第39話 腕試しに街に向かう夏希(2)

 翌朝、昨日のラグ夫婦との心暖まる会話を思い出しながらベッドから起き出した夏希。


 明日の朝には村を出るので今日中に準備しなくてはいけない。街まで徒歩で往復約2週間。街での滞在は3週間の予定だ。


「約2ヶ月位かな。お金は残り少ないな」


 夏希の村での収入は、狩りで得た魔物の素材を街で売り、それを狩り仲間で等分したものだ。食用が目的の狩りなので高価な素材はあまり無い。


 ネットで手に入れた物は制約で現金での販売は出来ない。これが出来ればお金の心配は無いのだが、こればかりは仕方がない。幸いネットの購入資金は森の奥で討伐した魔物を全てチャージしたのでまたまだ潤沢だ。(大蛇が大金貨30枚(日本円で300万だな)だったのは驚いた)


 夜営道具は村に来てすぐに購入している。往復路の食料を準備するくらいかな?


「食料も野菜は溢れる程あるし肉は魔物を狩ればいいから大丈夫か。必要なものがあればネットで買えるしな。追加で買う物は無いな」


 装備は全て新調済みだ。(森での戦いで全部ダメになったからな)


 出発の準備は5分で終わった。


「終わったな。まだ朝食前だな…」


 夏希は朝食に向かう。


「おはよう。今日も朝ごはん美味しそうだね」


 テーブルにはサーラさん特製のスープ、野菜炒め、パン、牛乳が並べてあった。


「夏希お兄ちゃん!街に行くの?!」


「ああ、2ヶ月位になると思うよ」


「ええ~、アンナ寂しくて死んじゃうよ」


 アンナちゃんは悲しそうな顔をしている。


「ははは、用事が済んだら走って帰ってくるから」


「走らなくてもいい。夏希お兄ちゃんが怪我しなかったらそれでいい」


 ぐはっ!親もそうだが子供まで私を泣かせる気か!


「アンナちゃん、ありがとね。怪我には気をつけるよ、街でお土産買ってくるから待っててね」


「あ、サーラさんお願いがあるんですが、村に居ない間お店をお願い出来ませんか?困る人が居ると思うので商品は準備しておきます」


「ええ、大丈夫よ。夏希さんのお店は大盛況だものね。化粧品は勿論、最近はオモチャも子供から人気よね」


 そうなのだ。アンナちゃんにお風呂の時に出してあげた水鉄砲が村では大フィーバーなのだ。


 男の子達は「戦いだ!」と水鉄砲を持って走り回り、チャンバラに革命をもたらした。以外なのは女の子だ。


 水鉄砲で花壇のお花に水をあげたりペットに飲ませてあげたりと人気なのだ。強者は皿洗いのお手伝いに使っているらしい。(まぢか!)


 お陰で私の店の屋号がリニューアルした。


 駄菓子屋&アイス屋&化粧品屋&オモチャ屋夏希だ。


 さて、あとは大丈夫だな。

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