第37話 嫁達の女子会と夏希(2)

 化粧品を準備し女性達が待つ休憩場へ向かう夏希。


 夏希は休憩場の扉を開ける。中では5人の女性達が姦しくおしゃべりをしていた。


「あ、夏希お兄ちゃんが来たよ!」


 私に気が付いたアンナちゃんが私に向かって両手で元気に手を振ってくれている。隣に居るルルちゃん3才は、ランカさんの膝の上で「おにーたーん」と叫びながら小さな手を振ってくれている。


 可愛い!と、アザと可愛い!


 夏希の心はネネからの攻撃で荒んでいたが、今は春のウララの隅田川の如く澄んでいた。


「ブツブツうるさいね!早くコッチ来い!」


 夏希の心は真っ黒になった…


「ふふふ、夏希さん無理を言ってごめんなさいね。でもね、実は皆楽しみにしてたのよ」


「あの化粧水使い始めてから肌がずっとプルプルなんですよ~。今まで使ってた化粧水と全然違うんです」


「あたちも、ちれーになった!」


「ルルちゃんよかったね~」


 ルルちゃんのお団子ヘアを撫でてあげると嬉しそうに笑っていた。


「お待たせしました。シャンプー類は予算が足りなかったので持ってきてませんが、化粧品関係は結構な種類を持って来ましたよ」


 そう言って机の上に使う順番に並べていった。


「わ~、凄いたくさん種類がありますね。これ全部化粧品なんですか?」


「ランカさん、予算の関係で1つずつしか無いんですけど後日人数分準備して渡します。今日は皆で使ってみてください」


 女性達は並べる化粧品に目が釘付けになっていた。


「使い方は紙に書いてきたので読みながら使ってみてください。判らない所があればその都度説明します」


 夏希も使い方はよく判らなかったのでネットで購入する時に画面に書かれている説明文を書き写してたのだ。(3枚もね!大変だった)


 女性達はサーラさんをモデルにして化粧を試すようだ。


「この化粧水はこの間頂いた物とは違いますね。しっとり感がこちらの方があります」


「美白になるって書いてあるわ。凄いわね」


「夏希、お前やるじゃないか」


 ネネさんも上機嫌だ。(良かった…正座は回避だ!)


 女性達は順番に使用感を確かめながら化粧している。


「ふふふ、ファンデーションもあるのね。これ欲しかったんですよ。でもとても高いから手を出し難くて」


「夏希さん、お金大丈夫ですか?これだけ良いものですからお支払いしますよ?」


「ランカさん、以前お話ししたネットスキルですが、お金を貰っての売買は制約で出来ないんですよ。それにそこまで高いものでは無いんですよ。ここにあるのは全て銅貨5枚以下で買えるものなんで気を遣わずに使ってください」


「えっ!これ全てですか?このファンデーションも、この化粧水も、この、この、この…」


 いつもおっとりしたランカさんが興奮して壊れたレコードの様に同じ言葉を繰り返している。


 女性達は「キャッキャウフフ」と騒がしく化粧を進め1時間程でサーラさんの化粧が終わった。


「凄いわ。サーラもう別人になってるわ」


「お母さん凄い綺麗!お姫様みたい!」


 化粧をしたサーラさんは、私が見てもとても綺麗だった。元の素材がいいので化粧の効果はバツグンだ。


「ここまで変わるんだな…まつげを上げた為か目はパッチリして大きくなってるな。あと、その口紅もいいな。プルプルして見えるぞ」


「ふふふ、ありがとう誉めてくれて。私も鏡で見たけど自分じゃないみたいだわ」


 アンナちゃんとルルちゃんは自分もして貰いたいみたいで「わたしもー!」「あたちもー!」って叫んでいる。


 終始賑やかな女子会はそろそろ終盤を向かえる。

(これは女子会と言っていいものなのか?)


 これで今日の戦いは無事に終わった。

 私の完全勝利だ!


「夏希、今日はいいものをありがとうな。珍しいものが見れて私も楽しかったぞ」


 おっ、朝はどうなるかと思ってたけどネネさんもご機嫌だから大成功だな。


「いくら高くないと言ってもこれからずっと提供して貰うんだ。タダという訳にはいかないな」


 ん?なにかくれるのか?


「私が皆の分もまとめて払おう。帰りに私の家に寄って野菜を持って帰れ。山ほどくれてやる。喜べ」


 まぢか………もうアイテムボックスの中凄いことなってるぞ。アイテムボックスから野菜倉庫に名前変えるか?


「あ~、あと化粧品だが村の女性連中にバレてるからな。お前の駄菓子屋か?あそこで売るように準備しとけよ。代金は野菜で払うように周知しといてやる」


 夏希は最後に爆弾を落とされ撃沈した。


 後日、夏希が不定期で出店している店の屋号が変わる。


 駄菓子屋&アイス屋&化粧品屋夏希と…

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