第48話 転移者達の選択
街に向かう道中で知り合ったマドリ家族とその護衛達。その人達を助ける為選択を迫られた夏希。
夏希は他転移者達と念話をする為に意識を集中する。頭の中で何かが繋がった様な感覚がした。
[ 皆さん、念話は届いてますか? ]
[ 夏希さんですね。はい、大丈夫ですよ。皆も大丈夫そうです ]
[ 皆さん、すいません。いきなり面倒な事に巻き込んでしまいました。経緯は理解していると天使から聞いてますので、その上で私の出した結論を聞いてもらいます。その後、皆さんで話し合ってもらい答えを教えてください ]
夏希は苦悩の末に出した答えを話し始めた。
[ ごめん。夏希さん1つだけ教えて。助けたい人達はたった1日だけの関係よね?それでも私達の魂を代償にしてまで助けたいんですか?偽善とかでは無いですよね ]
鼎の雰囲気はいつもと違い、厳しい問い掛けをしてきた。
[ そうだな。確かに付き合いは短い。だが、それでも助けたい。私はあの人達から幸せを分けてもらった。偽善では無く心から助けたいと思ってる。皆の魂を代償としてもだ ]
空白の時間が少しだけ訪れる。
[ まあいいわ。話を続けてください ]
[ 判った。それと、少し言葉使いが乱暴になるかも知れないが許して欲しい。この世界に来て話し方が変わったんだ。他意は無いから。私と皆は転移前の1日しか話をしていない。でも、皆が善人で理解力のある人達だとその時感じた。そして判断した。きっと魂の代償をお願いすれば聞き入れてくれると ]
他転移者からの念話は返って来ない。夏希は続けて話をする。
[ 魂の代償をお願いするのは、巧さん、幸之助さん、桜、鼎、雫、政宗さんの6人だ。そして助けるのは、ハザフ夫婦と娘のアンリ、冒険者のランブルとサラの4人だ ]
夏希は苦悩の表情だ。
[ 昴と菜々まだ小学生だ。地球での生活もこれからだった。だから戻って色々な事を経験し感じて欲しい。この世界で経験した事も必ずプラスになる筈だ。戻れない人達の分も人生を楽しんで欲しい。真奈美さんは2人の母親だからな ]
この3人については皆納得するだろう。
[ あと、真冬だが中高校生の3人も戻って欲しかったと悩んだが、助けたい人の方を優先させてもらった。そうした場合、3人の内2人の代償が必要になる為に、姉妹を離すことは出来ないので残る真冬となった。酷い理由で済まない ]
この3人が一番悩んだ。私が勝手にこんな事をしていいのだろうかと…
[ 助ける方は家族と夫婦のみだ。あとの人達はお前達と天秤を掛けての判断だ ]
夏希は
[ 話は以上だ。この後は
夏希はそう言って接続の意識を切った。
それから僅か10分程で巧から念話がきた。
[ お待たせしました。話が終わりましたので結論を言います ]
夏希は目を閉じて巧からの返答を聞いた。
[ 夏希さんの判断した内容に従います。実は事前にこちらで既に話し合いをしてまして、皆代償を出してもいいと全員の意見が一致してたんです。時間が掛かったのは反対に戻る人達を納得させる時間でした ]
お前達は…
夏希は心が暖かくなるのを感じた。
[ 皆…感謝します。助ける人達は皆の魂の代償に見合うよう必ず幸せになってもらいます。私が一生を掛けてでも必ず ]
[ 夏希さん、話始めの時にキツい事言ってごめんね。実は夏希さんの意思がどれだけのモノか試したの。もし、少しでも迷う素振りをしたら私達の考えを変えるつもりだったの。年下の私がごめんね~ ]
鼎は場の雰囲気を和らげる為か、少しだけふざけ口調で話した。
これで助けることが出来る。
念話なので顔は見えず言葉だけのやり取りだったが、夏希には皆が優しく微笑んで私を見ている様に感じた。
[ 夏希!お前は私をバカにしてるのか?!]
突然、真冬から念話が入る。それはまるで目の前に居るのではと感じるくらいの怒声だった。
[ 何故お前が私の人生を決める!私は自分の意思で代償を出すと決めたんだぞ!]
[ ま、真冬。さっき話し合いしたよね…]
[ 鼎は黙ってろ!私はここで、この世界で鼎と雫と3人で幸せになる。だから地球に帰ることは無い!私の人生にお前が口を出すな!私と2人は離れる事は絶対に無い。それは死んでからもだ!]
真冬は目に涙を溜めながら、口調が変わる程の怒りを持って叫んだでいた。
夏希は自分の浅い考え、選択、判断に後悔をした。まだ大人に成りきれていない少女の心を傷つけた事を。
[ 真冬、済まない。私がした判断はお前を傷つけた。許して欲しい ]
[ 判ればいい。許す。ただ私の意思は変わらない。だから私の好きにする ]
[ おい天使!聞いてるんだろ!返事しろ!]
[ はいは~い。聞いてますよ~ ]
[ 私の魂の代償はする。そして保留にしろ。私が好きな時に使う。判ったか!]
[ ふふふ、真冬ちゃんもいい感じに天使好みの魂になってきたわね。魂の欲である[生存][関係][成長]を意識して大きく変化してるわ。そのご褒美にその望みを叶えてあげるわ ]
[ お前の事はどうでもいい。必要になったら呼ぶ。その時は必ず対応しろ!]
[ ふふふ、呼んだら対応してあげるわ ]
カルレスは背筋が凍る程の上機嫌だった。
何とか話は纏まった。
夏希はこれからの事を考えるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます