3
翌日、百実に屋上に呼び出された。
「私達、別れよっか」
「は?」
今さら何言い出すのこの子は? と目を見張った。
百実はそれを別の意図と勘違いしたのか「気づいてないと思った?」と涙ながらに訳を話した。
「小百合、ずっと私に殺意を向けてたでしょう? 私がいくら楽しませようとしても、いっつも睨んできて……ずっと苦しかったんだから!」
その瞬間、小百合は100回目の殺意を抱いた。
「被害者ぶってんじゃないわよ、クソビッチが!」
今まで溜め込んでいた殺意が、一気に体を突き動かす。
自分でも驚くほどの速さで百実の首をつかみ、アスファルトの地面へ組み敷いた。
「あんたの無神経さのせいで、私がどれだけ苦しめられたと思う?! 笑われて、馬鹿にされて、裏切られて……全部冗談で済むわけないでしょうがッ!」
「あ、が……ッ」
百実は呼吸ができず、パクパクと口を動かす。殺されそうになってもなお、自分がなぜ小百合に恨まれなければならないのか、理解していない様子だった。
やがて百実は動かなくなった。
小百合も首の変化に気づき、恐る恐る手を離す。百実は起き上がらなかった。
「やった……ついにやった!」
小百合は百実から解放され、喜んだ。心からのガッツポーズをし、歓喜に声を上げる。
しかしなぜか、瞳から大粒の涙が浮かんだ。
「どうして……? どうしてあれだけ憎んでいたはずの百実を失って、私は"悲しい"だなんて思うの? この手で殺したはずなのに」
たちまち、百実との楽しかった思い出がよみがえる。
小百合は悲しみと喪失感で発狂しながら、屋上から飛び降りた。
100回目の殺意を抱いた瞬間は、ノートに記録されなかった。
(終わり)
100回目の殺意 緋色 刹那 @kodiacbear
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