守りたい人達が居るんです。私達は強い魔法が使えます。だから魔法部隊に配属されるよう強引な手を使いました。本当に済みませんでした」
鼎はエドガーさんだけでは無く、周りに居る魔法部隊の冒険者達にも聞こえるように大きな声で謝罪し深く頭を下げたのであった。
魔法部隊の冒険者達はその姿と言葉に共感を得ているようで鼎や他メンバー達に優しく声を掛けていた。
「鼎、お前達の思いは他の冒険者達皆も同じ様に思っている。遠慮する事は無い。隠していた力があるなら存分に発揮してくれ。訓練場の壁を壊した様にな!」
鼎はエドガーの言った言葉を聞いて頭を下げた。鼎の肩は少し震えているように見える…
「ふふふふ、よし!謝罪も済んだしエドガーさんから了承も得たわ。いいわね?乙女騎士団スキル全開よ!」
「任せろ」
「ああ、お姉ちゃん…」
「やっぱりそうなるのね…」
「えっ?全開?なにそれ?」
鼎はやはり鼎であった。
エドガーは困惑している。そんな時だった。
「魔物が来たぞ!北門正面だ!」
「迎撃部隊が魔物の進路調整を上手くやったみたいだ。迎撃準備急げ!後方支援部隊も矢の補給やポーションの準備を怠るなよ!」
遊撃部隊の冒険者が伝達に来たようだ。周りが慌ただしくなり騒がしくなる。
「鼎、まずは乙女騎士団の力を見せて貰おうかな」
[ 女神の鉄槌 ] スザンヌが鼎を見て言った。
「了解です。真冬!大きいの一発かましなさい!その後、私と桜さんが続いて魔法を放つわ。雫は私達が火魔法使うから、それに被せる様に風魔法を使って!」
暫くすると前方に土煙が見えてくる。だが、まだ距離は少し遠い。
乙女騎士団は前方を見据えている。周りに居る冒険者達も見据えている。
「 超雷撃 激強MAX 」
「バリバリバリッ!ズドギャーン!」
「「「 えっ? 」」」
まだ土煙しか見えない場所に、とてつもない光が見えたと思うと時間遅れで轟音が響き地面が大きく揺れた。それはまだ距離がある壁上から見て幅100メートルにも及ぶものであり、現地では数百メートルになるであろう事が予想出来た。
「「「 ・・・・・・・・ 」」」
「ふう 満足」
真冬を除く乙女騎士団と冒険者達は唖然としていた。
暫くすると遊撃部隊の冒険者が馬で走って来た。
「ま、魔物の第一陣はほぼ全滅です!数は約1000程です。魔物の第二陣は約10分後です!数はまだ把握出来てませんが多分同じぐらいです!」
「よ、よし…全員その場で待機…」
エドガーはか細い声で待機命令を出した後は、頑張って声を張り上げ現場を纏めたのであった。
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