第4話 苦悩位置

「知ってた?」

 なにが?

「あー、やっぱり。知らなかったんだぁ。もぉぉ、やんなっちゃうなー。これだから、アナタって人は。鈍いわ、ホンット鈍いよねっ」

 なんで、そんなに言われてんのか。

 わからん。

「まだ気づかないの?」

 もしかして?

「なぁに?」

 俺、鼻毛、出てる?

「そーゆー話じゃなくてっ!」

 鼻毛じゃなければ、なんだ?

 耳毛?

「毛じゃなくてっ! あー、もうしょーがないなぁ。教えてやるかー、仕方ないなー」

 なんだよ。

「あたし、昨日から『くのいち』だよ?」

 なんで?

「どう見てもクノイチだろうよ! 頭から足元まで、全身全霊、忍びの者だろ!」

 いや、いつもと変わらん。

「変わってるわよ!」

 確かに、別な意味で。

 変わってるなー。

「クナイで刺してやろうかっ!」

 手裏剣じゃないんだ。

 って、クニミツならキツネの……。

「なによ、クニミツって」

 あぁ、いや、何でもない。

 鉄の拳は忘れてくれ。

「そんなことはどうでもいいからっ! あたし、クノイチ、忍者なのよ」

 なんで?

「忍んでいるからに決まってるじゃない?」

 カムロ?

 ラッパ?

 あるいはクサ?

「わけわかんないこと言わないでっ! もう、調子狂っちゃうわぁ。やんなっちゃう」

 自己申告するシノビって、一体……?

「とにかく、あたし、クノイチ。今日も忍んでます。どう?」

 だから、なんで?

「理由じゃなくて、他にも聞かなきゃいけないこと、いろいろあるでしょ? ほら? ねえ? ウフフーッ」

 どう見ても忍んでないし。

 どう考えても……。

「何よ?」

 かわいいなぁ、お前は。

「!!!!!!!!」

 

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