第40話 街に向けて出発

 出発の朝を迎えた夏希。


 まだ太陽は昇っていない。移動を考えて早めに出るよう準備していたのだ。


 静かに部屋を出る夏希。(ラグは起きるてかもな。アイツは心配性だからな。親友だしな)


「夏希お兄ちゃん、おはよう。これアンナが作ったの!お昼に食べてね」


 台所にはサーラさんとアンナちゃんが居た。アンナちゃんは大きなバケットを笑顔でいっぱいの顔をしながら渡してきた。


 うわぁ~、これ反則だよな。嬉しすぎてたまらん!


「アンナちゃんが作ってくれたの?メチャクチャ嬉しいよ。ありがとう!」


 私はバケットごとアンナちゃんを抱き上げてその場をクルクルと回った。


 アンナちゃんは大喜びだ。


「ふふふ、アンナが「どうしても作る!」って言ってね。朝早くから頑張ったのよ。」


「だってアンナは夏希お兄ちゃんのお嫁さんになるんだよ、お弁当は妻の仕事だよ」


 ホントに結婚しようかな…


 2人に村の入り口まで見送ってもらい夏希は出発したのであった。


 ラグ? まだ寝てるよ。


 まだ外は薄暗い。荷物は全てアイテムボックスの中だ。新調した両刃のショートソードを腰紐に挿し歩き始めた。


 街までは馬車で3日の距離だ。草原が広がるあぜ道を1日半進むと今度は深い森の中に整備された街道があり、同じく1日半進むと街に着く。


 馬車で1日進める距離の場所には、1メートル程の木の柵で囲まれた15人は寝れる広さの小屋が建ててある。なので馬車での旅の場合は案外楽に出来るのだ。


 魔物は草原ではフォレストウルフ、森ではゴブリンとオークが主に出てくる。ただ、そこまで遭遇する頻度は高くない。(月に1度程度の巡回があるそうだ)


 私は長閑のどかな風景を楽しみながら街に向かって歩いて行く。


 街には過去2回素材の売却と装備の購入で行ったことがある。(定期馬車でだが…)


 特に問題なく夕方まで歩いていた。


「そろそろ夜営の準備をするか。草原だから木は無いから木の上で寝れないな。明日は多分小屋で休めるから今日は徹夜するかな」


 夏希はあぜ道から少し奥に入り、比較的平坦な場所を探してテントを建てた。(寝ないけどテントあると嬉しくなるんだよね。キャンプ好きだったしね)


 アイテムボックスからネットで買った耐火レンガを出し組み立てて薪を入れ、着火材で100円ライターを使って火を着ける。


 フライパンを置いて、これまたネットで買ったソーセージと厚切りベーコンを一緒に焼く。(油が滲み出てうまそうだ)


 パンはサーラさんお手製だ。これが美味しいのだ。噛むと小麦とバターの香りと味が口いっぱいに広がり、少し固めの食感が以外と良くて私のお気に入りだ。


「久々のキャンプだな。なんか楽しいな。ビール飲みたくなるけど我慢するか~」


 夏希はこれまたネットで買ったキャンプ用コンパクトチェアに座って優雅に食事をするのであった。(アンナちゃんの弁当?お昼に美味しく食べたよ。サンドイッチと野菜炒めと唐揚げだったよ。アンナちゃん最高だよ!)


 魔物が出る事もなく朝が来た。


「眠いけど体調は万全だな」


 夏希は荷物を片付けて火の始末をして周りも綺麗にして出発した。(来た時よりも美しく!だな)


 2日目も問題なく進み予定通り休憩小屋に辿たどり着いた。小屋の中は板間で何もない。そして誰も居なかった。(ちょっとだけ寂しいな…)


 夏希は小屋の外にあるかまどでご飯の準備をする。今日のメニューはサーラさんが作り置きしてくれたシチューだ。(鍋ごとアイテムボックス入れてた)


 サーラさん特製シチュー、サーラさん特製サラダ、サーラさん特製パン、サーラさん特製の台所の水だ!


 サーラスペシャルなご飯を食べていると1台の大きな馬車が近づいて来たのが見えた。


「ん?旅の人かな?」


 夏希はサーラ特製の台所の水を美味しそうに飲みながら、その馬車を見ているのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る